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その後も相変わらずニルードの周りには人だかりができていて、取り残された私とエルウィンはビールを飲みながら会話を続けた。
とは言ってもほとんどは私のエルウィンへの愚痴だ。仕事場が散らかしっぱなしで汚い、せっかく錬金で稼いだお金をすぐに使い果たす、など。それに対してエルウィンは、「ああ。」だの「ふうん。」だの素っ気ない返事が返るだけだ。本当に私の話を聞いているのか?と問いただしてみたくもなる。
やがてその愚痴もほとんど言い尽くし、お互い無口になってしまった。と、ふとニルードがいた方を振り向くと、そこにいたはずのニルードがいなくなっているのに気がついた。ニルードの周りにいた人だかりも散り散りになっていた。酒場全体を見回してもニルードの姿は見えない。
「ねぇ、ニルードはどこ行ったのかな?」
「さあな。トイレにでも行っているんじゃ無いのか?」
相変わらず素っ気ない返事がエルウィンから返ってきた。それに対して私は「そっか」と返してまたビールを飲み始める。トイレならすぐに戻ってくるだろう。
待つこと10分。
「まだ帰ってこないね。」
口を開いたのは私の方だった。トイレにしては長すぎる。
「・・・大きい方じゃ無いのか?」
「・・・そっか。」
さらに待つこと20分。
大きい方だとしてもこれは長すぎる。
「あいつ便秘気味なのか?」
・・・本気でエルウィンを殴ろうかと思った。
「まぁ、アイツのことだ。どからふらぁとこのあたりをふらついているんだろ。そのうち戻ってくる。」
「そんなこと言って、もし戻ってこなかったらここの代金誰が払うの?あの王子様が派手に大盤振る舞いしたからそれだけのお金持ってないでしょ?」
「なっ!それは大変だ!すぐに探しに行くぞ!シズク!!」
ゲンキンなやつだ。でもこの国の大事な王子様だ。何かあっては大変だ。でもそれ以上に我が家にこれ以上の負債を抱え込むわけにはいかない。なんとかニルードを見つけ出し、この酒場の代金を支払ってもらわなければならないのだ。
私とエルウィンは酒場を飛び出した。
「でも、ニルードの居場所なんだけど、当てはあるの?」
「大丈夫だ。これがある。」
と、エルウィンがポケットの中から紙切れを取りだした。それを広げると、リーゼガングの地図が書かれていて、その中に赤く印が付いていた。
「こんな事もあろうかとニルードの靴に錬金術のアイテムを忍ばせておいてある。この地図はそのアイテムの位置を示す錬金術のアイテムだ。」
やるじゃんエルウィン。
私たちは地図の印が示す場所へ向かって走り出した。




