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黒の竜使い  作者:
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第六話

私達が目的の場所についた時、西の王が攻撃を受けているところだった。周りに結界を何重にも張り、二人で西の王に近寄る。


『爺さん!』

『シズカとハクか。すまない…迷惑をかけたな』

「今は謝ってる場合じゃないよ、ラージ。敵の情報をなんでもいいから教えて」


そう言うと西の王、ラージの体から眩い光が溢れ出す。仮の姿、つまり、人間の姿になったラージ。青い髪、色の薄い赤い瞳。竜の時と色は変わらない。青年の格好をしたラージが、酷く弱って見えた。


「相手は、未知なる者だ」

「未知なる者?何それ」

「シズカ。おそらくお主と同じだろう」


私は驚き、目を見開いてラージの顔を凝視する。


私と同じ。つまりは、異世界から来たという事になる。いや、でも、あり得ない。そんな感情が表情に出ていたのか、ラージは私の頭を撫でた。


「シズカ。考え過ぎるな。お主の悪い所だ」


そう言うラージに頷き、ラージに回復魔法をかけてから敵と対面する。私はローブを羽織ってフードを被ってるから相手からは体格くらいしか分からないだろう。相手は男。何故か素顔を隠そうとせず、堂々と立っている。顔は遠いから確認出来ないが、髪の色が丸わかりだ。…馬鹿なの?


「お前、何者だ!」


相手が声を張り上げて言う。貴様こそ何者だと問いたい。そんな感情を抑え、私も彼と同じように声を張り上げて言った。


「この国のものだ。どこのものかは知らないが、他国の聖獣に手を出して、ただで済むと思っているのか」


ラージ達、四方の王は聖獣と呼ばれている。国内に銅像が立つほど、この国の民からの人気は高い。しかも、国を守るものなので、聖獣が攻撃したとなれば国も黙ってない。しかし、彼が言った言葉に私は目を見開いた。


「聖獣?何だそれ」


何も知らされてないのか。彼は、驚いた風な声を上げる。驚いてんのはこっちだっていうのに。私は溜息をついて彼に問う。


「何をしに来た」


すると彼は、


「人探しだ。昔、いなくなった妹を探していてな。この国にいると聞いたんだ。入り方が分からないんで、強行突破しようとしてな。したら、そこの竜さんが邪魔してきたんで、倒そうとしてたということだ」


…馬鹿だな。馬鹿だこいつ。私が心の中でそう思っていると、凄い風が巻き起こり、青い竜が一匹降りて来た。その上にはシャラさんとサニエさん。サニエさんは私を見るなり言った。


「シズちゃん!ちょー大変だったんだけど!」

「お疲れ様です。シャラさん、ありがとうございました」

「大丈夫だよ。サニエ送るだけだったから」


そう言って笑うシャラさんに癒されながら、男に視線を戻す。彼は何かを呟き、俯かせていた顔をばっと上げ何故か、猛ダッシュしてきた。


「シャラさん危ない!」

「俺は!?」


サニエさんが何か言ってるが、そこはまぁ放っておこう。シャラさんの前に立ち、魔法を放つ。生け捕りにしたいから、気絶程度のだけど。


「うわぁ!」


男が魔法をよけた時にできた隙を狙って背後に回り、白露の柄で首を思いっきり叩く。グラリと男の体が揺れ、地面に倒れて行く。その時、男が小さく呟いた。


「静…」


…静、だと?こいつの髪は金髪だ。私は、私の事を静と呼び、更に金髪な奴を一人知っている。


「ちっ」


舌打ちをしてハクを呼ぶ。とりあえず、何があろうとこいつは城に連れていかなきゃいけない。ハクが口にくわえるのをみて、シャラさんにいう。


「シャラさん。今から城へ戻ります。多分、この辺り一帯の魔獣達が興奮している状態なので、対処をお願いします」

「はい。シズカちゃん一人で大丈夫?サニエだけでも連れてった方がいいんじゃない?」


シャラさんの言葉に、私は首を横に振る。シャラさんの優しさだろうけど必要ない。暫くは起きないだろうし、それよりも優先するのは、魔獣の対処。このままだと、民に被害が及ぶかもしれない。優先順位は民の方が上。シャラさんも、それで納得してくれた。


「それじゃあ、また城で」

「はい。気を付けてください」


シャラさんにそう言ったと同時に、ハクは空へと飛ぶ。あっという間に二人が見えなくなり、暫くしてからの事。ハクの口から男が出てきた。


『シズカ』

「大丈夫。害はないから」


心配そうな声で私を呼ぶハクに、そう言って男と対面する。まさか、ここで会うなんて。


「久しぶりだな。静」

「久しぶり、兄さん。とりあえず一発殴らせて?」


男、兄さんに笑顔で言うと、直ぐに断られた。私には、二人の兄がいる。コイツは次男。歳は一つ離れてる。取り敢えず、こいつが私の兄であるとかそれ以前の問題がある。


「何故、ここにいる」

「兄貴が、静を探してこいって」

「圭兄が?その本人は」

「用事があるから後で会おうってさ」


会話的に、なんで圭兄がこっちへの行き方知ってんだって聞きたいんだけど、あの圭兄だからな…そんなことを聞いても無駄だというか。うちの兄達はなんというか、超人だ。長男の榎本圭太(えのもとけいた)は、やることなすこと完璧。容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群。私と兄達は年子なので今は18歳。人当たりも良いので、男からも女からも人気が高い。


次男の榎本彼方(えのもとかなた)は、完璧とまではいかないがなかなか出来る。勉強はだめだめな代わりに、スポーツは割と何でも出来た。サッカー、野球、テニス、水泳、球技。まだまだあるけどキリがない。わりと顔もいい。それで、こっちも人当たりがいいから人気人気。


だから、この二人が異世界に来ることなんて簡単だって思ってしまう。可笑しいんだけどね。


「とりあえず、今から城に行くから」

「なんで」

「聖獣は、とっても国民から大事に大事にされてる神様のようなものなんです」


ようやく、今回の事の重大さが分かったようで、兄さんの顔が青ざめた。やっぱ、馬鹿だこの人。そんな事をしているうちに、城に着いた。兄さんを引きずり、飛び出してくる前、隊長達が集まっていた部屋へ向かう。


「失礼します」


部屋の中に入ると隊長達がいて、私の姿を確認した隊長達はホッと息をついていた。…あれ?心配かけてました?団長は私に近寄り、頭を撫でながら言った。


「頼むから、無茶するのはやめてくれ…」

「ごめん。で、犯人」


そう言って差し出した兄さんは、何故か団長にガン飛ばしている。団長に対処を頼みたいけれど、身内だしな…。流石にそれはできない。どうしようか迷っているとき、後ろのドアが開いた。そこから顔を覗かせたのは…


「あ、圭兄」

「静。あ、皆さんどうも。静香の兄の圭太といいます。うちの子がご迷惑をかけてます」


そう言って団長に頭を下げる圭兄。おぉ圭兄だ。相変わらず変わんないなぁ。そうのんきなことを思ってるのは私だけでした。


「え、あ、兄?は?」

「あ、そっか。まぁその話は後で」


うん。混乱するはずだ。だって圭兄も、兄さんも、異世界人だもの。なんでいるんだってなるよそりゃ。団長達の反応は正しいです。そんなこんなで取り敢えず、兄さんは無罪になりました。


「本当はこの馬鹿を罰するべきなんでしょうけど…すみません。無知なもので」

「いえ。幸い、ラージ様もお許しになっているので、私たちはそれに従うまでです」


なんかね。ラージが許してくれたようです。私の兄だし、無知な異世界人だったからって。本当、ラージって優しいわ。改めてそう思った。


「ほら、彼方。謝りなさい。お前のせいで、大勢の人に迷惑をかけたんだから」

「…すみませんでしたー」


うわぁ…謝る気ゼロじゃん。そう思ってたら圭兄が兄さんの頭を叩いた。あー怒られた。


「本当にすみません」

「お兄さん。もういいって。誰もあんたらの事を責めやしねーよ。元はといえば、こちら側が悪いんだから」


そう言ったのはウィルさん。態度でかいけど、いいこと言ってる。しかし、団長に怒られてた。


「あの、圭殿。一つお聞きしてもいいか?」

「はい。何でもどうぞ」

「何故、こちらの世界に渡れる事ができる」


団長のストレートな質問に圭兄は苦笑した。それ、実は私も知りたかったんだよね。私だって、二人がなんでこっちに来れるのか知らない。団長が聞いていなければ、私が聞いていた。圭兄は、話し始めた。


「昔この国で、勇者と呼ばれた者がいたはずです」

「ああ」

「それが、うちの親父なんです」

「「は?」」


ちょ、は?え?何それ初耳なんですけど!!

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