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第117話 イカゲソ

 ワイドさんを連れ戻すためにやってきたはずのドワーフたちが、ワイドさんの芸術に感化されて弟子入りしてしまった。

 まさにミイラ取りがミイラになる、だ。


「あの様子だとまた変な作品が大量に作られるだろうな……」


 まぁ、素材は幾らでも栽培できるし、菜園のスペースも余っているから、いいんだけどね。

 別に害があるわけでもないし。


 それでもあの作品を見ていると、なんだかとても疲れるんだよね……。

 たぶん精神的な問題だと思うけど。


 そんな状態になりながらも、僕はブラーディアさんの屋敷の様子を見にきていた。

 ……前よりも大きくなっている気がする。


「いらっしゃいませ、ジオ様」


 屋敷内に入ると、専属メイド長のヴァニアさんが出迎えてくれた。

 やっぱり僕が来るのを分かっていたかのようだ。


 だけど今回は、ヴァニアさんの他にも吸血鬼らしい人たちの姿があった。


「えっと……この人たちは?」

「はい。屋敷の使用人たちです。ブラーディア様のお屋敷を適切に管理するには、やはり人手が必要ですので」

「そうですか……」


 ……うん、もう何も言うまい。

 食べ物は十分あるしね。


 それから使用人さんたちが順番に挨拶をしてくれた。

 何人もいるので、全員の名前なんて到底、覚えられない。


 彼らは皆、ブラーディアさんの故郷から、わざわざこの屋敷に務めるためだけにやってきたそうだ。

 どこにあるかは知らないけれど、こんなところまで働きにこさせられるなんて、大変だなぁ……。


「いいえ、あのブラーディア様にお仕えできるなら、どこへでも喜んで伺います!」

「私はブラーディア様の使用人を募集していると聞いて、夫と子供をほっぽり出して応募しました! 採用されて夢のようです!」

「やはりブラーディア様はいつ拝見してもお美しい……」


 ……本人たちが喜んでるならいいか。


 それにしても、ブラーディアさん、吸血鬼たちの間ではかなり有名みたいだ。

 やっぱりかなり高い身分の人なのだろう。


 詳しくは訊かないけど。

 だって今まで雑に扱ってきちゃったし……聞くのが怖い。


 そのブラーディアさんはというと、今日は新しいトマト料理のレシピを考えるのに忙しいらしい。

 最近、トマト料理にハマっているそうだ。


 ……平和でいいね、うん。


 それにしても、あちこちで住人が増えて来ちゃったなぁ。

 僕が望んだわけでもないのに。


 もしかして、ミランダさんのところも――


「なんて、そんなはずないよねぇ」


 やっぱり最初の小屋そのままだった。

 逆に安心する。


 ただ、今日は小屋の中ではなく、外にいた。

 お酒を飲みながら、指先に灯した火で何かを焙っているようだ。

 香ばしい匂いが漂ってくる。


「おう、ジオ」


 今日はまだ比較的酔っていないらしく、僕を見て声をかけてくる。


「何してるんですか?」

「見ての通り、イカゲソを焼いてんだよ。酒のつまみに合うんだよな、これ」

「そうですか……」


 なんというか、独りぼっちでイカを焼いている姿に、すごく哀愁を感じてしまった。


「おい、何だその目は?」

「いえ、気にしないでください。可哀想な人だなぁ、なんて全然思ってないですから」

「思ってるじゃねぇか!」




    ◇ ◇ ◇




 そんなこんなで第二家庭菜園が勝手に賑やかになっていく一方で、僕はシーファさんやセナと一緒に冒険の旅を続けていた。


 と言っても、今はまだランダールの街にいる。

 人手不足で依頼がなかなか消化されておらず、ギルドや、先日のヒドラ討伐でお世話になったロインさんたちから、もうしばらくここで依頼をやっていってほしいと言われているからだ。


「え? あのパーティがいなくなった?」

「そうなんです。数日前から急に消息を絶ってしまいまして」


 そのロインさんから、ちょっと不安になる話を聞いていた。

 どうやらあのルアさんのパーティが、突然、街からいなくなってしまったらしい。


「依頼で遠征してるんじゃないの?」

「いえ、窓口に確認してみても、特にそういった依頼を受けた様子はないそうなんです」

「じゃあ、街を出ていったとか……」

「それならギルドに一声かけていくはずです」

「そこまで律義な連中かしらね」


 ロインさんは心配しているようだけれど、アニィは彼女たちを嫌っていることもあってか、素っ気ない反応だ。


「一つ気になることがありまして」

「気になること?」

「はい。実は彼女たちがいなくなる少し前に、掲示板でこの依頼を見ていたという目撃情報があるんです」

「失踪事件?」


 その依頼の内容は、最近この街で多発している失踪事件の原因を突き止めてほしいというものだった。

 懸賞依頼と呼ばれるタイプで、成果に応じて報酬をもらえるという。


「なるほどね。失踪しているのは若い女性ばかり……もし何者かが誘拐しているのだとすると、自分たちを囮にして犯人を突き止めるつもりだったのかもしれないわね」

「それで逆に拉致された?」

「その可能性はあるわね」


 ロインさんは言う。


「もし君たちが良ければ、協力してこの依頼をやりませんか?」

「つまりわたしたちに囮になれって?」

「はい。他にも何組かのパーティが挑戦している依頼なのですが、今のところまったく成果が上がっていないのです。女装して誘き寄せようとしたりもしているようですが……なぜか効果がないそうで……」


 それは単に女装のクオリティが低いだけでは……?


※最新話は書籍版に合わせる形で書いているため、前後で設定の矛盾等が出る場合があります。ご了承ください。(キャラが変わったりもします)

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― 新着の感想 ―
[一言] デニスくんの出番!!
2020/04/25 17:27 退会済み
管理
[気になる点] 酒のつまみに合うだと、お酒の方がつまみに合っている、と言う意味になり、いかげそ?を表現する言葉としてはふさわしくないかと思います。 合うという言葉を使うなら「お酒に合う」 つまみという…
[一言] ニート製造農園と化してる
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