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ニルード王子誘拐事件から1ヶ月が過ぎた。
「へぇ、シズクさんの国では殺人は重罪なんですね。」
「まぁ、その状況にもよるけど。さすがにあのとき人を切ったのは恐ろしかったわ・・・。」
いまでもあの感触は忘れることができない。あまりにも恐ろしく、夢に出てきそうな、夢の中でも叫び狂いそうな気分だった。
だが、慣れというのも恐ろしいものである。
あの日以来、仕事でいくつかの護衛依頼を受けた。これまでとは大きく違い野獣が多く出現するエリアでは無く、山賊や野党、強盗が多く出没するエリアだ。当然人を斬れなければ勤まらない依頼である。私はそれらの依頼をこなしていくうちに、人を斬ることにためらう事が無くなっていった。
今考えるととても恐ろしいことだと未だに思う。
・・・もう過去の自分に戻れないのかと。
「それはそうとあの王子はどうしているのかしらね。」
今は日ごとも一段落し、今の住まいであるエルウィンの工房にいる。エルウィンは毎度のように仕事場に篭もりっきりだ。エルウィンの仕事が終わるまでのつかの間の休息をリリカと共に過ごしている。
「そうですね、そのうちまた工房にひょっこり現れるかもしれませんよ。」
「あーあの王子ならやりかねな・・・。」
と話しているところにトントンと工房のドアを叩く音がした。
「はーい!あ、王子!」
「・・・噂をすればなんとやらね。」
ドアを開けたところに立っていたのはニルード王子だった。
「いや・・・こないだはひどい目に遭ったよ。あの後お父様からさんざん説教されるし、しばらく外出禁止になっちゃうし・・・。」
「あの・・・王子、後ろ・・・。」
「えっ?」
ニルード王子の後ろにはウォルフ騎士団長が立っていた。
「王子、まだ謹慎は解かれていないはずです。さぁ、お城に戻りましょう。」
「えっ、なんですぐバレるの?」
「王子のやることは全てお見通しです。」
あ、そうか、ウォルフ騎士団長も錬金アイテムで王子の居場所がすぐにわかるんだっけ。
ウォルフ騎士団長に担がれ無理矢理お城へと向かうニルード王子。
「うわーん!シズクー!」
「泣かないでください。また遊びに行きますから。」
「っていうか、ちょっとは懲りなさいよ。」
私は王子の情けない姿を見て深いため息をついた。




