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第十一章




 翌朝アラストルは玻璃にある頼みごとをした。

 そしてハデス本部へと玻璃を連れて行く。


「いいか? もう一度確認するぞ?」

 車の中でアラストルが念を押す。

「うん」

「本部に着いたら、お前はまず一番奥の部屋のリリムのところに行くんだ」

「うん」

「リリムは藍色の髪をして着物っていう日ノ本の衣装を着ている女だ」

「うん」

「そいつに、どうしても力を借りたいって頼むんだ」

「うん」

「断られても何度でも頼み込め」

「うん。で? そのリリムって人に何を頼めばいいの?」

 玻璃が訊ねる。

「いや、内容は話さなくていい。話したところでリリムは一晩で忘れちまう」

「どうして?」

「リリムは目が覚めるたびに記憶が消えるんだよ。十三年前までしか記憶が無いんだ」

 玻璃は驚いたように目を見開き、アラストルを見る。

「それ本当?」

「ああ。とりあえずハデスの幹部とルシファーのことは壁に貼ってある写真なんかで思い出せるようになってる。リリムさえ協力してくれればハデスの戦力は総動員できる。だから、お前はただリリムに力を貸してくれと頼むだけでいいんだ。わかったか?」

「うん」

 玻璃があまりにも元気よく返事をするのでアラストルは少し不安になった。




 ハデス本部に到着すると、アラストルは真っ先に玻璃をリリムの部屋へ向かう通路まで連れ出し、見つからないように奥の部屋に入れと指示を出す。

 玻璃が行ったことを確認し、何事も無いようにルシファーの部屋へ向かう。


「おい、ルシファー」

「ん?」

「ディアーナの情報ありったけくれないか」

 アラストルが言うとルシファーは眉間に皺を寄せる。

「んなモンどうする?」

「近いうちにディアーナの幹部と、セシリオ・アゲロと一戦交えるかもしれねぇ」

「…おもしれぇ。その戦。俺も混ぜろや」

 珍しくルシファーが乗り気だった。

「俺が仕入れられたのは四人の幹部のコードネームくれぇだ。そのうちの一人は十年前に死んでる」

「アルジェントか」

「ああ」

 予想通り、ルシファーはアラストル以上の情報を持っているようだ。

「他にヴェント、レオーネ、そしてドーリー。ドーリーは玻璃のことだな。それと、レオーネがセシリオ・アゲロの妻らしい」

「その二人とは接触したか?」

「ああ、ヴェントかレオーネのどっちかはわからねぇが大聖堂で二回、女に会った」

「そいつがレオーネだ」

「何? あの女が?」

 一瞬聖女にも見えた彼女が恐怖の代名詞とも言えるセシリオ・アゲロの妻とは信じられなかった。

「レオーネは大聖堂の傍で目撃されることが多いからな」

「あの女が…レオーネ…」

 朔夜と名乗っていただろうか。

「ドーリーはレオーネのお気に入りだと情報屋が言っていたな」

「そうか…敵のアジトが分かればそこを包囲して攻め込めば早ぇが…あの女はそこまでは使えねぇだろ」

 あの女。といわれアラストルは一瞬考える。

「玻璃のことかぁ?」

「他に誰が居る」

「あいつは今回はこれ以上関わらせねぇ。今はあいつも追われている身だ」

 アラストルが言うとルシファーは妖しく笑う。

「おい、まさか女一人のために戦争おっぱじめる気じゃねぇだろうなぁ?」

「……それは…」

「敵のボスの首を取ってしめぇじゃねぇーんだよ。残党まで潰してようやく終わるのが俺らの戦い方だろう?」

 そう、敵は一族の末裔まで徹底的に潰す。

 それがハデスのやり方だった。


「ルシファー様、いらっしゃいます?」

 女の声が響いた。

「ああ」

 ルシファーが静かに答えると、ゆっくりと着物姿の女が中に入ってきた。

「リリム、なにかあったか?」

「こちらのお嬢ちゃんが力を貸して欲しいんですって。よろしいでしょ? こんなに可愛い女の子の頼みを断るわけにはいかないもの。ね? リリアン」

「……違う、玻璃」

 リリムと一緒に部屋に入ってきた玻璃は随分と複雑そうな表情に見えた。

「…丸め込まれたか」

「あら、たまには良いでしょう? ルシファー様」

「ああ、で? どうしたい? ドーリー」

 ルシファーの言葉に、アラストルは玻璃が今朝言いつけた通りに動けるか心配だった。

「アラストルに力を貸して」

 玻璃はそれだけ言って黙り込んだ。

「成程、カスにしては考えたじゃねぇか」

 不敵に笑うルシファーに、リリムはただ微笑んでいた。




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