第四章:偽りの結婚話
王宮から突然の勅令が下る。
内容は──キャサリンと王太子ディランの婚約、と言うものだった。
理由は国家の調和のため。
ディランにはヴレンダと言う王妃が居るが、王族は側室を持つ事を許されているため、ディランとキャサリンの婚約はなんの問題もなかった。
しかし、貴族たちは驚き、ヴレンダは怒り狂う。
「そんな馬鹿な!? あの女が側室にでもなると言うの!? 信じられない!!」
だが、国王の決断は覆らない。
王宮に呼び出されたキャサリンは、謁見の間でディランの前に立った。
「驚いた?」
「……! 今回の婚約の話は、君が企てたのか?」
「知らなかったの? なら、きっと、このことも知らないわね? 王妃であるヴレンダが、殿下のお母君──つまりは前王妃を毒殺したということも」
ディランはピタッと動きを止め、その瞳を凍らせる。
「……何を……言ってる……?」
「私の母の遺書に書いてあったの。ヴレンダが、王妃になるために、前王妃を──」
「嘘だ!!」
ディランは玉座から立ち狩り、その場に膝をついた。
「……信じられない……」
「でも、真実よ。日記以外の証拠もあるの」
キャサリンは玉座の前まで、ゆっくりと歩み寄り、ディランに手を差し伸べる。
「私たちには、共通の敵がいる」
婚約は、政治的儀礼ではなく、真の同盟の始まりだった。