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ある日の朝のことだった。
どんどん、と、工房のドアを叩く音が聞こえる。
誰だろう?こんな朝早くに?
リリカがその音に反応してベッドから飛び起きてドアを開けると、リリカは私を呼び出した。私に用事のあるお客さんらしい。
眠い目をこすりながら工房の入り口まで来ると、訪問客がアーカムだとわかった。何だろう?こんな朝早くから。
「旅芸人達が次の街へ移動するからそれまでの護衛の仕事が入ったんだ。報酬は高いし、何よりも頭数が足りないから大量の募集だそうだ。シズク、どうだ?一緒にこの仕事引き受けないか?」
「・・・あんた、報酬よりもあのフィーナって子に惚れちゃったんでしょ。」
「な、なんでわかったんだ?」
そんなこと顔を見ればわかる。今日のアーカムの顔はいつもと違って見えていた。若い女の子を甘く見ないで欲しいものである。
まぁ、そんなことはおいておいて。
あの旅芸人団にはゲイルという強力な用心棒がいる。しかし、あれだけの規模の旅芸人だ。移動中に襲撃を受ければたとえゲイルが強力な実力を持っていたとしても1人では防ぎきれない。そのための傭兵大量募集なのだろう。
報酬も悪くないので私はアーカムの提案を快諾した。
「そっか、もうシズクとは会えなくなるのね。」
フィーナは寂しそうに私に告げた。
「・・・護衛団には私もついて行くから、もう少しお話しできるよ。」
「・・・ねぇ、シズク、私と一緒に、どこかに逃げない?」
「え?」
私は一瞬言葉を失った。それくらいの突然の発言だった。奴隷という身分でありながら自由を求めるという発言。ある意味、当然とも言えるが、これまで幾度も会話を交わしてきた私にとっては衝撃とも言える発言だった。当然、回答に困ってしまい、言葉を失ってしまう。
「うふふ、冗談よ。次の街までの護衛、よろしくね。」
「え、あ、うん、任せて。無事に送り届けてみせるから。」
今日はこれ以上の会話はなく、フィーナと別れた。
そして任務、旅芸人団の移動の日当日を迎えた。
集まった傭兵は100人。どれも腕に地震のある、数々の激戦を乗り越えてきた傭兵に見えた。その中に私やアーカムの姿もある。私やアーカムの実力も彼らにも負けず劣らず、と言ったところだろう。
しばらくは敵襲が来るまで旅団所有の馬車の中で待機することとなった。要は敵襲がなければ私たちは何もすることがない。それでいて高額の報酬を受けることができるのである。できればこのまま何事もなく時間が過ぎてくれれば良いのだが。
フィーナがいる馬車は私が乗っている馬車とは別の馬車だ。とはいってもそんなに離れているわけではない。ゲイルのいる馬車は先頭にあり、その後ろに旅団の主要メンバーがいる。フィーナがいる動物や奴隷は旅団の後列の方だ。そして中列と一番後ろの馬車には私たち傭兵団がいる。
言うなれば効率的な配置だと思われる。敵襲があれば私たち傭兵団が旅団を囲むように敵襲に備えることができるし、最悪の場合、主要メンバーだけ敵襲から離脱できることができる。
そして、私たちは馬車に揺られて3日目の事だった。




