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「ん?シズク、今日もまた出かけるのか。」
あの日以来、私は毎日フィーナの元へと通っていた。
「うん、余り遅くならないうちに帰ってくるよ。」
「まぁ、今は何も仕事はない。ゆっくりしてくるがいいさ。」
そんなエルウィンと会話を交わして、私はフィーナの元へと向かっていった。
牢屋越しにたわいもない会話をして過ごす日々。
「でね、そしたらエルウィンったら・・・。」
そのほとんどは私のエルウィンへの愚痴なのだが。
「ふふふ、面白い方なんですね。そのエルウィンという錬金術師は。」
「そうなのかな?ちょっと変わったやつだとは思うよ。」
「会ってみたいなぁ、そのエルウィンっていう人に。」
「無理だと思うなあ。あいつ面倒なことにはテコでも動かないやつだから。」
これはある意味当を得ている。エルウィンは自分に関係ないこと意外には全く無関心なのだ。だからエルウィンに「フィーナに会って欲しい」といっても「めんどくせ」の一言であしらわれてしまうだろう。結果は目に見えている。
「私が自由だったら真っ先に会いに行くけどな。」
「あー辞めといた方がいいよ。帰れって軽くあしらわれるに決まってるから。」
これも当を得ている。今までも実際に興味本位でエルウィンの工房を訪れた人達は皆、門前払いを食らっている。まぁ仕事の依頼となれば話は別なのだが。
しかし、やはり彼女も自由が欲しいのだと思う。もし彼女が自由を手に入れたら何をしたいのだろう?
「そうねぇ、全くわからないよ。想像したこともないから。」
私は、外の世界を見て見たいとか、いろんな人達と興隆してみたいと帰ってくると思っていた。このような回答が帰ってくるのは想像していなかった。なんて可哀想な少女なんだろう。正直私はそう思った。
そんな会話を交わしているうちに、遠くから大柄な男がこちらに向かってきた。背中には背丈ぐらいの長さの剣を背負っている。
「ようお嬢ちゃん。」
・・・私の事を指しているのだろうか?
「あんたも傭兵か何かのたぐいか?その剣、変わった形をしているな。」
「よく言われる。これは刀って言って、私の国の伝統的な剣なの。」
「ほう、嬢ちゃんの国ってどこなんだ?」
「・・・遙か遠く。」
「そうか、一言言っておくが、あまりフィーナに関わらないでくれよ。その子はこの劇団の稼ぎ頭なんだ。変な情報を吹き込まないでくれ。」
そう言い残して彼は私の側から去って行った。
「・・・アイツは?」
私はフィーナに訪ねる。
「彼はこの劇団の用心棒、ゲイルっていうの。アイツには関わらない方が良いわ。相当強いもの。」
「うん、それは何となくわかる。」
この日は用心のため、これ以上フィーナと関わらない方が良いと判断し、これで別れることにした。
その後もゲイルの存在に気をつけながらフィーナに会う日々を過ごした。




