くま型ロボット戦記
くま型ロボット戦記
軍曹は渇いていた
渇いていたら、悪のくまになりそうだった
。
「おい、ちょっと来い」
軍曹が言った。
「なんですか?」
と、少尉は答えた。
「いいから早くしろ!」
「はい」
軍曹に呼ばれて、少尉は立ち上がった。そして、そのまま部屋の外に出た。
廊下には誰もいなかった。「ついてこい」
軍曹が歩き出した。少尉も黙ってついていった。
やがて二人は基地の外れにある建物にやってきた。そこは倉庫として使われている場所だ。
その建物の中に入ると、軍曹はドアを閉めた。そして、鍵をかけた。
「あの……なにするんですか?」
ネジ式男爵「ロボット」
「わたしは、くまになりたい」
ネジ式男爵はつぶやいた。
「えっ?いまなんて言いました?」
部下の伍長が聞き返した。
「だから、わたしはくまになりたいのだ」
「くま……ですか?」
「そうだ」
ネジ式男爵はうなずいた。
「なぜです?」
「だって、くまってかわいいじゃないか」
「ああ……」
伍長は納得したように声を上げた。
「おまえもそう思うだろう?」
「はい。思います」
「そうだろ?それなのに、この世界では『くま』という言葉すら禁止されてしまったんだぞ!そんなことが許されるのか!?」
「それは……かわいそうですね」
「まったくだ」
ネジ式男爵は大きくため息をついた。
「でも、どうして急に『くま』ということばを禁止する法律ができたんでしょうか?」
「さあね……。まあいいじゃないの。とにかく、わたしはもう二度とくまという言葉を口にしないよ」
「わかりました」
こうして、ネジ式男爵は『くま』という言葉を使うことをやめた。
それから数ヶ月後―――
ネジ式男爵の部下である軍曹は、上司に向かって敬礼をした。
「お疲れさまであります、ネジ式男爵様!」
「おお、ご苦労さん」
「本日はいかがいたしましょうか?」
「そうだねえ……」
ネジ式男爵は考えた。
「今日はいい天気だし、久しぶりに街へ出かけようかな」
「かしこまりました」
軍曹は深々と頭を下げた。
「行ってらっしゃいませ!」
「うん、行ってくるよ」
ネジ式男爵は上機嫌で部屋を出て行った。
「ふむ……」
軍曹は腕組みをして考え込んだ。
「しかし、どうしたものか……」
軍曹は頭を悩ませた。
「男爵様には、ぜひ『くま』になっていただきたいのだが……」
そのとき、軍曹はあることを思い出し、ポンッと手を打った。
「そうだ!あれがあったではないか!!」
そして、急いで自分の机に向かい、引き出しから何かを取り出した。
それは『くまグッズセット』と書かれた箱だった。
「これを男爵様にプレゼントすれば、きっと喜んでくださるに違いない!」
軍曹はそう言うと、『くまグッズセット』を持って部屋を出た。
「男爵様ーっ!こちらにいらして下さーいっ!」
軍曹は大きな声で叫んだ。
「なんだ?どうかしたのかね?」
ネジ式男爵がやってきた。
「これを見て下さい」
軍曹は箱を差し出した。
「これは何だい?」
「見ての通り『くまグッズセット』です」
「ほう……これが?」
「はい。以前、男爵様が街に行ったときに、偶然見つけたものです」
「ああ、思い出したよ。懐かしいなぁ」
ネジ式男爵は目を細めた。
「それでですね、この中にいろいろと入っているのですが、その中に『くま耳カチューシャ』があるんですよ」
「なんと!それは素晴らしい!!早速つけてみようじゃないか!」
ネジ式男爵は嬉々として言った。
「そうですか!気に入って頂けてよかったです」
「もちろんだとも!さあ、早くつけてくれたまえ」
「はい」
軍曹はうなずくと、箱の中から『くま耳カチューシャ』を取りだした
峠のくま
冬眠の「くま」ミュージアム来訪者
「クマだわ」「くまだわ」
入場口のゲートを通り抜けてすぐのところに、大きな看板がありました。
そこには、「くま」の絵とともに、こんなことが書かれていました。
『くまミュージアムへようこそ!』
「くまだわ」「くまだわ」
「くま」を指差しながら、女の子たちは言いました。
「くまって、冬になると冬眠するんでしょう?」
「え?知らないの?」
「知らなかったわ」
「あたしも」
「くまは、一年中寝てるんだよ」
「そうなの?じゃあ、どうして今ごろ来たのかしら?」
「さあ……」
「もしかして、くまは病気なのかしら?」
「それなら大変だわ」
「そうだ、病院に連れて行ってあげないと」
「くまさん、くまさん、起きてください」
女の子たちが呼びかけると、くまはゆっくりとまぶたを開きました。
「うーん……」
くまは大きく伸びをしました。
「おはようございます」
「ああ、よく眠れたよ」
「よかったですね」
「うん。ところで、ここはどこ?」
くまは周りを見回しました。
「くまミュージアムですよ」
「ああ、そういえば、そんな名前だったね」
くまはのそのそと歩き出し、壁に貼られているポスターを眺めました。
「なるほど。ぼくはこの建物の中にいるんだね」
「そうです」
「どうして?」
「さっき、あなたはここで倒れたんです」
「そうだったのか」
くまは考え込みました。
「それにしても、どうして倒れてしまったんだろう?」
「わかりません」
「うーん……。あ、わかったぞ」
くまは大きくうなずきました。
「きっと、お腹が減っていたせいだよ」
「おなかが空いていたから?」
「そうだよ。だから力が出なかったんだ」
「でも、食べ物はいっぱいありますよ」
「そうだねえ……」
くまは困った顔をして言いました。
「どれもおいしそうだね」
「どれを食べますか?」
「どうしようかな……」
くまは再び考え始めました。
それから数分後――
「決めたよ」
「何にしますか?」
「この『峠のくま』っていうのにする」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
くまは深々と頭を下げました。
「では、チケットを渡してもらえますか」
「いいとも」
くまはポケットから紙切れを取り出し、それを女の子に手渡しました。
「はい、確かに受け取りました。あとで返してもらいますからね」
「うん。わかってるよ」
「では、こちらのドアを通ってください」
「わかったよ」
くまはゆっくりした足取りで歩いて行きました。
そして、大きなガラス戸の前に立つと、その向こうに見えている景色を眺めました。
「わあ、すごいなぁ」
そこは山道の頂上にある展望台のような場所でした。
遠くには雪に覆われた山脈が見え、足元からは谷底に流れる川が見えています。
さらに、くまのすぐ後ろには、「くま」の形をした巨大な滑り台がありました。
「これは気持ちよさそう」
くまはつぶやいて、目の前の柵を乗り越えようと、足を一歩踏み出そうとしました。
そのとき、後ろの方から声が聞こえてきました。
「こら!何をしている!!」
くまが振り返ると、そこには警備員の姿がありました。
「危ないじゃないか!」
「ごめんなさい」
くまは素直に謝りました。
「まったくもう……」
警備員はぶつくさと言いながら、くまのところまでやって来ました。
「ほら!早く出て来るんだ」
「はい……」
くまが外に出ようとすると、背後で再び大きな音が鳴り響きました。
ゴオーッという音とともに、巨大トンネル型のすべり台が流れてきたのです。
「うわあ、びっくりしたなぁ」
くまは思わず目を閉じました。
「ほら!早く逃げるんだ」
「は、はい……」
くまはあわてて駆けだしました。
「待て!」
くまは、すぐに追いつかれてしまいました。
「あの……、すみませんでした」
「いいかい?二度とこんなことをしたらダメだよ」
「はい、気をつけます」
「じゃあ、帰りな」
「はい」
くまは、再び出口に向かって歩き出しました。
「ちょっと待ちたまえ」
ところが、今度は呼び止められました。
「きみ、お腹減っていないかね?」
「え?はい……」
「これを食べていきなさい」
「あ、ありがとうございます」
くまは、差し出されたお菓子を受け取りました。
「おいしい……」
「そうだろう」
くま音楽の学会
くま先生のピアノ連弾 くま夫婦は、今日も仲むつまじく暮らしていました。
そんなある日のこと、突然くま夫人が言いました。
「あなた、わたし、そろそろ子どもを産みたいわ」
「おお、それはすばらしいことだよ。ぜひがんばってほしい」
「ありがとう。それでね、あなたの子を産む前に、ひとつだけ試したいことがあるの」
「どんなことだい?」
「じつはね、昔読んだ本に書いてあったんだけど、『くま音楽』っていうのがあるらしいのよ」
「ほう、おもしろそうな話だね」
「でしょう?」
「よし、それならさっそくやってみよう」
「ええ。じゃあ、まずは楽譜から作らないと」
「ああ。でも、いったいどういう曲なんだろう?」
「わからないわ」
「困ったなあ」
「そうねえ……。あ、そうだわ」
「何か思いついたのかい?」
「ええ。この前、あなたが教えてくれた歌があったじゃない。あれはどうかしら?」
「『くまさんたら食べたい』か。なるほど、あれはなかなかの名曲だよ」
「そうよね。わたしも大好きなの」
「うむ。ぼくたちふたりで作った歌だからね」
「ええ。だから、この『くま音楽』にも合うと思うのよ」
「そうだねえ。でも、『くま』っていうのは何だろう?」
「さあ、そこがよくわからないの」
「ふーん。まあいいや、とにかく歌ってみよう」
「そうね。では、くまさん、くまさん……」
「くまさん、くまさん」
「くまさん、くまさん」
「くまさん、くまさん」
「くまさん、くまさん」
「くまさん、くまさん」
「くまさん、くまさん」
「くまさん、くまさん」
「くまさん、くまさん」
こうして、夫婦は『くま音楽』を作り始めました。
そして、それから何日か経ったある日――
「できたわ!」
「ほんとうか!?」
「ええ、これよ」
くま夫人は、得意げに一枚の紙を差し出しました。
「どれどれ……」
くま先生はそれを見て、目を丸くして驚きました。
「こ、これはすごい!まさに『くま音楽』そのものだ!!」
「そうでしょう?苦労したのよ」
「まったくだ。まさか、こんなものができあがるとは思わなかったよ」
「ええ。では、さっそく演奏しましょう」
「うむ。そうしよう」
2人は、さっそく練習を始めました。
そして数日後には、すっかり上達しました。
「いい感じじゃないか」
「そうね。これならきっと大丈夫よ」
「ああ。本番が楽しみになってきたよ」
「ええ」
くま夫妻は、ワクワクしながらその時を待ちました。
しかし、ついに演奏会当日がやってきました。
会場に集まった人々は、2人の姿を見て思わずどよめきました。
なぜなら、くま先生の頭の上には王冠があり、 くま夫人のおなかはまるで妊娠しているかのように大きく膨らんでいたからです。
「おい、なんだありゃあ」
「どうしてあんな格好をしているんだろう?」
「もしかして、病気なのかな?」
「いや、そういうわけじゃなさそうだぞ」
「じゃあ、なぜ?」
「うーん……。あっ!わかったぞ!」
「どうしたんだ?」
「あいつら、結婚式を挙げるつもりに違いない!」
「え?結婚だって?!」
「ああ。あの2人の様子は、まさしく新婚さんって感じじゃないか」
「なるほど。たしかに言われてみれば、そんな雰囲気があるな」
「そうだろ?」
「ああ」
「ということは、やはり間違いないようだな」
「そうだな」
「よし、こうなったら俺らも負けていられないぜ」
「おう。俺たちも、最高の結婚式を挙げようぜ」
くま夫妻の話を聞いた人たちは、みんな張り切って準備に取りかかりました。
そして、ついに結婚式が始まりました。
「みなさま、本日はお集まりいただきありがとうございます」
くま先生
はちみつの大事戦
王様の戦士
「あな熊戦法 炸裂」
「あな熊戦法 大成功」
「くま作戦 大成功」
「くま軍団 大勝利」
「くま王国 建国」
「くまさん 誕生」
「くまちゃん 登場」
「くまくん 登場」
「くま子 登場」
「くまね 登場」
「くま美 登場」
「くま男 登場」
「くま三郎 登場」
「くま四郎 登場」
「くま五郎 登場」
「くま左衛門 登場」
「くま太郎 登場」
「くま次郎登場」
「くま三兄弟 登場」
「くま六きょうだい 登場」
「くま七きょうだい 登場」
「くま八きょうだい 登場」
「くま九きょうだい 登場」
「くま十きょうだい 登場」
「くま十一きょうだい 登場」
「くま十二きょうだい 登場」
「くま十三きょうだい 登場」
「くま十四きょうだい 登場」
「くま十五きょうだい 登場」
「くま十六きょうだい 登場」
「くま十七きょうだい 登場」
「くま十八きょうだい 登場」
「くま十九きょうだい 登場」
「くま二十きょうだい 登場」
「くま二十二きょうだい 登場」
「くま二十四きょうだい 登場」
「くま二十五きょうだい 登場」
「くま二十六きょうだい 登場」
「くま二十七きょうだい 登場」
「くま二十八きょうだい 登場」
「くま三十きょうだい 登場」
「くま三十三きょうだい 登場」
「くま三十四きょうだい 登場」
「くま三十五きょうだい 登場」
「くま三十六きょうだい 登場」
「くま三十七きょうだい 登場」
「くま三十八きょうだい 登場」
「くま三十九きょうだい 登場」
「くま四十きょうだい 登場」
「くま四十一きょうだい 登場」
「くま四十二きょうだい 登場」
「くま四十三きょうだい 登場」
「くま四十四きょうだい 登場」
「くま四十五きょうだい 登場」
「くま四十六きょうだい 登場」
「くま四十七きょうだい 登場」
「くま四十八きょうだい 登場」
「くま五十きょうだい 登場」
「くま五十一きょうだい 登場」
「くま五十二きょうだい 登場」
「くま五十三きょうだい登場」
「くま五十四きょうだい 登場」
「くま五十五きょうだい 登場」
「くま五十六きょうだい 登場」
「くま五十七きょうだい 登場」
「くま五十八きょうだい 登場」
「くま五十九きょうだい 登場」
「くま六十きょうだい 登場」
「くま六十一きょうだい 登場」
「くま六十二きょうだい 登場」
「くま六十三きょうだい 登場」
「くま六十四きょうだい 登場」
「くま六十五きょうだい 登場」
「くま六十六きょうだい 登場」
「くま六十七きょうだい 登場」
「くま六十八きょうだい 登場」
「くま六十九きょうだい 登場」
「くま七十きょうだい 登場」
「くま七十一きょうだい 登場」
「くま七十二きょうだい 登場」
「くま七十三きょうだい 登場」
「くま七十四きょうだい 登場」
「くま七十五きょうだい 登場」
「くま七十六きょうだい 登場」
「くま七十七きょうだい 登場」
「くま七十八きょうだい 登場」
「くま七十九きょうだい 登場」
「くま八十きょうだい 登場」
「くま八十一きょうだい 登場」
「くま八十二きょうだい 登場」
「くま八十三きょうだい 登場」
「くま八十四きょうだい 登場」
「くま八十五きょうだい 登場」
「くま八十六きょうだい 登場」
「くま八十七きょうだい登場」
「くま八十八きょうだい 登場」
「くま八十九きょうだい 登場」
「くま九十きょうだい 登場」
「くま九十一きょうだい 登場」
「くま九十二きょうだい 登場」
「くま九十三きょうだい 登場」
「くま九十四きょうだい 登場」
「くま九十五きょうだい 登場」
「くま九十六きょうだい 登場」
「くま九十九きょうだい 登場」
「くま百きょうだい 登場」
「くま百一きょうだい 登場」
くま百一匹登場しました。
結婚式も終わり、くま王国は幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
(完)
『くまのプーさん』より くまのパディントンが住んでいる街には、小さな教会がありました。
その教会は牧師さんの家でもありました。
ある夜遅くのことです。
いつものように寝床に入っていたくまのパディントンは、なにか物音を聞き付けて目を覚ましました。
するとどうでしょう! 部屋の中に見知らぬ男が立っていたのです。
男は全身を黒いマントに身を包んでいました。
「だ……だれですか?」
パディントンはびっくりして尋ねます。
しかし返事はなく、かわりに男は手にしていた大きな袋から何かを取り出して口に運び始めました。
それはなんとも奇妙な食べ物だったそうです。