第6話/旅立ち
こっそりと更新。
さて、今回でプロローグが終わり、次回から本格的に旅が始まります。
では、どうぞ楽しんでいってくださいな
魔狼の討伐から1月が経った。
その間に魔狼の素材の加工をしたり
旅をしながらでも簡易的に錬金術をできるようにしたり。
マジックバックの作成をしたりなど、様々な事をした
けれど、魔狼の討伐を超えるような事件も、匹敵するような出来事もなかった。
だが、今日は違う。待ちに待った旅立ちの日。
それ故の最後の顔見せを済ませに行くところだ
「……よし、荷物の準備もオッケー。とりあえず、一旦協会に向かおう」
すたすたと歩きながら、この村を見渡す
次にこの景色を見るときはいつになるかな。なんて思いながら
「あぁ…来たのね」
「そうね、旅立ちを告げに来たわ」
「…寂しくなるだとかなんだとか、言いたいことはいくらでもあるけど、私からは一言だけ。楽しんできなさいな」
「…そう言われたらこっちもあーだこーだ言うのは違うかな。行ってきます」
それだけ言い、協会を後にする
出会いもあれば別れもある。旅とは別れから始まる物語だ。
だからこそ、私は前を向く。
「次は…詰所かな」
すたすたと歩きながら村人を眺める
長閑に暮らし、この世界を自分なりに生きる人を見る
私もいつかどこかに根ざすのだろうか?なんて思いながら
「おう、来たか」
「お疲れ様。お別れを言いに来たよ」
「ったく…常連ほっぽって旅とはな。ま、自分で決めた事をやるってのは好きだから、止めようがねぇんだけどよ」
「まぁ、実際助かってたのはあるから、引き止められたらちょっと揺らぐかもだけど、でも夢だからね。引き下がれないのよ」
「わーってるって、んじゃ、餞別だ。取っときな」
「…これ」
「ダリアライトウルフ。ソイツの目玉だな」
「実際いい素材にはなるけど…いいの?すっごい高いけど」
「いいんだよ別に。渡してぇモンを渡して何が悪い。実際、過ぎた金は身を滅ぼすってのもあるしな」
「じゃあまぁ…遠慮なく。こっちからもお返しがてら、はいこれ。疲労回復のポーション。30本入ってるから。自分で使うでも、他の人にあげるでも。好きに使って。」
「おぉ、マジで助かる」
「…さて、じゃあ行くね」
「おう、行ってこい」
そんな会話をしながら最後の人のところへ行く
向かう先は村外れの木組みの小屋
私の始まりの場所にして、師匠の家
「やほ、別れを言いに来たよ」
薬草の匂いが充満する部屋に居たのは老魔術師
白髪に金のメッシュが入った長い髪をふわりとなびかせて、こちらを見る
「あぁ、ドロップ?別れって言うと…そうかい、血筋だね」
「変わんないわね。色々と」
「そりゃまぁそうだよ。少しずつ時は進ませてるけどね。それで?話はそれだけかい?」
「ん?んー…まぁ。そうだね。旅立つ前に師匠の顔だけ見に来たって。それだけだから」
「そうかい。どこに行くのかは決めてるのかい?」
「んーん。風の吹くまま気のままにって思ってたけど」
「ほう。なるほどね。決まってないのなら、王都か、風の丘にでも行くといい。王都は様々なものがあるし、風の丘は景色がいい。素材も美味しいしね。あくまで一案程度に思っておくといい」
「そ、ありがと。まぁそれなら…風の丘にでも向かおうかな」
「ふん。まぁ、精々頑張るんだね。私の顔に泥を塗るような旅路だけはしてくるんじゃないよ」
「うわぁ…相変わらずだなぁ…もう。分かってるよ」
「ならいい…さて、そうさね。私も何か渡すとしようか。…あぁ。これなんかいいかもしれないね。ほら、持っていきな」
「ん…苗木…?」
「あぁ、魔力を加えればその魔力の性質に応じた果実や葉。素材が実る。上手く使うといい」
「…ありがと」
「じゃあ、さっさと行きな。私は私でやる事はあるからね」
「暇人でしょうに」
「あん?何か言ったかい?」
「…なんでもない。じゃあ、いつになるかはわからないけど、また会いましょう」
「あぁ、じゃあね」
あぁ、これから旅に出るんだ。改めて、挨拶回りをして、気が引き締まる。
「…よし。じゃあ、行こう」
向かう先は風の丘。ルーラーズレイド。そこではどんな出会いがあり、別れがあり
そしてどんな物語が紡がれるのか
未来は分からないが、それでも言えることはある
『水の錬金術士』ドロップ・ラメリアの物語。そのプロローグが終わり、長い長い物語の第1幕が始まる。
読んで頂きありがとうございます
さて、今回は挨拶回であり、師匠の軽いお披露目でしたね
実はこの世界の中核に位置する師匠ですが、そんな事は今のドロップには関係にないことです。ドロップの物語はドロップのものなのですから
今回は特にTipsを書くようなものがないので、ありません。
Tipsが好きな人がいたらごめんなさいね!