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ニルード王子誘拐事件から数日が過ぎた。
私がこちらの世界に来てからもう半年が過ぎただろうか?
あれから私は山賊や強盗相手を目的とした護衛の仕事にも着手し始めた。対人戦闘の経験を積むためである。それに、エルウィン達にあんな恥ずかしい姿を見せたくない。むしろこちらの方が本来の理由でもある。やばい、思い出すだけで顔から火が出そうだ。
「どうした?シズク。顔が赤いぞ。熱でもあるんじゃ無いのか?」
「そ、そんなんじゃないわよっ!エルウィンのバカッ!」
「?何を怒っているんだ?まったく、お前みたいな若い女の考えることはわからん。」
「ところで師匠がこうやって配達に同行するのは珍しいですね。何かあったんですか?」
そう、私は今錬金術で作成した製品を依頼者に配達する仕事をしている。ただいつもと違うのはその配達にエルウィンが同行していることだ。普段ならばリリカと2人で済ませる仕事だ。この仕事にエルウィンが同行するのは、私がこの世界にやってきて初めてのことだ。
「まぁ、最近は物騒になっているからな。王子の誘拐事件が起こってから気をつけるようにあのウォルフからも言われている。」
「そんなに私の剣の腕が信用出来ないわけ?リリカぐらい私が守ってあげられるわよ。」
「そのお前を守るのは誰なんだ?」
「うっ、それは・・・。」
私は言葉に詰まる。私を守るのは・・・
「冗談だ。お前は自分の身ぐらい自分で守れるだけの力を持っているだろう?」
なんかむかついてきた。
「まぁ、依頼者の意見を直接聞くのも大切な仕事だと思ってな。今回は俺も同行することにした。」
なぁんだ。こいつもちゃんと仕事してんじゃん。
そう思った私の後ろでリリカが私の服の袖を引っ張る。
なんだろう?なにか伝えたいことでもあるのかな?私はリリカの口元に耳を近づけた。
「本当は師匠はシズクさんの事が心配なんですよ。」
「なっ!?」
その言葉を聞いてまたあのことを思い出す。ああっ、もう思い出したくない事なのに何で何度も考えちゃうの!?
「リリカ!てめぇ余計な事を言うんじゃねぇ!!」
「へへへ~、師匠の考えていることは私でもお見通しですよ~!」
そう言って拳を振り上げるエルウィンから逃げるようにリリカは前方へと逃げ出す。
「でも、あの事件以来、騎士団の見回りも強化されたからそんなに心配はいらないんじゃ無いかしら。ほら、あそこにも騎士団のメンバーが見回りしているし。」
でも何でだろう、このあたり普段より人が多いような。
「こりゃアレだな。」
「アレって何よ。」
「師匠!シズクさん!あれ見てください!」
私たちがリリカの指を指す方へ視線を向けると、大きなテントが見えた。
「なにあれ?」
「この町に旅芸人が来ているんですよ。シズクさん、せっかくだから見に行きませんか?」
「えっ、でもまだ配達品が・・・。」
「俺が配達してくる。せっかくだから見てくれば良い。」
「何言っているんですか!師匠も見ていきましょうよ!」
「えっ、お、おい、押すな!リリカ!シズクも腕を引っ張るな!」
「何言ってんのよ!せっかくだから見に行きましょう!」
そう言って、私とリリカは無理矢理エルウィンを大きなテントの中へと引きずりこませた。




