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「お前の飯は、まだ届かないのか?」


 黒縁眼鏡の爽やかな顔立ちをした春日翔かすがしょうが、頭の後ろで手を組みながら「はー」とボヤいた。


 学力、運動神経、ルックスの3拍子全て揃ったこの好青年は、学力、運動神経、ルックス全て並の新島恵太の小学校からのくされ縁である。


「いい加減に自分で持ってこいよ」


「ボクもいつもそう言ってんだけど、春香のヤツが聞かなくて」


「ったく、兄貴なんだからビシッといけよな」


 春日翔が面白くなさそうに呟いた。


「それよりさー、さっきの授業で分かんないとこがあってさー」


「あーパスパス。昼休みにまで勉強したくない」


「頼むよー、春日センセー」


「だったら隣の真中まなかさんに教えてもらえよ」


 春日翔が意地悪そうな顔をした。


「え?」


 新島恵太は驚いたように隣に顔を向けた。


 窓際の一番後ろの席で、いつも一人で本を読んでいる真中聡子まなかさとこは、少しキツい印象の少女である。


 背中まである黒髪を三つ編みにまとめ、縁無し眼鏡をかけたこの少女は、春日翔に並ぶ学力優秀な存在であった。


「その手があったか」


「は?」


 新島恵太の反応に、春日翔は目を丸くした。


「ゴメン、真中さん。ちょっと分かんないトコがあって…教えてくんない?」


 新島恵太は教科書を持って、躊躇うことなく真中聡子の机に移動した。


 真中聡子は鬱陶しそうに新島恵太を見上げると、無言でパタンと本を閉じる。


 ドヤされる!春日翔は咄嗟にそう思った。


「どこ?」


 しかしそのとき、真中聡子の開いた口から優しい声が発せられた。


「ここ、ここ」


 新島恵太が教科書を指差す。二人はお互い息もかかりそうな程の至近距離で、一冊の教科書を覗きこんでいた。


 春日翔には何事が起きたのか理解が出来なかった。


「え、なに?お前ら付き合ってんの?」


 春日翔のその声に、二人はハッと顔を上げた。至近距離でお互いの瞳がバチッと合い、驚いたように顔を真っ赤にしてパッと離れる。


「ゴ…ゴメン!気付かなくて」


「ううん、私の方こそ近かった…」


 真中聡子は焦ったように立ち上がると、鞄からポーチを取り出し廊下に向けて駆けていった。


「恵太、お弁当持ってきたよー…て、わわっっ」


「わっ、ごめんなさい」


 そのときちょうど現れた新島春香とぶつかりそうになり、何度も頭を下げると真中聡子は教室から出ていった。


 ~~~


「その子、誰?友達?」


「転校生のリースさん。お昼一緒しようと思って」


 新島恵太は妹と一緒に現れた少女に視線を向けた。


「お、転校生か。ボクは新島恵太。んでコイツは春日翔。よろしくな」


 新島恵太は自己紹介ついでに、長年の悪友のことも紹介した。春日翔も「どうも」と軽く会釈する。


「ルー=リースです、よろしくお願いします。えと新島恵太…さんに春日翔さん」


 ルーはペコリとお辞儀をした。


「あ、恵太でいいよ。新島ばかりじゃ、どっちか分かりにくいよな」


「あ、ありがとうございます。恵太…さん」


「ん?まだ呼びにくい?」


 新島恵太はルーが自分の名前を呼ぶ時に、少し言い難そうにしていることに気が付いた。


「だったら、リースさんの呼び易いように呼んでくれていいから」


「ホントですか!?」


 ルーが突然、パッと明るい表情になった。


「では、ケータお兄ちゃんと呼ばせてください!」


「んへ!?」


 新島恵太は、流石に想定外で目を丸くして驚いた。


「うん、まあ、リースさんが呼び易いなら…別に構わないけど…」


「私のことは『ルー』と呼び捨てにしてください」


 ルーは顔を真っ赤にして、さらに詰め寄ってくる。


「あ…ああ、分かったよ、ルー」


「ちょっと、リースさん!」


 新島春香は正面からルーと向かい合うと、ワナワナと震えながらルーの両肩に自分の両手をのせた。


「あなた一体…何を言い出すのよ」


「どーかしたんですか、新島さん?怒ってるみたいですけど、私何かしましたか?」


「アンタねー」


 新島春香の両手に力が入り、ルーの両肩にギリギリと力が伝わる。


「さっきのエスパー設定はどこにいったのよー!」

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