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「ぷはーっ!おいしい!」
これが私の、ビールを一気に喉に流し込み、思わず口にした言葉だった。
少しアルコールが入った影響なのかもしれない。そのせいで心が開放的になっているのかもしれない。 でも、これが初めてお酒を、ビールを飲んだ感想だった。
お父さん、お母さん、みんな大人達はこんなおいしい物を飲んでいたのか!
「お嬢ちゃん、良い飲みっぷりだな!いいぜ、俺が奢ってやる!好きなだけ飲んで良いぞ!」
「本当!?じゃあ、じゃんじゃん持ってきて!」
「ちょっとシズクさん、大丈夫ですか!?」
リリカは心配そうに私に話しかける。
「大丈夫!こんなおいしい物、飲まなかったら損だもん!」
「ほう、シズクもこの麦酒が気に入ったか。べろんべろん酔っ払ったらどうなるんだろうな。フフフ。」
怪しい笑顔を見せてこっちを見つめるエルウィン。な、なんなのその目?なんかイヤらしい目つきにも見えるんですけど。
まぁいいや。こんなおいしい物が沢山飲めるんだもん。特に気にする必要もないか。どんどん飲んじゃお。
それから何時間が過ぎたんだろうか。
「ぷはー、やっぱりこのビール最高!おかわりください!」
「・・・お嬢ちゃん、・・・お願いだから・・・もう勘弁してくれ~!!」
悲鳴のような声が酒場中に響いた。
「シズク・・・お前・・・ザルか・・・?」
テーブルの上でうつ伏せになったままつぶやくエルウィン。
「あれ?どうしたんですかみなさん?もっと飲みましょうよ?」
「シズクさん、シズクさんは大丈夫なんですか?」
心配そうに私の顔を覗くリリカ。
「えっ?大丈夫って、何が?」
「あ、いえ、なんでも無いです。でも、もう時間も遅いので帰りましょう!」
「ああ、もうこんな時間なのね。そうね。帰りましょうか。お酒、ごちそうさまでした!」
「・・・ああ、いや、お構いなく・・・。」
次の日。
「おはようリリカちゃん!今日も良い天気ね!」
「し、シズクさんは大丈夫なんですか?昨日かなり飲んでましたけど・・・。」
心配そうに話しかけるリリカ。
「?なんにも無いけど?」
一体何を心配しているのだろう?私はいたって元気だ。体調もすこぶる調子が良い。
と、そこに、ソファーで眠っていたエルヴィンが目を覚ましたようだ。ゆっくりと起き上がり、私に話しかけてきた。
「うう・・・頭が痛い・・・シズク、お前は何ともないのか?」
「なんなのあんたまで。全然なんとも無いってば。」
「そうか、・・・俺は二日酔いのようだ・・・頭が痛い・・・。」
「はい、師匠、お水です。」
エルウィンは体の調子が悪そうだ。リリカが持ってきた、コップに入った水を一気に飲み干すと、大きくため息をついた。
「とりあえず、二日酔いに効く栄養満点のスープを作りましたんで、少しでも飲んでくださいね。」
「・・・ああ、そうさせてもらう。」
「ねぇ、エルウィン、またあのお店連れてってね。」
「・・・考えとく。」