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私は夜中、馬車に揺られながらウトウトしていた。
「敵襲だ!」
その声に反応し、私は飛び上がって馬車の外に出た。
馬車の外は馬車がともしている明かりで周りの様子がすぐに把握できた。
私のいる後方には夜盗らしき人影に囲まれていた。目視できるだけで10人以上いるだろう。これくらいの規模の旅団を襲うというならば、実際にはこの10倍以上はいてもおかしくないだろう。傭兵100人規模で雇ったのも決して間違った判断ではない。
しかし、実際に動けた傭兵はその半分にも満たないだろう。実際、私の目の前には夜盗が5、6人、今にも襲いかかろうとしている。一体何やっているのだろうか!
だが、私も伊達に幾度の戦いをくぐり抜けてきた傭兵ではない。敵の動きを見切ると、すぐさま得物である刀を抜き、一気に斬りかかる。夜盗のような雑魚はいとも簡単に倒れ戦闘不能状態に追いやった。他の傭兵達もあらかた夜盗を片付けたようだ。勝てないと悟った夜盗共は散り散りになって闇の中に消えていく。こちらの被害は傭兵が何人か負傷したものの任務続行には支障は無い。
「シズク、無事だったか。」
そう声をかけてきたのはこの仕事に誘ってきたアーカムだった。
「当然でしょ。私なんか同時に5人も相手してやったわ。」
と自慢げに返す。
「くそう、俺なんか3人だったってのに。」
正直、勝負の勝ち負けなど存在せず、相手にした人数なんて関係ないのだが。
「でもなんかこっち側の人数少なくなかった?」
「ああ、傭兵の何人かは未だに夢の中さ。きっと夜襲にも気がついていないだろう。明日の朝になってびっくりするさ。」
その後、詳しく話を聞いたのだが、報酬の高さと護衛任務故に、ほとんど実戦経験のない傭兵達が沢山いたという。大丈夫なのか?この傭兵団は?私としてはそんな奴らはここで首にしても良いと思うのだが。
さらに聞いた話だが、この旅芸人の用心棒をしているゲイルという男は15人もの夜盗を相手にして戦い、ほとんど無傷で勝利したという。旅団を護衛する傭兵の中で流れた噂だ。さらに聞いた話では大きな体と同じくらいの大剣を振るい、夜盗の得物ごと真っ二つに切り裂いたともいわれている。
上には上がいるものである。私にだって、あのウォルフ騎士団長はとても敵う相手とは思えない。出会ってすぐに感じた私の直感だ。そして、ここにももう1人存在していた。ゲイルという男。アイツは敵に回さない方が身のためかもしれない。
こうして旅団は最初の襲撃を退けた。だが、まだ旅の始まりである。この後も何度も襲撃を受け、経験の浅い傭兵は次々と負傷、または倒れていった。不幸にも夜盗によって殺されてしまった新米傭兵は「荷物になる。」との理由で道の脇に簡易的に埋葬された。もしかしたら私も駆け出しの頃はこういう結果になるのではと、次々と倒れていく傭兵達の姿を見て恐ろしくなる。
そして改めて感じる。
これが実践なんだと。
旅も中盤を迎え、途中何度か移動の足を止め、休憩を取っていた。移動に使う馬を休ませるためだ。
そのたびに私はフィーナの元へと向かった。馬車は近いので会うことはそんなに難しくはない。その度にたわいもないない話や私の武勇伝などの話で盛り上がる。
しかし、この日はいつもとは違っていた。




