あ
「あなたは必ず幸せになれる。いつかあなたの周りにはたくさんの人があふれて、笑いが絶えない毎日になるよ。」
君は繰り返し言い聞かせてくれたね。
俺にとってその言葉は唯一の光であり希望だった。
ただ求めれば求めるほど、願えば願うほど、決して届くことのないその光に焦がれて溺れてくんだ。
「結局最後まで叶わなかったなぁ。。」
やっと楽になれる、もう何も望まなくてもすむ。
その安堵感が心地よくて、生まれて初めて満たされた気分の中で男はそっと目を閉じた。
「もっと早く気付けばよかったよ…。
こんなに苦しい思いをしなくてすんだのに。
ほんとはとっくに終わってたのに。」
3歳にして6kg、栄養失調状態、餓死寸前で緊急搬送、病院で少年は祖母に預けられた。
少年の名前は幸一。
幸一の母親はそのまま現実逃避をするように海外へ旅立っていった。
何年かの月日が経ち母親から連絡が入った。
その横にはあまり見慣れない風貌と独特の雰囲気をした男がいた。
それが幸一にとっての初めて父親となる存在だった。
名前は陳曜光。広東人。
陳幸一になる。
小学校に通える年になった幸一にとって陳幸一になることが周りからどんな目でみられるか、どんな扱いをされるかは幼いながらにすぐに想像がつき、できる限り日本に滞在し今までどおり椎名幸一を名乗らせてほしい。
できれば日本の学校に通いたい。
精一杯の希望を伝え日本での生活と香港での生活を交互に送ることで話しは落ち着いた。
陳曜光は優しかった。
父親と子供としての会話はないものの幸一と顔を合わせればこれで好きなものを買えと金を与えた。




