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第30話 完全上位互換?


 王都からやってきた労働者たちを受け入れる体制がほぼ整い領内が安定してきたある日、お父様の古くからの友人でありエルリーン伯爵領のすぐ西側に領地を持っているアルス伯爵が屋敷へとやってきた。


 アルス伯爵はお父様の部屋で小一時間ほど何かを話された後に急ぎ足で帰っていった。


「お父様、アルス伯爵はどのようなご用件だったのですか?」


 お父様は腕を組み深く考える素振りをしながらゆっくりと口を開いた。


「すまんなシルヴィア。重大な話だから家族にも軽々しく口外出来ない。ルーク殿下、少々お話を宜しいですか?」


「はい、私に協力できることならば何でも言って下さい」


 お父様はルーク殿下を連れて自室に籠り何かの話をしている。

 国家に関わる重大な話だという事は私にも分かる。

 私なんかが口を挟むような事ではないから仕方がないと割り切ってテラスへ移動する。


 テラスではリストリア殿下が椅子に腰を掛けて寛いでいた。

 丁度話し相手を探していたところだったので迷わず声をかける。


「リストリア様、ご一緒にお茶でもいたしませんか?」


「あっシルヴィア……今日はすまないがこの後予定があってな……」


「ご予定ですか? でしたら仕方がありませんね」


「すまない、この埋め合わせは後日必ずする」


 そう言ってリストリア殿下はそそくさと去っていった。

 暇そうにしているリストリア殿下にまさか断られるとは思わなかった私は軽くショックを受けつつ、同時に一つの疑問が浮かび上がった。


 リストリア殿下の予定って何だろう。


 最近はお父様も忙しいのでリストリア殿下とのチェスの勝負もご無沙汰になっている。


 既に王室との関わりを断っているリストリア殿下は昨今の王都の混乱などどこ行く風で屋敷内をぶらぶらしている姿しか見ていない。


 お父様がリストリア殿下と政治の話をしているところも見た事が無い。


 かといって何か仕事をしている様子もない。


 最近は領内の人口の増加に比例してそれだけ私の【口寄せ】の仕事も増えているというのに居候のリストリア殿下がこれじゃあ不公平だ。


 軽く腹が立ってきたので私は暇潰しも兼ねてリストリア殿下の予定とやらを探る事にした。


 リストリア殿下はキョロキョロと周囲を警戒しながら廊下を歩いていく。


 しかしこの屋敷は私にとっては文字通りホームだけどリストリア殿下にとってはまだアウェーだ。

 リストリア殿下は私が屋敷内の壁や柱などを利用して巧みに身を隠しながら後をつけている事には気付かない様子で進んでいく。


 そしてある部屋の前でリストリア殿下は足を止め扉をノックする。


「クローディア、俺だ、リストリアだ」


「待ってたよリストリアお兄ちゃん。入っていいよ」


「失礼をする」


 リストリアはクローディアの部屋の扉を開け中に入っていった。


 そしてカチャリと扉の鍵をかける音も聞こえた。


 私はその様子を唖然としながら見送った。


「……そっか、今日はクローディアと遊ぶ約束をしていたのね。先客がいたならしょうがないか」


 そう自分に言い聞かせるように呟きながらその場から離れていく私の顔はきっと引きつっていただろう。


 さっきのリストリア殿下の態度は明らかにおかしかった。

 クローディアと遊ぶ約束をしているのならはっきりとそう伝えるべきだ。

 それにリストリア殿下がクローディアと遊んであげる時はいつも中庭や広間など使用人たちの目があるところを選んでいた。


 クローディアの部屋の中で、しかも鍵までかけて二人きりになる事なんて今まで一度もなかったはずだ。


 二人は部屋の中でいったい何をしているのか気になって仕方がない。


「ま、まさか……」


 私の脳裏に婚約者だったラングをレイチェルに奪われ、婚約破棄を告げられた時の事がフラッシュバックした。

 姉の物を何でも欲しがる妹の話も珍しくない。


「で、でもクローディアはまだ子供だし、リストリア様が幼女趣味だなんて話は聞いた事が無いし……考えすぎよね……」


 私は動揺しながら自分に言い聞かせるように呟いた。


 いや、それ以前にクローディアは人の婚約者を強奪するような悪い子じゃない。

 姉である私から見てもお利口で優しくて可愛くて巫女としての才能も私よりもありそうで……。



 ……あれ?



 クローディアには非の打ちどころが全くない。



 将来立派な淑女に成長したクローディアの姿を想像すると、リストリア殿下が私よりクローディアの方に魅かれても不思議じゃない。


 でもリストリア殿下は私にプロポーズをしており、後はお父様のお許しを得るだけの状態だ。

 ラングじゃあるまいし、リストリア殿下がそんな不誠実な行動をするとも思えない。


 でも……。


 考えれば考えるほど分からなくなっていく。


「シルヴィアお嬢様、こちらにいらっしゃったのですか。お身体の具合でも?」


 ぶつぶつと独り言をしながら屋敷内をうろついている私を執事のセルバンティウスが心配するような目をしながら声をかけてきた。


「はっ……いえ、何でもありません。それより私に何か用事でしたか?」


「はい、またシルヴィアお嬢様に【口寄せ】をお願いしたいという方がいらっしゃっています」


「分かりました。直ぐに準備をします」


 近頃は人口の増加と共に【口寄せ】の仕事も多くなった。


 今はリストリア殿下とクローディアの事は忘れて仕事に集中しよう。



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[一言] 蘇る悪夢?(笑)
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