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倉庫の中は思った以上に広かった。というよりは、元々倉庫の中の物資が少ないから広く感じたのかもしれない。でもそのおかげで中の様子がすぐに認識できた。
体格は大小あるもののリーダーらしき体格の大きい人物が1人とその手下が6人。そして、問題のニルードは・・・いた。リーダーらしき人物の隣に座らされていて、両手を後ろで縛られ、口には布を咥えられ、声が出せないようにされている。顔に少々傷がある物の、意識はあるようだ。
そのニルードはこちらの存在に気がつくと「うーうー」と涙目で何かを訴えかけていた。
「まったく・・・こうも簡単に誘拐されるなんて、このリーゼガングの街も治安が悪化してしまったなぁ。王子様よぉ。」
と、ニルードの姿を見てエルウィンがつぶやく。
「な、なぜ王子がここにいるとわかったんだ!?」
「この国の錬金術の力を甘く見ないでもらいたいね。さて、こっちはクソ王子に酒場代を支払ってもらわないと困るんだ。大人しく返して・・・って訳にはいかないか?この状況じゃ。」
手に持った剣を肩に掛けながら、挑発するように話しかけるエルウィン。
「く、くそう、お前ら、やっちまえ!人数ではこっちの方が上だ!」
そうリーダーの男が叫ぶと手下共は手にした得物を構えてこちらに向かってきた。
それと同時に私も腰につけた鞘から刀を抜いて構えた。
エルウィンに4人、私に2人、こっちに向かってくる。
「シズク、そっちは任せたぞ!」
「言われなくてもっ!」
自分の命がかかったこの戦い。ましては相手は同じ人間。本当ならば冷静でいる方がおかしいのかもしれない。
でもお酒が入っているせいか、なぜか冷静でいられた。
襲いかかってくるのは2人。
1人目は小柄な体格の男だ。大きく剣を振りかぶったままこちらに向かってくる。
「ならばっ!」
私は右足を踏み出す同時に刀を水平にし、敵の腹を切り上げた。
「なっ!?」
敵はそう言い残すと腹から血しぶきを上げて倒れ込んだ。
「2人目っ!」
今度は少し大柄な男だ。敵が振り下ろした剣の斬撃を刀で受け止める。
「くっ!だったら!」
私はその受け止めた勢いでそのまま刀を切り返し、大きく縦に振り下ろした。大柄な男は血しぶきを上げ後ろに倒れた。
これが人間との戦い・・・。
思ったほど手応えがないことに正直びっくりした。これなら街の外をうろついている野獣の方が遙かに強く、恐ろしい。でもそれ以上に。
手が震えて止まらなかった。
生まれて初めて人を斬ったという自分の行動に恐怖に駆られていた。
たとえそれが人を助けるため、自分の命を守ろうとするためであっても。
それを理解した上であっても。
気がついたときには、私は刀を落としてエルウィンにしがみついていた。
「ご苦労だったな。もう大丈夫だ。シズク。」
エルウィンはそう小さくつぶやくと、私の頭を優しくなでてくれていた。私の今の気持ちを察してくれているかのように。




