01’-H
メンズ達視線ですー。まずはヒロから。
その日、仕事の終わりが押して、結局連絡を受けてから折り返すまでに2時間が経ってた。
俺と希の共通の友人で、同じ事務所のクマからの悲痛なメッセージを見て、思わず頭痛がしたのは悪くないと思う。
「あーごめん、今終わったー。まだ同じ店?」
『ああ。まじ、ホント今回は今まで以上かも・・・助けてヒロ』
「そんなかー・・・なんかあったかな」
『いや、ただいつもとおんなじ感じで黙々と飲んでて』
「いつもと同じでベロベロ?」
『ピッチと選んでる酒がいつもと違うんだよね・・・あーもう飲むなって!お前はこれ!』
「あーわかったダッシュで行くわ」
『まじ助かるわー。俺明日めっちゃ早いんだわー』
「って、お前ら何時から飲んでるわけ?」
『夕方・・・?』
「はぁ!?おまっ今21時・・・」
思わず絶句して、そりゃベロベロにもなるわなと納得もした。
電話の向こうではまだクマが希にソフトドリンクを飲ませようと必死になってる。
とりあえず、マネージャーに状況を説明しないとまずいよな。
「池谷さんにはこっちから連絡しておくわ。もうちょい頑張れ」
『ヒロが神ー!まじ神ー!』
クマが壊れ始めてるので、運転席のマネージャーに一声かけて、池谷さんに連絡をいれる。
「あー池谷さん?お疲れ様です」
『おお、お疲れ。珍しいな、どうした?希がなんかしたか?』
「恒例の絶賛潰れ中らしくて。今日はクマが生贄」
『ああああだから言ったのに・・・』
「クマ、明日早いらしいから俺バトンタッチして、最悪うち連れてきますから」
『毎度すまんな・・・』
「ちなみに明日の希のスケジュールは?」
『一応調整中なのが1件午後に入ってるけど、午前はオフだ』
「わかりました」
『またなんかあったら連絡してくれ。といっても俺もタク達の方についちゃってるからすぐ動けんが』
「タク達?あれ?現場マネージャーは?」
『時期外れのインフルだってよ』
「うわぁ・・・お疲れ様です」
よろしく頼んだ、と電話を切られ、これはもう腹を括るしかないなと思った。
「澤口さん、俺って明日って何時入りでしたっけ?」
運転席にいる自分のマネージャー澤口さんに声をかける。
「明日?7時入りだね」
「まじかー・・・」
「どうした?希がまた酔っ払ってんのか」
今の話の流れでなんとなく察したのだろう。
毎度恒例になってるのもどうかと思うんだが。
「ええ。もう速攻家連れ帰ろう」
「乗っけてくか?」
「いや、どっちかっていうと、生贄になってるクマを送ってやってほしいです」
「それはいいけど、大丈夫?」
「タクシー捕まえますよ」
「気をつけてな」
ちょうど店の前についた車から降り、店内に入ると、行きつけになってるからか、店員は「いつものお部屋です」とそのまま通してくれた。