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まずは正しい構え。
右手は柄を軽く握り、左手はしっかりと柄を握る。
そして、ゆっくり振りかざし、振り下ろすと同時に、ぞうきんを絞るように両手で柄を強く握る。
剣道の基本動作。その通りに体を動かし刀を振るう。
その結果。
藁の束は斜めに真っ二つに割れた。刀によって切り離された藁の束はパサッと静かに地面に落ちる。その光景を目の当たりにした私は思わず言葉を失った。
「やった!やりましたねシズクさん!」
「なんだ、やればできるじゃんシズク!」
「・・・私、ほんとに斬ったんだ・・・。」
「そうですよ!シズクさん、ついにやったんです!」
私は未だに信じられない気持ちだった。思わず刀を手放し地面に刀が落ちる。そんな私にリリカは嬉しそうに抱きついてきた。リーズも私のそばにやってくる。
「なんだ、騒々しい。」
エルウィンが不機嫌そうに姿を現した。
「師匠!シズクさんがやったんですよ!」
エルウィンは真っ二つに切り裂かれた藁を見て、
「・・・ふん、やっと使いものになったか。」
「エルウィン、これで私も採取に連れて行ってもらえるのね!」
「・・・それとこれとは別だ。」
「・・・なっ!」
「・・・まぁ、考えてやってもいいが。」
そう言ってエルウィンは再び工房の中へと戻っていった。
「な、何なのアイツ!」
「ふふふ、お互い素直じゃないねえ。」
とリーズ。
「全くです。」
とリリカ。
「それってどういうこと?」
「「べっつにー」」
それからしばらく経ったある日。
「リリカ、ちょっと材料が足りなくなってきた。採取に出かけるぞ。」
工房から出てきたエルウィンは不機嫌そうにリリカに話しかけてきた。
「はい、師匠!」
「シズク、おまえも来い。」
「えっ?」
私はその言葉に耳を疑った。
「何度も言わせるな。シズクも採取についてこい。・・・お前の剣の腕、期待しているぞ。」
「・・・わかったわ!」
私は刀を握りしめ、エルウィンたちとともにリーゼガングの第三の城壁の外へと向かった。