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手に持っただけでこれまでに無い不思議な力が伝わってくるのに、この刀を抜いたらどうなるんだろう。
「ね、抜いてみていい?」
エルウィンがうなずくと、私は手にした刀を鞘から抜いてみた。
青白く光る刀身。その輝きからとてつもない力を感じる。早く使ってみたくて仕方が無い。
まぁ、楽しみは後に取っておくとして、私ははやる気持ちを抑えてその刀を鞘にしまった。
「それとこれだ。」
そう言ってエルウィンはマントを私たちに差し出した。
それを受け取ると、ひんやりとした感触が伝わってくる。
「繊維素材に特殊な物を使わせて貰った。これを使えば真昼の砂漠でも快適に過ごすことができるだろう。」
分かる。これを全身に纏えば火竜の巣へ続く灼熱の通路も快適に通れそうだ!
そう考えると思わず笑みがこぼれる。
「あと、ここにある物で使えそうな物を作ってみたんだが、これは氷の力を封じ込めた弓の矢だ。3本だけしか無いが威力は強力だぞ。」
シンヤはその矢を受け取った。
「それとこれは私が作った、とっておきの氷の爆弾です。初めて作ったんですが、良かったらこれも持っていってください!」
「ありがとう、大切に使うね。」
この爆弾はフィーナが受け取った。
「さて、俺達ができるのはここまでだ。」
「・・・ありがとう。できるところまで頑張ってみる。」
そう言って私はエルウィンと拳を突き合わせた。
それから9日後。
私はフィーナ、シンヤと共に北西の山岳、火竜の巣へ向かう通路の前までやってきた。昨日は前回拠点にしていた洞窟で一晩を過ごし、体の調子は万全だ。
「みんな、行こう。」
私たちはエルウィンから受け取ったマントを身に纏って灼熱の通路の中へ進んでいった。
「あ、これ涼しい!」
「マジか、これ・・・。」
「スゴイ!エルウィン天才!」
マントの外側が高温のサウナで熱されているのに対して、マントの内側がクーラーで冷やされているかのように、ちょうど良い温度に保たれている。
「でも、顔は熱いままだね。」
「じゃあ、頭から被っちゃう?」
「それじゃ、前が見えないだろ。」
そんな会話が自然に出てくるくらい快適だった。本当にエルウィンすごい。天才。
しかし、通路の奥からは火竜のものと思われる咆哮が聞こえてくる。
そして、その声は奥へ進む度に大きくなっていく。
前回は火竜は巣の中で眠っていたが、今はそうではないのだろう。
通路の奥、火竜の巣の入り口で、中の様子をうかがってみる。
火竜の大きな体は、広い空間のほぼ中央で蹲っているようだ。だが、その目はぱっちり開いており、ときおり開く大きな口からはとてつもない大きな咆哮を響かせている。