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「さて、後はお前だけだな。」
エルウィンは一人残った王子誘拐犯の顔をにらむ。
「ま、待て、こっちには人質がいるんだぞ!この王子様がどうなってもいいのか!?」
そう言って誘拐犯のリーダーの男は手に持っている剣をニルード王子の首元に突きつける。しかし、彼の発する声の震え具合から明らかに動揺している。
そしてエルウィンも冷静だった。
「お前、前ばっかり気にしてんじゃねぇよ。たまには後ろも気にしてみたらどうだ?」
そう言われ、誘拐犯のリーダーはゆっくり後ろを振り向く。
そこには青い鎧に身を固めた、背が高く長髪の男が立っていた。その手には長剣が握りしめられ、その刃は誘拐犯の首元に突きつけられていた。
「王子に傷ひとつつけてみろ。この剣の錆にしてくれる。」
そう、鎧の男がつぶやくと誘拐犯のリーダーはもうこれまでと言わんばかりに剣を地面へ落とした。
「よう、来るのが遅かったじゃないか。」
「これでも早く来た方だ。貴様の作った連勤アイテムが役に立ったぞ。感謝する。」
「エルウィン、この人は?」
私はエルウィンに訪ねた。
「ああ、こいつはこのリーゼガングの騎士団の団長。・・・そして、リーゼガング最強の男ウォルフだ。」
「君が異国から来た剣士、シズクだな。貴様その剣の腕、噂には聞いている。今後手合わせ願いたいな。」
「い、いえ、そんな、私なんてまだまだで・・・。」
「で、お前、いつまで俺にしがみついているんだ?」
「えっ?」
「・・・お二人さん、意外と熱いね・・・。」
と、拘束を解かれたニルード王子がつぶやく。
そう、私は戦闘が終わってからずっとエルウィンにしがみついたままの格好でいたのだ。そのことに気がつくと私はすぐさまにエルウィンの元を離れた。顔が熱い。顔から火が出るというのはこのことを言うのだろうと身をもって感じた。
「とにかく、これからどうするんだ?騎士団長が出てきたからにはただじゃ済まないだろ?」
エルウィンはウォルフに話しかける。
「そうだな。まずは王子はこのまま私が連れて帰る。そして、この者も王子誘拐の罪で裁かねばならん。」
「ちょっと待て、酒場の勘定はどうするんだよ。王子が酒場代払うことになっているんだぞ。」
「・・・ならば私が立て替えておこう。貴様達は安心して帰るがいい。後は我々騎士団に任せてくれ。」
「そういうことなら任せた。面倒なことは嫌いなんでね。」
「またね~シズク~!」
帰ろうとする私に向かって手を振って見送ろうとするニルード王子。だが、その行動はその後のウォルフの言葉によって止まってしまった。
「王子、今回の件、王子にも責任があります。国王様のお説教が待っておりますのでご覚悟ください。」
「え、そんなー!助けてー!エルウィン!シズク!」
「自業自得だな。」
エルウィンがそうつぶやく。
「あら、珍しく気が合うわね。」
私もエルウィンにそうつぶやき返した。




