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「はっはっは!こりゃ傑作だ!」
目を覚ましたエルウィンは大声を上げて笑い始めた。
「しかし、この国の王子様の顔がシズクの彼氏にそっくりだったとはな!」
「だから彼氏じゃ無いってば!それに、本当にそっくりだったし・・・。」
結局のところ、この家を訪問してきた男性は勇二君では無かった。ひょっとしたら、もしかして、とちょっと期待はしていた。いや、ちょっとどころでは無い。この、右も左もわからない世界で、知り合いがいたらどれだけ心強いだろう。しかもそれが勇二君だったら。
しかし蓋を開けてみたら、その人は勇二君では無かった。しかも、驚くことにこの国の王子様ニルードと言うじゃないか。ああ、思わず勇二君と叫んでしまった自分が恥ずかしい。本当に顔から火を出してしまいそうだ。
「でもどうして王子様がこんな所にやってきたんですか?」
「いやぁ、どうもお城に篭もっているとどうしてもストレスが溜まってくるんだよ。」
「で、たまに夜中お城を抜け出してきてはここに来るんです。」
と、リリカがお茶を差し出しながら話す。
「そしてさんざん愚痴をこぼして帰って行くんだよ。」
と、そのお茶をすすりながらエルウィンは話す。
「ひどいなぁ、これも城下の様子を視察する、という、この国を治める人間にとっては大事な仕事だよ!」
「じゃあ、愚痴をこぼした後、酒場に繰り出して酔っ払って帰って行くのも立派な仕事というのかね?王子様よぉ。」
「もちろんだとも!酒場は貴重な情報源だからね、これでもそこからの情報を国作りに役立てているつもりだよ!」
「そう言っている割には、結局千鳥足になって、お城の兵士に運ばれて帰って行くのがオチだろう。」
「た、たまにはそういうこともあるさ。」
「毎回の間違いだろう?」
なんか、この二人の会話を聞いていると、この人は本当に王子様なのかちょっと疑ってくる。それくらいエルウィンがいつもより饒舌なのだ。
「それよりも、君が噂の、新しいエルウィンの弟子かい?」
「なんで私がいつの間にあんたの弟子になったんですか!?」
「しらん、俺もこいつを弟子にした覚えは無い。」
「そうかい、よくお城にリリカ君と訪れる様子を見ていたからね、てっきり新しい弟子かと思ったよ。・・・君、よく見ると結構美人だね。一緒にお城で暮らさないかい?」
・・・やっぱりこの人は勇二君じゃない。勇二君はそんなことは言わない。
でも、王子様と結婚・・・お姫様になるのか・・・それも悪くないかも・・・。
「おーい、シズクー?帰ってこーい。」
はっ、いや、何を考えているんだ私は!大体こんなナンパ王子なんてこっちからお断りよ!
「すいませんが、丁寧にお断りさせて頂きます。」
「まぁ、今すぐ決めてくれとは言わないさ。その気になったらいつでもお城に来てくれ。シズクさんなら大歓迎だよ。」
・・・この人は本気だ・・・でもそれが逆に引くわ~。
「さて、エルウィン、早速出かけようか!」
「結局また行くのか?」
「もう、仕方ないですね、早く帰ってきてくださいね。」
「シズクさんも一緒に来ないかい?」
「えっ、行くってどこへ?」
「決まっているだろう。酒場だよ。もっとシズクさんと話がしたいしね。」
・・・はぁ・・・仕方が無い、付き合ってあげるか・・・。




