第一話 一時代の幕開け
帝国暦199年
帝国西部ガラパゴス村
村の広場の真ん中で、馬車に乗せた商品を広げている商人がいた。
商品を中心に小さな人だかりができている。
「ケネディさん、この肥料を頼む」「私はこの塩をお願いしてもいいかしら?」
「あいよ、二人とも銅貨5枚だよ、持ってきな」
農夫の男や、女性の多くの客がいる。
「いつもケネディさんには助けられてるわ。ありがとねえ」
「いえいえ、いつもありがとうございます」
散歩をしている老婆からも声を掛けられ、少し雑談を始めた。
この商人の名は、ケネディ。地方の裕福な商家の出身で、この地域で大きく幅を利かせている。彼らの家訓は「買い手がいるならどこへでも」であり、このような家訓に従って辺境であるガラパゴス村にも月に2回ほど訪れている。
以前は、半分奉仕活動のようなものでガラパゴス村を訪れている彼であるが、以前のガラパゴス村に訪れていたころとは違い、現在の彼にはこの辺境を訪れる理由があった。
「ああ、そろそろ『先生』の所に行かなきゃだわ、ではケネディさんまたね」
雑談をしていた老婆はそう言ってケネディの元から離れた。
「ええ、またごひいきに」
ケネディはその後、素早く馬車に荷物をしまい、ある家のもとに向かった。
行き先は先ほど老婆が話した『先生』のところである。
ケネディが家に入ると、既に家の中には多くの人が詰めかけていた。
年齢層も子供から、老人まで様々だ。
その『先生』は『授業』を始めようとしていた。
「さあ、今日も皆さんよろしくお願いします」
黒板の前には、成人を迎えたばかりの年頃の青年が立っていた。
「今日は昨日の続きと、文字の読み方と計算をします」
そういって、先生は黒板に文字を書いていく。
「昨日の復習です。この文は何と読みますか?」
そう言うと、子供が手を挙げて発現する
「時は金なりです!」
「リック君、正解です。じゃあその意味も言えるかな?」
「時間はお金よりも大事ってこと!」
「そうだね、皆さんが今生きている「今」というものはお金よりも貴重なものです。なぜなら、お金で寿命は買えないからです。ではほかにお金で買えないものは何か分かりますか?」
そう話すと、次は老婆が手を挙げた。
「それは、爺さんじゃ。」
「おお、なるほど。もう少し聞いてみてもいいですか?」
「なぜなら、爺さんといると幸せだからじゃ。」
そう老婆が話すと、隣で聞いていた老人が照れていた。
その様子を見て、家の中のみんなが笑顔に包まれた。
「ミンさん。正解です。幸せというものはお金では買えません」
『先生』が話すと、子供が質問した。
「でも先生、お金があったらいろいろなものを買えます。それは幸せじゃないの?」
「確かにお金があれば、一時的には幸せかもしれません。でもね、お金では買えない幸せというものは目に見えないものなのです。子どもや孫のいる皆さんなら分かると思います」
そう話すと、夫婦や老人・老婆の方々はうんうんとうなずいていた。
「子供のみんなにはまだわからないかもしれないね、でもそれでいい。大人になるにつれて分かってくるさ」
先生はそう話すと、
「では今日の授業を始めましょう」
と話し、授業を始めた。
ケネディは今日の授業を真剣に聞いていた。それと同時に考える。
『先生』についてのこと・彼は何者?
―やはり彼は何か違うー
授業も年齢の違う方々に向き合って分かりやすく行っているし、話の内容も面白い。
何よりも、生徒側がこんなにも真剣に話を聞いているのだ。
ケネディが通っていた学校は、親に行けと言われたから行っている裕福な人間の娘・息子ばかりで本気で勉強しようと思い通っている人間は少なかった。
教員もつまらない講義を繰り返す人間も多く、この講義は聞く意味がないというものも多くあった。
その中でもケネディは必死に商売を学び、商人としての力をつけた。
ケネディは『先生』の授業を聞くたびに、こんな先生が学校にいてくれたらとさえ感じた。
しかも『先生』が教えるものは文字の読み書きや数学だけではないのだ、冬を乗り越えるための農作物の保存方法や、効率的な農作物の育て方、商人との取引のやり方、自衛のための備えや取り組みまで教えているのだ。
そのため、このガラパゴス村は辺境でありながら、帝国からの年貢を毎年払い続けられる力のある西部でも唯一の村なのだ。
この時代は、教育を受けられる環境は裕福な家庭に限られている。そのため、農村で暮らしている人間などは文字が読めない人間がほとんどで、文字が読める人間は村の中でも重宝される。
しかし、この村の住人は子供から大人まで人に差があるものの、文字の読み書きができる。
文字が読めれば、役人から搾取されることもない。商人が金額をだますこともできない。
文字が書ければ、農作物の育て方などを文字にできる。手紙が書ける。
「やあ、ケネディさん。来てたんですね」
授業後、『先生』がケネディに声をかけた。
一話は大体どれくらいのボリュームが良いのか模索中です...(ホントに分からん笑)
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