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私は藁にもすがる思いでベッドの周りを探した。
私の携帯電話は鞄の中に入っていたはずだ。その鞄さえ見つかれば・・・。
そう考えながら私はベッドの下を覗いてみた。
・・・あった。
私の鞄が。
そしてその鞄を開けて中を確認する。
中には学校で使った教科書とノート、そしてペンケース。そのペンケースのうらに隠れるように私の携帯電話を発見した!
「あった!」
私は思わず大きな声を上げた。
「わっ!どうしたの?いきなり大きな声を出して!」
リーズさんが何かあったかと言わんばかりに私のベッドルームを覗いた。
「あっ、リースさんごめんなさい。でも、あったんです。実物が!」
私はすぐにリーズさんの元に駆け寄り携帯電話を見せる。
「何これ?」
「ふふふ、私の国で作られた秘密兵器です!錬金術でも作れないアイテムですよ!」
エルウィンがこの言葉を聞いたらどう思うだろう。でもそんなことはどうでもいい。とにかくリーズに『刀』の写真を見せようと携帯電話を開く。やばい残りバッテリーがメモリ一つしか残っていない。大急ぎで『刀』の写真を探し出さなければ。携帯電話の画面には次々と日本の風景、優香や家族との写真が映し出される。
「なんか、私の見たことのない風景が次々と出てくるね。これがシズクが住んでいたニホンって国なの?」
私はその問いには答えなかった。その問いに答える暇など無かった。早くしなければバッテリーが切れて携帯電話が使えなくなってしまう。
そんな次々と切り替わる写真の中から博物館の写真が出てきた。あとちょっとだ。このあたりに『刀』を写した写真があるはずだ。
「ねぇ、シズク、聞いてる?」
「ちょっと黙ってて!・・・あった!」
私はついに携帯電話の中から『刀』の写真を発見した!その写真をリーズに見せる。
「これが『刀』です。作れますか?」
リーズは物珍しそうに携帯電話のディスプレイに映し出された『刀』の写真を見つめる。
「うーん、初めて見る剣だね。似たような片刃の剣なら見たことあるけど・・・こりゃ、親方たちにも見てもらわないとね・・・。」
「じゃあ、すぐにでも見てもらいましょう!」
「ちょっと、シズク、そんなに慌ててどうしたの!?」
「急がないともうこの写真見られないかもしれないんです!」
私は大慌てて工房を後にし、携帯電話を片手に鍛冶場へと走った。
「あ、ちょっと待ってよ!」
リーズもその後を追いかけてきた。