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第24話 天使と謎デート 2

 続いて連れて行ってもらったのは武器屋だった。

 陳列された剣や槍などの武器をじっと眺めるシーファさん。


「ジオ、楽しい?」

「え? あ、はい……」

「よかった」


 その次は防具屋だ。

 これまた様々な防具を静かに眺めるシーファさん。


「ジオ、楽しい?」

「え? あ、はい……」

「よかった」


 防具屋を出ると、今度は見慣れた薬屋へとやってきた。


「あっ、シーファさんにジオさん! いらっしゃいませ!」


 いつものメイド服に身を包んだデニス君が嬉しそうに出迎えてくれた。


「お二人でいらっしゃるのは珍しいですね。今日は何の御用ですか?」

「大丈夫。今日は見るだけだから」

「そ、そうですか? では、ごゆっくりどうぞ!」


 シーファさんは宣言通り、ただただ陳列された商品を一つ一つ見ていった。


「ジオ、楽しい?」

「え? あ、はい……」

「よかった」


 これ、デートだよね……?


 シーファさんの意図がまったく理解できない。

 いや僕もデートなんてしたことないから、何をするのか分からないけど。


 薬屋を出ると、そろそろお昼時だった。


「昼食の時間だね」

「そうですね」

「こっち」


 どこかおしゃれなカフェにでも案内してくれるのかと思ったら、やってきたのはルルカス亭だった。

 アニィの実家で、現在は姉のアリシアさんが切り盛りしている定食屋さんだ。


「ここで食べるんですか?」

「うん」


 いや、いいけどね?

 アリシアさんの料理、美味しいし。

 食材は僕が栽培したものだけど。


 でもデートならもっとそれっぽいところに……と思わないでもない。

 少し時間が早いからか、店内はまだそれほど混んではいないけれど、それでも半分以上は席が埋まっていて騒がしい。


「いらっしゃい! って、シーファじゃない。それにジオくんも」

「うん。ご飯食べにきた」

「二人きりで?」

「そう」

「ふぅん……」


 ちょっと不審そうな目を向けるアリシアさんだけど、シーファさんはいつもの平然とした顔だ。


「ジオ、好きなものを頼んでいい。今日は奢り」

「あ、はい、ありがとうございます」




 その後も僕はシーファさんにいろんな場所に連れて行かれた。

 ただ、どれもこれもデートで行くようなところではなく。


「ジオ、楽しい?」

「え? あ、はい……」

「よかった」


 さらに行く先々で必ず確認されるのだった。


「次が最後の場所」

「あ、そうなんですね」

「うん。……ジオ、今日は楽しかった?」

「は、はい。もちろんです」

「本当に?」

「ほ、本当ですよ」

「でも……少し戸惑っている様子があった」


 シーファさんはそう図星を突きながら、なぜか申し訳なさそうな顔になった。


「ええと……それは、行く場所のチョイスがちょっと不思議だなって思ってただけで……」

「……そう」


 シーファさんは哀しげに頷いて、


「今日はお礼だから、ジオを楽しませたいと思った。だけど、私は楽しませ方が分からない。……だから、自分が好きな場所に連れていくことにした。そうしたら、ジオも楽しいかなと思って……」


 ああ、そうだったのか。

 だから冒険者ギルドとか、武器屋とか薬屋とか、シーファさんにとって身近な場所ばかりだったんだ。


 デートというともっと特別な場所に行くことだとばかり思っていたから、僕にはすごく奇妙に見えてしまっていたわけだ。


「本当はダンジョンにも行きたかったけれど、危険そうなのでやめた」

「それはやめて正解だったと思いますよ!」


 危ないところだった。


「ふふっ」

「……?」


 僕は思わず笑ってしまった。

 シーファさんって、実はすごく不器用な人なんだなぁ。


「心配しないでください。ちゃんと楽しかったですから」

「本当に?」

「本当です。シーファさんと一緒なら僕はどこに行っても楽しいです」


 って、今さらりととんでもないこと言ってしまったよ、僕!?

 もうほとんど告白みたいなものじゃないか!


「そう? ならよかった」


 幸いシーファさんは頷いただけだった。

 助かった……いや、でも今の言葉で無反応とか、それって脈なしってことじゃ……。


 僕は頭を抱えてしまった。


「……?」






 そしてシーファさんに最後に連れて行かれたのは、


「ここって……」

「私の家」

「ですよね」


 一瞬、ご両親に僕のことを紹介してくれるのかと思ったけれど、シーファさんのことだ、それはないだろう。

 だいたい僕、シーファさんのご両親とは面識がある。ご近所さんだし。


 でもシーファさんの部屋には入ったことないな……。

 も、もしかして入れてもらえるとか?


 きっといい匂いがするんだろうなぁ、と気持ち悪い想像をしていると、


「終わったぁぁぁぁぁぁっ!」


 家の奥からそんな大声が聞こえてきた。


「工房の方」


 シーファさんがずんずん庭を進んでいくので、僕は後をついていく。

 その先にあったのは鍛冶工房だった。


 実はシーファさんの実家は鍛冶屋を営んでいるのだ。


 工房に入ると、鍛冶職人たちが騒いでいた。

 ハイタッチを交わしたりしているのを見るに、何かいいことがあったのかもしれない。


「パパ、どうしたの?」

「おお、シーファか、お帰り!」


 パパと呼ばれたその大柄な男性は、シーファさんの父親だ。

 娘とはあまり似ておらず、毛むくじゃらでワイルドな感じである。


「ちょうど今、でかい仕事が無事に終わったんだ! 納期までギリギリだったが、これで無事に期限内に納品できる」

「親方、やりましたね! これで借金も返せますよ!」

「がっはっは! やはり誠実な仕事をしていれば、鍛冶の神様が味方してくれるようだな!」


 親父さんが豪快に笑っていると、そこへ、


「た、大変です、親方っ!」


 血相を変えて工房に飛び込んでくる職人がいた。


「どうした、そんなに慌てて?」

「今、依頼主が所属している商人ギルドへ品物が完成したと伝えに行ったら……そ、そんな商人いないと言われてしまったんです!」

「な、何だって!?」


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