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「ふむ、この剣は・・・シャムシールに似ているな。」
それが私の写真に映った『刀』を見て発した鍛冶場の親方達の一言だった。
「シャムシール?」
「これだよ。シズクの嬢ちゃん。」
そう言って見せてくれたのは一振りの片刃刀だった。
確かに形は刀に似ている。しかし唯一、決定的に違うのは刀身の反りだった。シャムシールと呼ばれる剣は『刀』よりもおおきく反った形をしていた。
ただ見た目の違いはそれだけだった。
「うん、これならシャムシールの作り方をベースにすれば作れることも無理じゃ無い。ありがとう。これなら作れるよ。」
「やった!」
「やったじゃない!シズク!」
私と一緒になって喜ぶリーズさん。
「・・・で、私は何をすれば良いのですか?何かお手伝いできることはありませんか?」
せっかく作ってもらうのだから、何か手伝えることがあれば手伝いたい。しかし、
「うーん、好意だけありがたく受け取っておくよ。嬢ちゃんは大人しく完成を待っていてくれ。」
「えっ・・・?」
「シズク、あんたは部屋の掃除という大事な仕事が残っているだろ?仕事を途中で放りだしてはダメだ。きちんと最後までこなさないといつまで経っても一人前にはならない。」
「リーズさん・・・。」
「リーズの野郎、何一人前なこと言ってるんだ。お前なんざまだ半人前も良いとこなのに。」
「んもう、せっかく良いこと言ったのに全部台無しじゃ無いですか、親方!」
その瞬間、鍛冶場が爆笑の渦に巻き込まれた。
その後の私はというと再び埃だらけの部屋にこもりきりになって掃除を続けた。
刀の完成が気にならないといえば嘘になる。だが、餅は餅屋という言葉があるように鍛冶のことは鍛冶屋に任せるのが一番だと思う。とにかく私が口出しする事は無いのだ。
こうして私が掃除を何とか終えることができた頃、工房にリーズさんが訪ねてきた。
「シズク!剣ができたって!」
「本当ですか!?」
「あぁ、すぐに工房に来てくれって。」
「その前にお風呂に行きましょう。リーズさん顔がすすで真っ黒ですよ。」
「そういうシズクだって体中埃だらけじゃ無いか。」
リーズさんとお風呂に入って体中の汚れを落とした後、私ははやる気持ちで鍛冶場へと向かった。
鍛冶場に入ると待ってましたと言わんばかりに親方達が私の元に集まってきた。そしてその手には一振りの片刃の剣があった。
「待ってたぜ、嬢ちゃん。あんたが見せてくれた物通りの、納得いく物が完成したぜ。」
その片刃の剣は、私が思い描いていた、そして、写真とうり二つの『刀』そのものだった。