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第133話 丸ごと作り変えちゃってもいいですか

「実は、避難せずに済む方法が一つあるかもしれないんですが……」

「な、何っ? そんなものがあるというのなら、早く教えるのじゃ!」


 僕の言葉に、長老様が猛烈な反応を示した。

 ついその勢いに圧倒されてしまった僕は、恐る恐る訊く。


「えっと……この森、丸ごと作り変えちゃってもいいですか?」

「……は?」


 何を言っているんだ、という顔をする長老様。

 うん、まぁ、そうだろうね……。


「何を言っているのじゃ……いや、人族の子供なんぞに期待した儂が馬鹿であったの」


 飽きれたような溜息を吐いて、長老様はそんな風に言い捨てる。

 この長老様、長く生きているはずに随分と性格が悪いなぁ。


「分かりました。じゃあ、勝手にやっちゃいますね。後から文句言わないでください」


 売り言葉に買い言葉で、僕もそう言い放つ。


「ふん、できるものならやってみるがよい」

「今の発言、聞きましたからね」


 そうして言質を取った僕は、長老様の家を後にする。


「あの長老、ムカつくわね。ファフニールを討伐した礼すら言わないし、あの態度だし。長く生きているか知らないけど、あんな風な歳の取り方はしたくないわ」

「まったくだ。あのジジイは性根が曲がっていて、昔から里でも評判が悪い」


 アニィが苛立ったように吐き捨てると、シーファさんのお爺さんもそれに同調した。

 あ、里でも嫌われてるんだ……。


「ジオ、何か考えがあるの?」

「はい。上手くいくか分からないですけど、一応、試してみようと思います」


 どのみち放っておいたらこの森は瘴気に侵されてしまうんだし、細かいこと気にしたって仕方ないだろう。

 僕は里を出ると、置いておいた家庭菜園に乗って空へと飛び上がる。


「また広がってますね……」

「魔物も頑張って逃げてるよー」


 上空から改めてみると、森は酷い状況だった。

 瘴気が猛烈な速度で広がっていて、すでに半分近くが呑み込まれてしまっている。

 このままだと、そう遠くないうちにこの里のところまでやってくるだろう。


「もっと高くじゃないと、全体を見渡せないな」

「ま、まだ上げるのっ!?」


 僕の言葉に、高所が苦手なアニィが悲鳴を上げる。

 怖いなら目を瞑っておいてよ。


 里が豆粒ぐらいの大きさになるまで、僕は家庭菜園の高度を上げた。

 ……よし、これくらいでいいだろう。


 僕は祈るように森を見下ろす。


〈菜園に指定しますか?〉


 きた!

 僕の期待通り、森の一部がちかちかと点滅を始めたのだ。


 さらに僕はその点滅範囲が拡大するように意識する。

 すると見る見るうちに点滅が広がっていき、ついにはそれが森全体の六割にも及んだ。


 おおっ、指定できたぞ。

 さすがにこの広さは難しいかと思っていたけど、大丈夫のようだ。


〈菜園に指定しますか?〉


「お願い!」


 次の瞬間、森の六割が消失した。


「「「は?」」」


 まるで鋏で綺麗に切り取ったかのような長方形の大地には、樹木の一本も生えていない。

 代わりに現れたのはよく耕された土だ。


「これって……」

「うん、僕の家庭菜園」

「つまりこの森ごと菜園にしちゃったってこと!?」


 アニィが目を剥いて言う通り、僕は瘴気に侵されていた部分をすべて、家庭菜園へと変えてしまったのだ。

 あの厄介な瘴気も綺麗さっぱり消え去っている。


 いきなり森が消えてしまったことに、動物や魔物が驚いているのが見えた。

 以前、沼地を菜園に変えたときもそうだったけど、動物や魔物といった生き物はそのまま残るんだよね。

 樹木も生き物なんだけれど、その辺りどう判定されているのかは、よく分からない。


「後は、ここで木を栽培すれば」


 実は樹木の栽培もできるようになっていた。

 マツ、イチョウ、ソテツ、ヒノキ、スギ、クスノキ、ブナ、ヤナギ、ツバキ、カエデ、カツラ、クヌギ……などなど。


「シーファさん、森にどんな木がよく生えていたか分かりますか?」

「う、うん」


 できるだけこの森に生えていた樹木を選んで、それを大量に栽培していく。

 これなら森が大きく変わってしまう心配もないだろう。


 樹木が成長するまでせいぜい数時間なので、すぐに元のそれに似た姿になるはずだ。


「相変わらず出鱈目ね……」

「森ごと家庭菜園にしてしまうなんて……もはや何言ってるか分からないです」

「お兄ちゃん、すごーい」


―――――――――――

 ジオの家庭菜園

  レベル57 97/285

  菜園面積:10501150/∞

  スキル:塀生成 防壁生成 城壁生成 結界生成 ガーディアン生成 メガガーディアン生成 ギガガーディアン生成 菜園隠蔽 菜園間転移 菜園移動 遠隔栽培 自動栽培 収穫物保存 三次元移動 小屋生成 家屋生成

―――――――――――


 今まで501150だった菜園面積が、一気に10501150になった。

 さすがに森の大部分を菜園にしただけのことはある。

 アーセルの街がすっぽり収まってしまうほどの広さだ。


 ていうか、∞ってほんとどういう意味なんだろう?

 まさか、限度がないなんてこと、ないよね……?


 眼下では、森の異変に気づいた里のエルフたちが慌てている。


 あっ、あの性格の悪い長老もいるぞ。

 驚きのあまり腰を抜かしてしまったのか、地面に尻餅を突いているのが見えて、僕は少し留飲を下げた。


 その後、樹木が完全に成長し切るのを確認してから、僕たちは地上へと降り、エルフの里へと戻ったのだった。


少しお待たせしてしまいましたが、書籍の2巻が今月6日に発売されます。

↓にカバーイラストを張り付けていますが、今巻はシーファが目印となっています。


…えー、それでですね、実はコロナの影響もありまして、1巻の売り上げがあまり振るわず。

残念ながら、このままでは2巻で完結となってしまうかもしれません…。

なので、買っていただけるととても嬉しいです。よろしくお願いします。


そしてコミカライズは一体いつ始まるのか。。。

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栽培チートコミカライズ
発売中!!!
― 新着の感想 ―
[一言] 右手がおかしいとあったのでじっくり見てみたら、左手もおかしいね。小さすぎるわ。 というか、胴体がでかすぎるだけか。バランス悪い。
[気になる点] 里が豆粒ほどに見えるほどに高い所から長老が腰を抜かした姿が見えるとは、かなりの視力とみた!
[一言] 1巻を以前に何件か探したんですが、見つからなかったんですよね・・・ それもあるかもしれませんね・・・
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