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その光景は衝撃的だったと言っても過言ではない。
ただでさえ普段エルウィンが作業している仕事場だ。ある程度は仕方が無いとしても常に清潔に心がけていると思っていた。しかし、実際に蓋を開けてみると、長年放置されていたかのように部屋中埃が積もっていたのだ。こんなところで仕事、いや、過ごしていたことが信じられない。
それでも仕事道具は掃除はしているようだ。どれも見たことがない機材だがそれらには埃は積もっていない。最低限の掃除はやっているのだろう。
「この部屋の掃除を帰ってくるまでに済ませておいてくれ。」
「え?この部屋・・・こほっ、いったい何年掃除していないのよ!」
「知らん。覚えていない。あ、そうそう、そこら辺にある機材は仕事道具だからな。勝手に触るなよ。じゃ、任せた。いくぞ、リリカ!」
「あ、はい!師匠!」
「あ、こら!待ちなさいよ!」
そう言ってエルウィンはリリカを連れて工房の外へと出て行った。
いったいこれだけの埃をすべて掃除するにはどれくらいかかるのだろう。彼らが帰ってくるまでに終わるだろうか。できることならここから逃げてしまいたい。でもそうしたらどうやってこの世界で暮らしていけばいいのか。
そう考えるとエルウィンの言うとおりにするしからない。かくなる上は。
「・・・上等じゃない。ピッカピカにきれいにして驚かせてやるんだから!」
そう言って、私は、いつ終わるのかわからない、「汚れまくった埃まみれの部屋の掃除」の作業に取りかかった。
「いったいいつになったら終わるのよ!」
掃除を初めて一日目、すでに夜になっていた。しかし、この日掃除ができたのは部屋全体の1割にも満たない。
やばい、
もうくじけそうだ。
「もう・・・寝よう。」
この日は夕食に手をつけず、そのままベッドに潜り込んで眠った。
できることならば私もエルウィンやリリカと一緒に採取に行きたかった。
しかし、戦えない私が彼らについて行ったところで彼らの足を引っ張ることになるのは目に見えている。
私も戦うことができれば、あるいは・・・。
そんなことを考えなら、この日は眠りについた。
エルウィンの掃除を始めて3日目。
私は一向に終わりの見えない作業を今日も黙々とこなしていた。
そんなとき、工房の外から工房のドアをノックする音が聞こえた。
「はーい!いまいきまーす!」
「よっ。あれ?たしかあんたシズクだったっけ?エルウィンは?」
ドアの向こうから姿を現したのは、鍛冶屋で働いていたリーズだった。