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第三章:影の同盟
キャサリンは地下の書庫で一人、古びた帳簿をめくっていた。
父が残した、国庫の不正記録。
そこに浮かび上がる名前──王妃ヴレンダと、商会連合の取引。
「税金の横領……国家予算の流用……」
彼女はペンを走らせ、証拠を整理する。
そこに現れたのは、黒いマントの男──「影の商人」と呼ばれる、地下の情報屋、カイン。
「お嬢さん、危ない遊びしているね」
「……あなたに言われたくないわ」
「でも、面白い。王妃の弱みを握る? 私、手伝ってあげてもいいよ」
「見返りは?」
「あなたの“微笑み”を、一つ」
「……は? 微笑み?」
「本物の、心からの笑顔をね」
キャサリンは眉をひそめた。
「……それが見える日が来るかどうかは、神のみぞ知るわ」
二人は同盟を結ぶ。
カインの情報網で、ヴレンダの汚職をさらに暴き、キャサリンは表の世界で、次第に「復讐の令嬢」としての評判を高めていった。
だが、王太子ディランは一人、キャサリンの行動に違和感を覚え始める。