間章
「アラストル・マングスタ…銀の剣士はここに来なかったか?」
瑠璃は情報屋を回って標的の情報を探っていた。
相手がどの程度こちらを知っているかによって対処方法が変わると思ったのだ。
「知らねぇ…」
「金は出す」
「ほんとに知らねぇんだ。帰ってくれ」
どの情報屋も決まって知らないと答える。
「情報を止められているのか?」
そういえばどこかの組織に属しているはずだ。
「…『ハデス』か。厄介なことになりそうだ」
ディアーナと敵対する暗殺集団『ハデス』。実際は殺しの他に護衛や警備なんかもしているという噂だったが、瑠璃は信じていなかった。
「本当に存在するのか? ハデスとやらは」
そういえばハデスの超下っ端とやりあったことがあったなと瑠璃は思い出す。
銀の剣士に黒い狙撃主、藍の術師が居るという噂だが、幹部クラスともなるとそう簡単には姿を見せない。
ただ、瑠璃がセシリオ・アゲロから聞かされている情報では緋の殺し屋が藍の術師を寵愛しているという。
藍の術師が何者かは知らないが、そいつを人質にすれば全滅させられるのではないかと瑠璃は考えた。
「けどなぁ…うちも同じこと言えるんだよなぁ…」
瑠璃は思う。
朔夜を人質に取られればディアーナは混乱しすぐに壊滅するのではないかと。
「私も同じか。玻璃を人質に取られれば命だって捨てるだろうな……」
たった一人の妹。
守るためならなんだってする。
瑠璃の中に覚悟の炎が燃え盛る。
「玻璃、待ってろ。姉さんが助けてやるからな」
マスターからも、銀の剣士からも。
出来ることなら宿命からも助けてやりたい。
瑠璃はそう願わずにはいられなかった。