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即身像  作者: 面映唯
第一章
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「だいぶ良くなった」とららが言ったとき、やっと本題に入れると沢田は思った。聞きたいことはいくつかあったが、イエスかノーで答えられるような質問ではなかった。彼女に質問をして、その答えをつっかえながら一生懸命話している姿を見ていると、こっちが悪いことをしているような気分になった。「もうちょっとしたら話そうか」簡単な会話でリハビリをして、彼女がつっかえずに話せるようになるのを待った。


 簡単な会話の最中に、彼女の名前が「らら」だということを知った。沢田とこの部屋で話す前、最後に会話したのは丑首だそうだ。どのくらい前? となんとなしに聞けば、「じゅう、ねんくらい」と答え驚愕する。今何歳なの? と聞けば、「たぶ、ん、にひゃっ、くろくじゅ、くらい」と言われ、顎が外れるかと思うくらい顎が落ち、「うし、くびさ、んは、もっと、すごくまえ」と聞いてもいない情報を聞かされ、しばらく開いた口が塞がらなかった。


「そういえば、丑首さんの部屋にさっきいたの?」

「いないよ」

「でも、見たんでしょ? 俺と丑首さんが話してるの」

「見た」

「じゃあ……」

「私、先のこと見えるの」


 沢田は目を瞬かせた。が、ここは雲河だ。どんな人がいてもおかしくない。以前読んだ漫画に同じようなスーツの男がいた気がしなくもない。すでに浅比というわけわかんない奴と、丑首とか言う人の身体を解剖しながらも優しそうな人に出会っているため、もう驚かなかった。


「えっとそれは未来予知とか言う……」

「そう。たぶん三十秒後ぐらいなんだけどね。それで沢田くんと丑首さんが話してるの見た」

「声も聞こえるの?」

「うん」


 これでららが沢田の名前を知っていたことに納得がいった。見えるだけではなく声も動画のように聞こえるということだ。


「じゃあ、丑首さんがここに誰かを紹介するときは頼ってくれてるとき、ってのはもしかしてそういうこと?」と聞くと、ららはにっこりと笑った。「うん。私使えるから」と。

「宝くじの番号はわからないけど、三十秒でも結構役に立つの。三十秒後、浅比さんと丑首さんは東棟の五階の通路で鬼ごっこしてる」


 それを聞いた瞬間、これはありがたいと思った。今浅比がどこにいるのか把握できるだけでも助かる。


「その見えた未来ってのは絶対なの? ほら、よくパラレルワールドとかって言って、その未来をしたことで俺とららが本来の未来とは別の動きをしたがために変わっちゃうとか……」ららは沢田の話途中で首を左右に振っていた。沢田の目を見て「ぜったい」と口にした。どういう理屈かはさておき、約三十秒後の未来だけは確実ということが分かった。


「三十秒後に五階の通路にいるってことは、今は四階の通路にいるとか、一階辺りの階段を上ってるとか予測できるけど、私は頭爆発しちゃうからしない」

「あ、うん、しないのね。それは俺がやるからいいよ」

「じゃあ沢田くんは浅比さんから逃げてるから、浅比さんが近づいたら教えるね」握手を求めているのか、彼女は右手を差し出した。


「うん。ありがとう。有難い限りです」沢田は左手を差し出し、握った。指紋が薄くなっているのか、肌触りのよさを感じる。


「あ、なんか丑首さん言ってる」


「え、なに、なんて?」もしかしてこの部屋に浅比が近づきそうだから教えてくれているのかもしれない。丑首はららの未来予知能力を知っているはずだから、こういう使い方も心得ているのだろう。


 しかし、ららは黙ったまま上の空だった。しばらくして我に返ったようで、「あの、私とお話しませんか?」と言った。顔は幼く、実年齢はニ百六十歳だろうが、見た目は明らかに二十代中盤の中学生だ。


「ええ、はい」と咄嗟に答えてしまう。おいおい、本当にこんな子の話に付き合ってて大丈夫なのか? 早く雲河を出て駅で電車にでも乗って逃げた方がいいんじゃないの? 話長そうじゃない?

三十秒後とはいえ、ららが浅比の位置を把握できるのなら大丈夫かと、安易に肯いてしまった。




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