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即身像  作者: 面映唯
第二章
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【みにくいむしの子】

 ぱん、という刺激を追って、ひりひりとした痛みがじんわりと皮膚に広がる。ぱん、という音が、その後を追って頬に広がる二次的な痛みを置き去りにする。じんわりと広がっていくヒリヒリとした痛みを感じることもままならず、ぱん、ぱん、ただその直接的な刺激だけを感じていた。何度も繰り返されるため、二次的な痛みが緩和されているということだろうか。散々叩かれた挙句、ちょうどいいところに置いてあった椅子で身体を殴りつけられる。椅子も武器になり得るのだな、鈍器となり得る陶器は部屋に置かない方がいいと思ってはいたが、想定外だった。殴られようとも自分の命を守るためには致し方ない。どうせ殴られるのだったら、鈍器よりも素手の方がましであり、さすがのあたしも硬いもので叩かれれば耐えられず死んでしまいかねない。素手なら殴られた側だけではなく、殴る側にも被害がある。そう思い、部屋から鉄の類を排除しては殴られて、という日々を繰り返していたが……そうか……椅子も武器に……でもさすがに椅子まで部屋からなくすのもな――感心している間に、宙を舞っていた。椅子と一緒に庭先に放り投げられる。背中から落ち、支えるために反射的に出た左手首がぐにゃりと曲がる。手首に痛みが走る。それを曲がったまま押さえつけるように自分の身体が降ってくる。放り出された衝撃の反動で、左側頭部を一回、激しく打ち付けた。視界が揺れる。右手で地面を支え、左手で痛む個所を押さえたのは無造作だった。瞼を横に伸ばし、口角を引き締める。ギリっと歯が擦れる。痛みが痛みを緩和する感覚を手にする。更に歯を食いしばり、ゆっくりと歯ぎしりをする。歯茎が衰えているのか、奥歯が傾き、抜けかかった。抜けかけてしまったのなら仕方がない。抜いてしまおう、と歯ぎしりを重ね、ぐらぐらと抜けかかっている歯を揺らす。歯茎に張り付きとれない歯を、舌で無理矢理傾ける。歯ぎしりの音に似た肉から剝げる音が口内に響いた。舌の上に溜まった唾を吐き出そうとプッ、と唇をすぼめ、吐き出した。血液の混じる唾液と一緒に、黄色い奥歯が三本、庭先に吐き出された。


 母親は、何も喋らずに家の奥へと姿を消した。


 それと入れ違うように忍び込んだ人攫い。奴に、身体の自由を奪われた。


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