第50話 新しい卵
〈魔石を使用しますか?〉
「お願いします」
〈魔石を使用しました〉
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ジオの家庭菜園
レベル43 193/215
菜園面積:201000/∞
スキル:塀生成 防壁生成 城壁生成 ガーディアン生成 メガガーディアン生成 ギガガーディアン生成 菜園隠蔽 菜園間転移 菜園移動 遠隔栽培 収穫物保存
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〈レベルが上がりました〉
〈スキル:遠隔栽培を習得しました〉
〈スキル:収穫物保存を習得しました〉
〈新たな作物の栽培が可能になりました〉
一気に6もレベルが上がってしまった。
さすがアトラスの魔石。
「……遠隔栽培って何だろう?」
レベルが40になったことで、新しいスキルを習得したようだ。
調べてみると、どうやらこれは離れた場所に居ても栽培ができるようになるというものらしい。
つまり、家の外に出かける用事があっても、その外出先で栽培をスタートさせられるわけだ。
わざわざ第一家庭菜園と第二家庭菜園を行ったり来たりしながら栽培を行っていたけれど、その必要もなくなる。
ちなみに収穫作業の方も遠隔でできるようになっていた。
「便利と言えば便利だけど……そんなに要らないかな?」
だって基本的に暇だし、ずっと家にいるから。
外に出かける機会なんて滅多にない……悲しいことに。
シーファさんとまたデートしたいなぁ……。
「収穫物保存は……そのままの意味で、収穫したものを保存しておくことができるってことかな?」
とりあえず近くでなっていた真っ赤なトマトを収穫してみる。
〈トマトを保存しますか?〉
「はい。……っ! き、消えた……」
試しに使ってみると、収穫したばかりのトマトが消失した。
〈トマトを出しますか?〉
「はい。……今度は出てきた」
一体トマトはどこに消えていたのだろうか。
謎だ。
「でもこれ、何の意味があるのかな? ……もしかして持ち運びが便利になるってこと?」
例えば大量の収穫物があり、どこかに運ばなくちゃいけなくなったとき。
今までは重たいそれを抱えて運ぶ必要があったけれど、このスキルを使えば手ぶらで移動することができるってことか。
そして移動先で取り出せばいい。
「便利だけど、これもあまり使わないかなー? あ、でも、保存しておくと長持ちするとか?」
もしそうだったら、作り過ぎたときに助かるかもしれないね。
その予想を確かめるため、僕はトマトを再び保存しておいた。
時々取り出してみて、変化を調べてみよう。
ちなみに収穫物以外のものを保存できるのか試してみると、残念ながらできなかった。
収穫物保存っていうスキルだし、そりゃそうだよね。
スキルについてひとまず把握できた僕は、続いて新しい作物について確かめてみ――――たいところなんだけど、
「いい加減、もう把握しきれてないんだよねぇ……」
スキルと違ってレベルが上がるたびに追加されていくので、今やとんでもない数になっているのだ。
正直言って、こんなにたくさん要らない。
最近、名前すら聞いたことのない作物もどんどん増えてきていている。
ゴボウとか、マツタケとか、ウニとか。
一応どれも一度は試しに栽培してみた。
ゴボウは木の根みたいなやつで、すごく硬い。
たぶん食べ物じゃない気がする。
マツタケはキノコの一種のようだけど……なんていうか、形がちょっと卑猥で……。
これはダメだと思い、栽培するのはやめておいた。
ウニはもっと恐ろしいものだった。
なにせ全身が刺だらけなのだ。
しかも微妙に動いていたし……もしかして毛虫の一種なんじゃないだろうか。
草系も種類が増えていて、中には高品質を作れるようになったものもある。
回復ポーションに必須のエイム草なんかもその一つだ。
そう言えば、少し前にその高品質のエイム草をマーリンさんのところに持って行ったら、殺気混じりに「……あなたはわたしを殺す気……?」なんて言われてしまったっけ。
あれは怖かった……。
それ以来、一度も持って行っていない。
でも、何で怒られたんだろう?
聖霊草
呪怨草
特にこの辺りとか、一度どういうものか教えてほしいんだけど……なんだかまた怒られそうで怖いんだよね。
リルカリリアさんなら分かるかもしれないけど、最近、頼ってばかりだからなー。
鉱物関係も随分と種類が増えてきて、高品質のダイヤモンドやミスリル鉱石も作れるようになった。
あ、そうだ。
色々あって忘れてたけど、アダマンタイト鉱石って何か、リルカリリアさんに聞かないと。
鉱物についてはリルカリリアさん以外に詳しい人を知らないからね。
〈新たな作物の栽培が可能になりました。確認しますか?〉
「……あ、うん」
謎の声に催促されたので、念のためざっとリストに目を通してみる。
一気にレベルが上がったので、案の定かなりの数の新しい作物が追加されていた。
「ええと、何か気になるようなやつは……」
魔物の卵 中
「おおっ!」
そんなわけで、僕は早速、魔物の卵を栽培してみた。
「大きい……っ!」
ミルクが生まれた卵はせいぜい直径三十センチくらいだったのに、これはその倍以上あるだろう。
殻は淡い黄色をベースに、黒い斑点模様となっている。
「にゃあ!」
ミルクが卵の周囲を興奮したようにぐるぐる回っている。
きっと嬉しいのだろう。
ミルクからすれば弟か妹が生まれてくるみたいなものだからね。
「今度はどんな子が生まれてくるのかなぁ」
よしよし、と卵を撫でる。
孵化するのが今から楽しみだ。