3
リーゼガングの街は3つの城壁で構成されている。目的は外から魔物が入ってこないようにするためだ。
まず一番外側の城壁。
外への出入り口は東西南北それぞれ4ヶ所あり、常に兵士が見張りを立てている。私もエルウィンの家に行くときに通った。そのときは確か南側の出入り口だった。この城壁の内側は主にのどかな農村地帯となっている。エルウィンの家もこの農村地帯の中に建てられている。理由は煙突から排出される煙から異臭が放たれ、密集した住宅地では近所迷惑となる、らしい。
そして2番目の城壁。
この城壁の内側は一般市民の住宅や市場、商店などが建ち並ぶ。この街の中で一番密集している地帯だ。そして、所々に広場が設置されており、普段から住民の憩いの場となっている。たまにお祭りなどが開かれ、そのときは広場には大勢の人達で賑わうという。
そして一番内側の城壁。
この城壁の中には大きなお城がそびえ立っている。この街、というか国の中心となる場所だ。その姿は一番外側に建つエルウィンの家からも見ることができる。
そんな話をしながら私とリリカは2番目の城壁の入り口へとやってきた。一応ここにも門番がいるが特に身体チェックなども無くすんなりと入ることができた。
「特に指名手配犯で無い限りは出入りは自由なんですよ。」とリリカが一言説明してくれた。
2番目の城壁の中、市街地は思った以上に入り組んだ作りになっていた。街に慣れていないと迷子になりそうだ。そんな道をリリカの案内で奥へと進んでいく。
そしてたどり着いたのは一件の雑貨屋さんだった。お店の前には花壇が置かれており、綺麗な白い花や赤い花が咲き、訪れるお客を迎えている。
「こんにちわ、ファナさん、頼まれていたお薬、持ってきましたよ!」
リリカがお店に入るなりそう叫ぶと、お店の奥から店主と思われる1人の女性が姿を現した。見た目は20代前半の、私でも見とれてしまうような女性だ。
「あら、リリカちゃん、いつもありがとうね。エルウィンさんのお薬、とっても人気で仕入れてもすぐ売れ切れてしまうのよ。また追加でお願いできるかしら。」
「はい、お安いご用です!」
「あれ、こちらの女の子は?見慣れない子だけど。」
とファナは私の方を見て話しかけてきた。
「あ、この方はシズクさんって言いまして、材料採取先の森の中で偶然出会ったんです。どうも私たちとは違う国からやってきたみたいで・・・。」
とリリカは私をファナに紹介した。
「雫といいます。よろしくお願いします。」と自己紹介した上で、「ファナさんってお若いのにこんな素敵なお店を経営しているんですね。」
「まぁ、若いなんてうれしいこと言ってくれるわね。私これでも38歳なのよ。」
「えーっ!!」
私はさすがに驚きを隠せなかった。どう見てもこの人はアラフォーには見えない。
「ファナさん目当てでお店に来る男性もいるくらいなんですよ。」とリリカ。
「私、これでも既婚者で子供も2人いるんですけどね・・・。」
見えない、とてもそんな風には見えない・・・。
と、そのときお店のドアが開いて男性が1人入ってきた。
「あら、お客さんね。」
「じゃあ、邪魔になるので私はこれで。まだ回らなくちゃ行けないところがあるので。お薬の追加分はできるだけ早めに持ってきます。」
「ええ、またいらしてくださいな。」
「お邪魔しました。」
と私とリリカはファナの雑貨屋さんを後にした。
「この街には不思議な人がいるものね。」
「そういうシズクさんだって十分不思議な人ですよ。さ、次のお届け先に行きましょう!」