8
真夜中、傭兵達は見張りを残して寝静まっているころ。私も戦いの疲れを少しでも取り除くため、深い眠りに入ろうとしている頃だった。
「シズク、まだ起きているか?」
その声は聞き覚えのある声だった。
何かと目を開けるとそこにはアーカムの姿があった。
「・・・なに?アーカム・・・。私もう寝たいんだけど・・・。」
アーカムは周りを見渡し、他の傭兵は寝静まっているのを確認すると、話を続けた。
「フィーナを自由にしたい。」
「・・・は?」
私は耳を疑った。
「だからフィーナを自由にしたいんだよ。奴隷から解放させたい。」
私はその言葉で一気に目が覚めた。
「・・・本気なの?」
「俺、フィーナと約束したんだ。君を解放させてやるって。そうしたらフィーナは満面の笑みを浮かべて一言、待ってるって。今日は見張りの数も少ない。そして、明日になれば道も険しくなり、救出も難しくなる。やるのは今日しかないんだ。よして何より、頼れるのは君しかいない。・・・協力してくれるよな?」
私は少し考えた。
できることならばフィーナを奴隷の立場から解放してあげたい。でも、奴隷という立場からすれば仕方が無いと思っていた。毎日のフィーナとの会話も特別何も変化はなかった。
でもそれがフィーナの本当の意思ならば。
「・・・わかった。協力する。」
「よし、牢屋の鍵はここにある。」
と言って、アーカムは私に鍵束を見せた。何て用意周到なのだろう。
「フィーナの牢屋へ行こう。」
フィーナの入っている馬車は車列の後方にあった。そして私たちが寝泊まりしていた馬車も車列の後方にある。位置的にはそれほど遠くはなかった。
馬車の中に入ると、同じ牢屋に入っている猛獣たちも眠りについていた。時間的にはもう日付が変わっている頃だろう。もう少しすれば見張りも交代の時間だ。事は迅速に行わなければならない。
一方のフィーナは牢屋の中で眠っていた。だが、アーカムが牢屋の鍵穴に鍵を入れると、その音に反応してか、フィーナは目を覚ましたようだ。
「・・・アーカム?」
「待っていろ、今ここから出してやる。」
「待って、そんなことしたらあなたたちは傭兵達から狙われることになる!」
「しっ!そんなこと覚悟の上だ。でもチャンスは今日が最後なんだ。俺たちと一緒に逃げよう。」
そう言ってアーカムが牢屋を開けるとフィーナは私に抱きついた。
「シズク!」
「うーん、本当なら俺に抱きついて欲しかったんだけど。」
そのアーカムの残念そうな言葉に、ふふふ、と私は笑みを浮かべ、フィーナと向き合った。
「さあ、逃げよう。私たちがあなたを自由にしてあげる。」




