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「どうしてついて来るんですか?」


 放課後、新島恵太の隣を歩きながらルーは後ろに振り返った。


「私の家もコッチなのよ!」


 新島春香は声を張り上げた。ルーは「あー、そーでしたそーでした」と両手を叩き合わせた。何だかちょっとわざとらしい。


「それに、二人きりなんて約束はしてない!」


「そーいえば、そーですね」


 新島春香の言い分にルーは素直に頷いた。


「それでは新島さんも一緒に帰りましょう」


「ルーは、家この辺なのか?」


 新島恵太が隣を歩くルーに質問する。


 新島兄妹の自宅は学園から徒歩圏内である。20分ほど歩けば普通に着く。


「いえ、電車で3駅離れてます」


「だったら、駅は反対でしょーが!」


 新島春香が声を張り上げた。


「ま、いーじゃないですか。ケータお兄ちゃんがどんなトコに住んでるのか知りたいんです」


 ルーが可愛く微笑んだ。それを見て、新島春香はおデコを押さえてうな垂れる。


「勘弁してよ…何でいきなり、恵太にこんなに入れ込むのよ?」


 妹の呟きがよく聞き取れなかった新島恵太は、あまり気にせず直ぐにルーの方に向き直った。


「そー言われても、普通の家だぞ?」


「大丈夫ですよ。お二人の育ったお家を見てみたいだけですので」


 ルーは新島恵太の瞳を真っ直ぐ見つめると、目を細めて優しく笑った。


 ~~~


「あら、二人ともおかえり」


 ルーたちが新島宅に着いたとき、ちょうど買い物から帰ってきた二人の母親である新島咲子にいじまさきこと玄関先で出会した。


 ブリムの広い白い帽子をかぶり、後ろで括った長い黒髪は背中の中ほどまで届いている。優しい目元をした笑顔の似合う女性だった。


「ただいま」


 新島兄妹は声を揃えて挨拶を返した。


「そちらは?」


 新島咲子がルーの姿に気付いて顔を向ける。


「私はルー=リースと申します。春香さんとは、とても親しくお付き合いさせて頂いております」


 ルーはにこやかに微笑むと、ペコリと丁寧にお辞儀をした。


「まあ、春香のお友達?こんな所では何ですから、よかったら上がって上がって」


 新島咲子はキィーと門を開けると、笑顔でルーを手招きする。


「ちょ、ちょっと、お母さん!」

「ありがとうございます!お言葉に甘えさせて頂きます」


 新島春香の声をかき消すようにルーは声を張り上げた。それからそそくさと、新島咲子とともに家の中に入っていく。


 新島恵太は、妹がその場でダンダンと地団駄を踏む姿を見て「ハハハ」と苦笑いをするしかなかった。


 ~~~


 リビングに通されたルーは、ソファーに腰掛けながら家の中をキョロキョロ見回した。


「大きいですね」


 ボソリと小声で感想を漏らす。


「何言ってんのよ。イギリスの家の方が、もっと大きいんじゃないの?ウチなんて普通よ普通」


 たまたま後ろに立っていた新島春香が、ルーの独り言のような呟きに応えた。


「確かに本邸は大きいですけど、私は小さな離れが大好きで、想い出がたくさんありますので」


 ルーはフッと寂しそうな遠い目になった。


 そのとき新島春香は、ルーの頭をポンとはたいた。


「ッタ、何するんですか!」


 ルーがムッとしながら、新島春香を見上げてきた。


「急にしおらしくなんないでよっ、調子狂うじゃない!」


 新島春香は「フン」とソッポを向くと、「着替えてくる」と言い残しリビングから出ていった。

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