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足枷を両足に取り付けられた少女がこちらに向かってほほえみかけている。その表情は明らかに自然に作られた笑顔で、とても奴隷として扱われているようには思えない。しかし、足下を見てみると、足枷が少しきつく閉められているのだろうか、少々食い込んでいるようにも見える。
こんな子とされて平気なのだろうか、少々心配になって私はその少女を見つめ返した。
「ほら、そんなところに立ってないでこっちに来て。別に取って食べたりするわけじゃないし。」
「私・・・道に迷って・・・観客席はどっちかな?」
「次の演目までまだ時間はあるわよ。それより、私はあなたに興味があるの。ちょっとお話しさせてよ。」
私はいわれるがまま、檻を背もたれにして少女の側に座る。
「あなた、変わった武器を持っているのね。」
彼女は私が肌身離さず持っている刀の事を指しているのだろう。
「うん、これは私の国の伝統的な武器で、刀っていうんだ。」
「カタナね・・・。変わった形をしているのね。ねぇ、あなたは他の国からやってきたの?」
「うん、ま、まぁ、そうだけど・・・。」
好きでこの国にやってきたわけではないのだけれど。一言、気がついたらこの国にいて、どうやってこの国にやってきたのかはわからない、とも付け加えた。
「へぇ、ねぇ、あなたの国のことをもっと教えて。あなたの国、他のどこにも見たことない国だからすごく興味があるわ。できればその国に行ってみたい。」
「はは・・・行きたくても行けないかもしれないよ。」
「そんなことないよ!私だっていろんな国を回っているし、まだ行ったことない国だってあるもん!」
「そう、行けると、良いわね・・・。」
「それより!あなたの国のこともっと教えて!」
これ以上拒んでも彼女の好奇心は止まらないだろう。私は観念して私がリーゼガングに来る前にいた国、日本についていろいろと教えてあげた。
この世界にはない高度な文明を持っていること。
私たちが住んでいた環境、食生活、学校生活。
彼女は私の発言に驚きながらも熱心に耳を傾けてくれた。
本気で行こうとしているのか?でも彼女は奴隷の身。自由に行動することは許されない。
「ねぇ、私、さっきから思ってたんだけど・・・。」
思い切って聞いてみることにした。
「なぁに?」
「あなた、本当に奴隷?」
「そうよ、見ればわかるでしょ?」
そう言って彼女は自分の足に付いている足枷を指さした。
いや、それはそうなんだけど。
「ちっとも奴隷らしくないなって。そんな感じがしたから。」
「そうね。この旅芸人の一番の稼ぎ頭は私だから。みんな優しく扱ってくれるのよ。」 そうなんだ。稼ぎで待遇が変わるんだ。
「でも、本当は、自分の足で、もっと自由に動き回りたいな。」
彼女の声のトーンが変わった。これが彼女の本心なのだろう。
「あ、そろそろ次の演目が始まるわよ!観客席はそこの道をまっすぐ行って右だから!」
「あ、ありがとう!」
「あ、あなたの名前は?」
「私はシズク。巳波雫よ。」
「私はフィーナ。また機会があったらお話ししましょ!」
そう言って私は彼女に手を振りながら観客席へと戻って行った。




