???/農村にて星は唄う
今回は少し短めです。
ドロップが風の丘に着いた頃の別の誰かのお話。
それはどうぞお楽しみ下さい
ヴァイツウィラにある、とある農村に
少年が一人おりました。
少年はある日、居なくなった幼馴染を探しに農村を出て森の中へと入っていきます。
暫く進み、声を張り上げ、少年は少女を探します。
けれど、声は虚しく森の静謐にかき消され、少年は途方に暮れています。
それでも彼女が心配で、何度も何度も声を上げ。
森の中へと進みます。
しばらく進み、奥へ奥へ。それでも彼女は影も形もありません。
少年の声も枯れ果てて。それでも彼は、懸命に探し続けます。
すると突然、チリンチリンと音が鳴り、幼子の声が響きます。
『こっち、こっち。探し物はこっちだよ』
少年は疑うこともなく、素早くそちらへ向かいます。
『そうそう、こっち。君の求めるものがある』
『うんうん、こっち。君を求めるものがある』
声は増えて、しかし示すは一方向。
少年は森を進みます。
暫く進むと泉へと出て、少女は泉の中にいます
少年はハッと息を呑み。すぐに泉へ飛び込むと
カツンと音が鳴り響く。
泉の中へは入れずに。泉の上に座ってる。
どう言うことだと首を捻り、ぐるりと周囲を見渡すと。
泉の中心に浮かぶ剣が目に入る。
綺麗に瞬く星の剣は、静かに光り、佇んでいる。
どうしたものかと悩んでいると、妖精がふわりと踊り唄う。
『その子を助ける為にはね?』
『その子をそこから出すにはね?』
『キミがこの剣を抜く必要がある』
『キミはこの剣を扱う必要がある』
『けれど気をつけて。この剣は運命を変えるもの』
『けれど気をつけて。この剣は運命を定めるもの』
『キミがこの剣を抜いた時。キミは偉業を成し遂げるだろう』
『キミがこの剣を抜いた時。キミは世界を救うだろう』
『でも、逃げたかったらそれでいい。物語が終わるだけだから』
『でも、逃げたかったらそれでいい。彼女が目覚めぬだけだから』
『『さぁ、どうする?』』
ボクが選ぶ道は…
「なんてことがあってな。で、その時の剣がコレなんだよ」
「ほー…なんつーか…珍しいアーティファクトだな」
「まぁ、刃こぼれも無いし、運命だなんだってのもぜんっぜん起こる気配がないんだけどな」
「へぇ…で、その少女はどうしたよ」
「今は別のクラスで魔法の勉強だってさ。なんだか使命がどーのって。だからまぁ俺も色々とやってるんだけどなぁ」
「なるほどなぁ。だからお前そんなに…」
「ん?どした?」
「…なんでもねーよ。さて、学食行こうぜ!」
「お、いいねぇ。じゃあ今日はガッツリ食べるかな!」
「今日『も』だろうが」
そんな無駄話をしながら、あの剣を手にした時のアザをなぞる。
「運命…ねぇ」
学園都市クルスノーツにて、少年はひとりごちる
運命の歯車は、くるくると既に回っている
何話かに一度はこう言うお話を入れて行くつもりです。
彼はこの物語における重要人物であり、けれど関わることはあまりない。そんな感じの人になる予定です。
終盤に結構関わるかも…
 




