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第46話 最強菜園

〈メガガーディアン生成から派生し、ギガガーディアン生成を習得しました〉


「来たっ!」


 どうやら僕は賭けに勝ったようだ。

 ……いや、まだ分からない。

 これであの化けアトラスを倒せなければ意味がない。


〈ギガガーディアンを作りますか?〉


「お願いします!」


 次の瞬間、僕の目の前に、超巨大なゴーレム――ギガゴーレムが出現していた。


 たぶん高さ十五メートルはあるだろう。

 今までのゴーレムの三倍だ。


「オアアア……?」


 突然現れた超巨大ゴーレムに、アトラスが驚いている。

 身の丈としてはアトラスの方が少しだけ高いけれど、肩幅や胸の厚みにおいてはゴーレムが勝っている。


「いけ!」

「―――」


 ギガゴーレムは僕の命令に無言で応え、アトラスに向かっていった。


「―――」

「オアアアアッ!?」


 豪快なパンチが、アトラスの胸に叩きつけられた。

 アトラスは悲鳴を上げながらよろめき、二、三歩、後退する。


 ギガゴーレムは即座に追撃。

 右、左、右、左と、連続で拳を繰り出した。


「オアアアア……」


 アトラスは咄嗟に腕でガード。

 何発か受け止めた後、突然、足を振り上げた。


 強烈な上段蹴りがギガゴーレムの側頭部に叩き込まれた。

 ギガゴーレムは勢いよくひっくり返ってしまう。


 アトラスは飛び上がると、超巨大ゴーレムの上に飛び乗った。

 そうして馬乗りになると、マウントポジションから容赦なく拳を浴びせていく。


 何度も何度も殴られ、ギガゴーレムの身体はボロボロと崩れていってしまう。


「オオオオオオオオッ!」


 勝ち誇るような怒声を上げるアトラス。

 だがその後頭部目がけ、後ろから強烈なドロップキックが決まった。


「オガァッ!?」


 頭から菜園の土へと突っ込んでいったアトラスは、痛みに悶えながらも、一体何が起こったのかと後方を見やる。

 するとそこにいたのは、先ほどとは別の超巨大ゴーレムだった。


 愕然とするように一つ目を見開くアトラスの周囲に、さらに複数の巨大な影が現れる。


「オアァァァッ!?」


 四体のギガゴーレムに取り囲まれて、アトラスは初めて恐怖の表情を浮かべた。


「やれ!」

「「「――――」」」

「~~~~~~~~~ッ!?」


 ギガゴーレムたちによるリンチが始まった。




    ◇ ◇ ◇




「な、何が起こっておるのだ……?」


 防壁にしがみつきながら、エリザベートは呆然と呟いた。


 先ほど巨大な壁が魔物の群れを蹴散らしたかと思うと、どこからともなく巨大なゴーレムたちが姿を現した。

 だがそこにアトラスという特A級の魔物が現れて、今度こそこの街は終わったと思いきや、先ほどよりもさらに大きなゴーレムが出現。


 眼前で巨人同士が繰り広げる凄まじい戦闘に、エリザベートはあと少しでチビってしまうところだった。


 やがてついにアトラスが力尽きたのか、地鳴りとともに倒伏する。

 その瞬間、戦いに見入っていた領兵や冒険者たちが一斉に歓声を上げた。


「「「おおおおおおっ!」」」


 恐らくあのアトラスこそが今回のスタンピードの原因だろう。

 詳しい原因は分かっていないが、強大な力を持つ魔物は時に他の魔物を扇動し、都市や街を襲うことがあるのだ。


 千体以上いた魔物もほぼ全滅している。

 どうやらアーセルの街は助かったらしい。


 エリザベートはよろよろと防壁の上で立ち上がった。


「後はあの壁やゴーレムが何なのか、だが……」


 もし敵なら今度こそお終いだが、どう見てもこちらを助けてくれた。

 恐らく味方だと考えてよいのだろうが……心当たりはまったくない。


 そもそもゴーレムは魔物として自然発生する場合もあれば、人為的に――例えば魔法などで――作り出される場合もある。

 古代の遺跡などでは、ゴーレムが宝を守護していることも多い。


「しかしあんなゴーレムを作り出せる者など……」


 いるとすれば、伝説に残るような魔法使いぐらいだろう。


 と、そのとき西門を封鎖していた壁が動き始めた。


「帰っていく……?」


 先ほどやってきた方角へと帰還していく巨大な壁。

 信じがたい光景を見つめながら、エリザベートはふと思った。


「あの方向は……かつて沼地があったはずの……いや、まさかの……」




    ◇ ◇ ◇




 僕は菜園を移動させ、元の場所へと戻ってきた。


「……ふぅ、何とか上手くいったな……」


 緊張の糸が解けたからか、急に足に力が入らなくなってしまい、僕はその場にへなへなと腰を折った。


「ニャーニャー」


 ミルクが労うように、僕の頬をペロペロ舐めてくれる。


 出たとこ勝負だったけれど、運よく成功した。

 特に最後なんて、レベルアップでギガガーディアンを作れるようにならなければ、あんな化け物を倒すことは不可能だっただろう。


 その化け物の死体は、菜園のど真ん中で倒れている。


〈魔物を吸収しますか?〉


 あんな大きな魔物なら、魔石もきっと規格外だろう。

 恐らくレベルが一気に上がるはずだ。


 だけど僕は首を振った。


「……今はやめておくよ」


 魔物ごと吸収してしまうと、素材が手に入らなくなるからね。

 まずはリルカリリアさんに見てもらってからにしよう。


 というわけで、僕はいったん第一家庭菜園へと戻った。

 どうやら避難解除がなされたようで、家の外から人の声が聞こえてきた。


「ママ、もう大丈夫なの?」

「ええ、もう大丈夫みたいよ。領兵さんたちが魔物を倒してくれたみたいだから」

「すごーい!」

「感謝しないとね」

「うん!」


 うんうん、領兵さんたちは命がけで頑張ってくれたからね。


 何はともあれ街が無事だったことに安堵しながら、僕は我が家を見やる。

 父さんが遺してくれたこの家も守ることができてよかった。


「もしセナが戻ってきたとき、家が無くなっていたらびっくりするだろうしね」


 そうして僕はいつものように、妹が冒険から帰ってくるのを待つのだった。


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