第1話/日常。そして始まり
初投稿の処女作です。
拙い文章ですが、どうぞ楽しんでいってくださいな
クロノスフィアの端っこにある小さな村
そこで小さなお店を開いている少女が一人
退屈そうにカウンターで頬杖をつきながらレシピノートにカリカリと思いついたレシピを書いていく
カランコロンと来客を知らせる鐘の音はいつもの時間に鳴り響きいつも通りの業務をこなす
「いらっしゃいませー……あぁ、いつも通り疲労回復のポーション?」
買いにくるのは少し強そうな村の警備兵、正直隊長格でちょっと強そうで収まるのはどうかなって思うけど、まぁ平和な村だし仕方ないかなぁとも思う
いつもだいたいこの時間に来て仕事終わりの一本を買いに来るんだけど。今日の用事は少し違っていたようで……
「あぁ。それももらうが、今日は普通のヒーリングポーションを買いに来た」
「ヒーリングって……珍しいね。ってことは狼でも出たの?」
「いや、魔獣が出たらしくてな。さすがに俺らが回復アイテムも持たずに突貫したら死んじまう。んで、そういや寂れた店だがポーションは一級品の場所があるなあとな」
「寂れてて悪かったわね。正直ここってそこそこには平和だからあんまり活躍できないのよね……で、効能はどの程度?魔獣相手だと下位中級を数本ってとこかしら?それとも下位上級?」
「中位中級1本に中位下級3本。下位上級6本。下位中級10本だ。いけるか?」
「……は? いや、一応作れはするけど、作り置きはしてないから1日はかかるわよ? それに、そんなの使う?保険にしたって高いわよ?お金あるの?」
「そのくらいを買う金はあらぁ!!へそくりなり村人からのカンパアリだけどな!!……っと。いやな。正直俺らにゃ手に負えねぇやつなんだが……まぁ、そのくらいの保険があればなんとかなる程度でもあるからな」
「ふーん……それならそれでいいけど。じゃあお代は……13300Rね。疲労回復のポーション分はサービスしておくわ」
「おう、流石に高けぇな……」
「そりゃあね。それこそ上位の冒険者でも使ってるような代物ですから。ところで……魔獣退治とか、冒険者とかさ、ぶっちゃけ儲かるの?だって、こんなのが買えるレベルって凄まじいじゃん?」
「あー、正直あの魔獣を狩ればここでの代金はお釣りがくるし、なんなら嬢ちゃんがやってる錬金術……だっけか? それのいい素材にもなるって聞いたな」
「なるほどなるほど。あぁ。そういえば、冒険者さんに退治してもらうのは?」
「中位中級使うレベルの魔獣を討伐できる冒険者がこんな村にいると思うか?」
「いないわね」
「おう、お前が即答できるレベルにゃいねぇんだよ」
「ふーん……なるほどね。あー……やっぱり私もそろそろここの店をたたんで旅でもしようかなぁ……」
「おいおいおい、急にどうした、にしたっていきなりかよ、そりゃ困るぜ嬢ちゃん。そうなったらどこで俺らはポーションを仕入れりゃいいんだ?」
「前々からある程度資金が貯まったら旅には行く予定だったのよ。それに、村外れにおばあちゃんが経営してるとこがあるでしょ、薬草が主だけどそこでも下級までのポーションなら取り扱ってるからなんとかしなさいな」
「あのばあさんとこのポーション味が悪ぃんだもんよ……」
「ま、そんなこんなで今日は店じまいね、あなたが来たら基本お客さん来ないし、ギルドにポーション納品して私もちょっと旅に出る前の腕試しに森の依頼でも受けて来るわ」
「おう、そうかい。んじゃ、旅に出るまではよろしくな」
「えぇ。旅に出るまではよろしくね。唯一の常連さん?」
カランコロンと音を鳴らし、きぃ…とドアが閉まる
さっと支度を整え、看板をクローズに変え、冒険者協会へと足を運ぶ
冒険者協会にいる馴染みの受付嬢
「いらっしゃい、今日も納品クエストやってくれる感じかしら?」
そう言いながら書類から目を上げてこっちを眺めてくる
相変わらず顔がいいなぁ……とか、どんなケアしてるんだろ? とか思いながら、仕事をこなす
「そそ、えーっと……下位を20本ずつだね」
「いつも助かってるわ。特に最近は魔獣の暴れ具合が酷くってね……」
「あぁ、中位中級が必要だーって言ってた警備兵さんもいたし、なんとも……怖い世の中になったね」
「あら、知ってたの? まぁ、そういうわけだから、今後ともご贔屓にってね。はいこれ、代金」
きちんと仕事は出来ていたようで2500Rを貰いながら話を続ける
「ん、どーも。あ、そうだ。ちょっと掲示板見せてもらっていい?討伐依頼受けたいのよね」
「…………本気?」
「まぁ。そうね?」
「…………あー、うん。まぁ……いいけど。死なないでね。ほんっとうに貴女が居ないと回してくの大変なんだから……」
「そんなヘマはしないって、えーっと……シルバーボアの討伐にゴブリンの討伐、あと受けられそうなのは……スパイシーラットか」
「ゴブリンはやめときなさいな、あんなんでも魔族だし、知能持ちは厄介よ」
「わかってるよ。一人で行くつもりだしね。んー…でもまあ…シルバーボアにしとこうかな。素材も美味しいし」
「あぁ。牙一本は討伐の証として持ってきてね。肉とか毛皮は買い取ることはできるけど……ま、使うんでしょうし、お金が足りなくなったらこっちの機能も使ってちょうだいな」
「ん、ありがと。じゃあ、行ってくるね」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
きぃ……とギルドのドアを開け、初めての冒険へと出かける彼女を見て、受付嬢が独り言を零す
「なんというか…こうはなるんじゃないかって思ってはいたけど……寂しくなりそうね……」
あの眼をする人は誰も彼も大海へと繰り出していく
なんだかなぁ……などと思いながら瞼を閉じ、一つ息を吐くと、彼女はまたいつも通りの日常へと戻っていくのでした
あとがきまで読んで頂き誠にありがとうございます。
あとがきでは、本編で説明していない事柄などの設定を書いていったりしようと思います。
話が進んでいったらキャラの掛け合いやらもするかもしれません。
何か気になることがあればコメントして頂ければあとがきTipsで説明していこうかなと思っております。
Tips:ポーションのランク
ポーションにはランクがあり、下位下級から上位上級まで存在します。
中位中級からは部位欠損を治せるほどで、上位上級ともなると寿命を延ばしたりなどもすることができます。
最も、そのようなものが作れる錬金術士はとうに寿命など超越していますが。
Tips:ルメア
Rはこの世界におけるお金の単位です。1Rあたり100円相当となっています。今作に出てきたヒーリングポーションの値段は下位下級が5R。下位中級が20R。下位上級が100R。中位下級が2500R。中位中級が5000Rとなっています。
アイテムランクの下位と中位。中位と上位には壁があり、下位を作れてプロ。中位を作れてその道のベテランレベル。上位を作れて国でも1,2を争うレベルとなっています。
それ故に中位のアイテムは基本的に値段も跳ね上がるようになっています。