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目を覚ますと私は森の中にいた。
生い茂る木々の隙間から日光が差し込み、私の顔を眩しく照らす。
ここは一体どこだろう?
確か私は剣道部の部活が終わって、市内の高校から家へ向かう途中だったはずだ。学校から自宅まではそれほど離れてはいない。歩いて10分程度と行ったところか。そこまでははっきりと覚えている。
しかし、その後の記憶が無いのだ。
私は上半身をゆっくりを起こし周りを見渡す。
周りは草木が生い茂っているが、今私のいる周りだけは比較的背丈の低い草が敷き詰められている場所だ。まるで、ちょっとした広場のようだ。
なぜ私はこんなところにいるのだろう?
「だれか、いませんかー!」
私は立ち上がり力の限り叫んでみるが応答はない。
とてつもない孤独感が私を襲う。あまりの恐怖に泣きそうになるこの感情を必死に堪える。
と、そのとき、背後からガサガサと音が聞こえた。
「ひっ!?」
私はとっさに後ろを向き、様子を見る。しばらくして姿を現したのは3匹のオオカミのような動物だった。
彼らは低い鳴き声と共に、口からよだれを垂らしながらこちらに近づいてくる。
間違いない。彼らは私をエサとしか見ていない。隙があれば飛びかかり、今にも食らうつこうというしているに違いない。
「だ、だれか・・・、助けて・・・。」
私は恐怖を堪え少しずつ後ずさりを始める。それと同時にオオカミたちもこちらに近寄ってくる。私とオオカミの距離は少しずつ縮まってくる。
そしてその距離が十分縮まり、オオカミの一匹が飛びかかろうとしたとき。
「あぶない!」
後ろから女の子の声が聞こえた。そしてそれと同時に目の前で発せされる大きな爆発音。
これは・・・爆弾?
目の前は爆弾から発せられた煙で視界が遮られてしまった。だが、森の中へ吹き込んでくる風が少しずつその煙をかき消していく。そして視界がクリアとなったとき、オオカミはその場に倒れ込み、その代わりに1人の青年が立っていた。年齢は私より年上の20代後半といったところだろうか。すらりとした体型で身長は私よりも背が高い170cm程度だろうか。そして青色の髪、服装は見たこともないような、だが、軽装の服を身にまとった青年だった。そして、その手には一振りの剣が握られていた。
彼がオオカミたちを退治してくれたのだろうか?
何にしろ彼のおかげで助かったのだ。お礼を言わなくては。
「あ、ありがとうござ・・・」
「こんなところで何をしている!死ぬつもりか!?」
その青年は私の言葉を遮り、険しい剣幕で怒鳴りつけてきた。
「い、いえ、そんなわけじゃ。」
「師匠、そんな言い方しなくてもいいじゃないですか!怯えてますよ!」
後ろから少女が姿を現した。年齢は私より少し幼い14歳ぐらいだろうか。背丈も私よりも低く150cm程度、すこしピンクがかった赤い髪をしていて、服装もやはり見たことのない格好をしている。そして、背中には大きなかごを背負い、肩にはちょっと大きめのバッグをかけている。
「とりあえずここは危険だ。安全なところまで移動しよう。話はそれからだ。ついてこられるか?」
「は、はい。」
私は言われるがまま彼らについて行くことにした。