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白い花捜索の冒険から数日が過ぎた。
エルウィンは相変わらず自分の工房に篭もっている。顔を見せるのは食事の時だけで、それでも私と顔を会わせるのは一日に一回あるかないかだ。
そのエルウィンの弟子、リリカは師匠を気遣い、少なくとも食事はきちんと取るようにと促すが、当の師匠は聞く耳を持たない。仕事熱心なのは本来関心するべき所なのだが、ここまで行きすぎると、私でさえも心配になってしまう。
でも仕事が終われば話は別だ。エルウィンは仕事が終わると居間にあるソファーで大きないびきをかいて一日中眠り、目を覚ましたと思ったら今度は夜が明けるまで酒場に繰り出し、錬金術で得た報酬のほとんどを使ってしまう。おかげでこの家の家計は火の車だ。
そういう私も全く収入が無いわけではない。刀という得物を得てからは護衛の仕事を始めるようになった。最初は依頼も少なく、エルウィンの材料収集に付き合わされるという、ほとんど収入にはならなかったが、最近は仕事も増え、稼ぎも増えてきた。もう私の収入がこの家の家計を支えていると言っても過言では無い。しっかりしてくれ、この家の主だろう、エルウィン!
「ただいまー!」
「あ、シズクさん、お帰りなさい!夜遅くまでご苦労様でした!」
夜遅く、仕事から帰ってきた私をリリカは暖かく迎えてくれる。
「今回も無事に帰ってきてくれて良かったです。」
「あれくらい、余裕よ、余裕!」
「でも、油断は禁物ですよ!」
「う、うん、それくらいわかっているわよ。私だってもっと腕を上げなくちゃいけないし・・・。それより、あのバカは?」
「・・・いつもの通りです。」
ソファーを見ると、その上には体を大の字にして、大きないびきをかいて眠っているこの家の主がいた。
「もう、相変わらずねぇ。ねぇ、お腹がすいちゃった。ご飯ちょうだい。」
「はい、ちょっと待ってくださいね!」
リリカは台所へ走り、食事の準備を始めた。
と、そのとき。
トントン、と家のドアを叩く音が聞こえた。
誰だろう?こんな夜中に。
「すいません、シズクさん、代わりに出てもらえますか?」
「う、うん、はーい、今行きまーす!」
そう言って私は家のドアを開けた。するとそこには見覚えのある顔があった。
「え・・・勇二君・・・?」
そう、元の世界にいた、同じクラスメイトでクラス委員を務める勇二君だ。そして、私が剣道の試合を次の日に控えると、必ず頑張ってこいと応援してくれる、良い男友達だ。あらかじめ言っておくが、勇二君は私の彼氏では無い。まぁ言うなれば友達以上、恋人未満の間柄だった。
でもそんな彼がどうして私の目の前に立っているんだろう?彼も訳もわからずこの世界に迷い込んでしまったのだろうか?着ている服もこの世界の人からすればちょっと変わっているようにも見える。なんというか、ちょっと気品の高さを感じる。
「どうしたんだい?僕の顔に何かついてる?」
「あ、いや、そう言うんじゃ無くて・・・。」




