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新連載はじめました。

ぼちぼち更新していきます。

「ティアは僕が運命の人だったら、僕のお嫁さんになってくれる?」


「うん、いいよ!うんめいのひとなら、わたし、アルのおよめさんになる!」


「約束だよ?」「うん、やくそくね!」



-------------------------------------------------------------------------



「懐かしい夢を見たわ。現実は運命の人どころか政略結婚の相手すらいないのに。」

そう言って、自嘲気味に笑いながら目を覚ました。

5歳の頃の淡い初恋の記憶。

その子と会ったのは確か5歳の頃。

領地にある湖で何度か会って話をしたけれど、

それ以来会うこともなく、もうその男の子の顔は思い出せない。

覚えているのは金髪のちょっと年上の男の子でアルと呼んでいたことだけ。

金髪の男の子なんてよくいるし、初恋なんてみんなこんなものだろうと特に引きずったりはしていない。


「お嬢様、おはようございます。本日は午後よりカストン伯爵令嬢様とのお茶会の予定が入っております。朝食が済みましたら、お仕度をいたしましょう。」

ぼんやりとベッドの上で考えていたら侍女のアンがやってきた。

「おはよう、アン。そうね、メアリ―に会うのは1か月ぶりかしら?楽しみだわ!」

先日まで1か月ほど領地に行っていたため、王都に帰ってきてまずメアリーとお茶会をする約束をしていた。久しぶりに親友に会えることが楽しみで見た夢のことはすぐに忘れた。





「久しぶりね、ティア!ティアが領地に帰ってる間、寂しかったわ。今日はたくさんお話しましょう!」


「えぇ、メイ。久しぶりに会えて嬉しいわ!元気だった?」


「元気よ、先日はマーティと劇を観に行ったのよ。≪運命の恋≫がテーマだったんだけど中々面白かったわ!」


「運命の恋かぁ…」


「どうしたの?ティア」


「ううん、ちょっと今朝見た夢のことを思い出してね。初恋の夢だったんだけど、現実は政略結婚の相手すらいないんだよなぁって朝から少し落ち込んだわ。メイはマーティンと仲良くて羨ましいわ。」

友人のメアリー・カストン伯爵令嬢には幼い頃より決められたマーティンというフリック伯爵家の長男が婚約者であり、政略結婚ではあるもののとても仲が良い。

そして私、ティアことティアナ・フリードル伯爵令嬢には婚約者がいない。

そろそろ婚約者が出来ないと行き遅れまっしぐらな未来が近づいてしまう。

だがしかし、私には婚約者どころか申し込みすらない状況なのである。

夜会などにも参加しており、ダンスに誘われたりもするのだがそこから先に全然進まない。

茶髪に緑色の瞳で平凡な私は全くモテない≪非モテ令嬢≫なのだ。


「ティアはこんなにかわいいのにどうして婚約の申し込みがないのかしら?不思議よね。」


「平凡だからなのかしら。メイは綺麗なストレートの黒髪にブルーの瞳でスタイルもいいしとても美人だもの、マーティンだってそりゃメロメロよ!あぁ、どうしよう、このままじゃ行き遅れちゃうわ!」


「ティアは平凡なんかじゃないわよ、ミルクティーみたいなフワフワした髪にぱっちりした緑色の瞳、庇護欲そそるかわいい女の子よ!そういえばジョシュアは?ティア、ジョシュアと仲が良いじゃない、そういう雰囲気になったことないの?」

ジョシュアとはダルトン男爵の長男で私の幼馴染。

小さい頃から一緒にいて腐れ縁で結婚とかそういった話が出たことは一切ない。

「ジョシュは幼馴染で腐れ縁よ。ジョシュも私もそういった感じじゃないの。」

そう言い切ると、なぜかメイに呆れた顔をされた。



「そういえば、再来月の王家主催の夜会ではアルバート殿下がパトリシア様との婚約をついに発表するんじゃないかって今、噂になっているわ。」


「アルバート殿下って隣国に留学されていたんじゃなかったかしら?」


「それが最近、留学を終えて帰ってきたらしいわよ。アルバート殿下も18歳ですし、かねてから噂されてたパトリシア様と正式に婚約なされるんじゃないかって皆言っているわ。」


アルバート殿下はこの国の第2王子、たしか13歳の頃から隣国に留学へ行かれていたと記憶している。

「アルバート殿下ってずっと留学されていて公式の場にも出てこられなかったからどんな方なのか知らないのよね。でも殿下が婚約発表される王家主催の夜会ってことはほぼすべての貴族は参加するわよね?よし、そのおめでたいムードに乗って私もそろそろ婚約を決めてみせるわ!」


「あら、ティア、急にやる気になったわね!そんな焦る必要もないと私は思うのだけれど…ティアが頑張るなら私は応援するわよ!」


「ありがとう、メイ。脱非モテ令嬢よ!ドレスにアクセサリー、色々準備頑張らなくっちゃ!」

そうして、私は再来月の夜会に向けて気合を入れ直した。



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あれから数日後、私は王都の街へお忍びで遊びに来ていた。

小さい頃から本を読むのが好きでちょっとおませさんだった私は、

本の中にある、見たことのない活気あふれる街やお店、

そしてそんな街で繰り広げられるラブストーリーに憧れていた。

本を読むのが好きだから内向的かと言えばそうではない、むしろお転婆な方で、

ついに我慢が出来ず2年前の14歳の時、初めて領地の街へこっそり遊びに行った。

そこで見る本の中に書いてあったようなお店、食べ物、街の雰囲気にハマってしまい、

今では趣味の一つなのである。

令嬢らしくないとは思うのだけれどどうにもやめられない、

それ以外の場ではちゃんと貴族のご令嬢をしているので見逃してほしい。

そんなことを懐古しながら角を曲がったとき、角の向こうにいた誰かにぶつかってしまった。


「きゃっ」

こける!って思った瞬間、ぶつかった相手が私の腕を取り支えてくれた。


「すまない。怪我はないかい?」


「えぇ、大丈夫です。私の方こそ考え事をしていて、ごめんなさい。助けてくれてありがとうございま、す………」

そう言いながらぶつかった相手を見た私は言葉を詰まらせた。

輝く金糸のようなサラサラの少し長めの髪をひとつに結んでおり、瞳はサファイアのような美しい青色、小さい頃絵本で読んだ王子様のような美しくてかっこいいその人に、私は見惚れてしまった。

―――こんな本当に王子様みたいなかっこいい殿方初めて見たわ


「もしかして、ティア?ティアかい?」


「えっ?」

初めて会ったはずのその人はなぜか私の名前を愛称で呼んできた。

私にこんな素敵な男性のお知り合いはいないはずなのだが…。


「僕だよ、アルだよ!小さい頃、フリードル伯爵領にある湖で何度か会ってるんだけど、覚えてないかな?」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

これが私と私の初恋の相手アルとの11年ぶりの再会でした。

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