食糧確保しました
朝起きたら夢でした、なんてこともなく厳しい現実を目の当たりにしました。
こうなったらもう覚悟を決めて龍としての生を送っていくしかない。
さしあたっての問題は、昨日に引き続き食糧の確保だね。
やっぱりおなかを満たすためには、山頂から降りないといけないよな。
一日経ってみて分かったけど、どうやらここ山頂には、何でか知らないけど魔物たちも来ないらしい。
狩った獲物をここまで持ってきて食べてもいいかもしれない。
とにかく、ここを拠点として生活をしていこう。
よし、それでは…
いくぞ、ほんとにいくぞ。
……一日ぐらい食べなくても平気だよね。
今日はあんまり調子もよくないし、明日から。
うん、ほんとに明日頑張るから。
……
……
……
大丈夫、まだいける。
明日こそ、明日こそは!
……
……
……
今日は、ちょっと天気も悪いしやめておこうかなー
そうだよね、ひと雨来そうだもんね。
慣れない土地での雨は危険だから。
あ、でも山頂なのに雨降るんだ、この山あんまり高くないのかな?それとも異世界だから前の世界の常識でははかれないのかな?あの熊や狼みたいに…
……
……
……
そろそろおなかが…
でもやっぱり怖いし。
明日にしよう!
……
……
……
はっ?!
気がついたら生まれてから一週間近くたってしまった。
限界かもしれない。
旅立つときなのかな。
ぐ~~~~~
うぅ。
仕方ない、いきますか。
いざ出陣!
ギャ~ギャ~、グオー
ギーギー、アオ~ン
めっちゃ多くの魔物の鳴き声がするんだけど。
大丈夫?ほんとに大丈夫なのか?!俺のドラゴンボディ!
早く獲物を見つけて捕まえよう。
できるだけ弱そうなの。
ガラガラッ
何事?!
振り返ると目の前に牙が…って牙?!
慌てて飛び退く。
ガッキン
間一髪飛び退くことができた。
周囲を警戒するように見渡すと、どうやら襲いかかってきたのは狼の魔物のようだった。
獲物を仕留め損なった狼は悔しそうにこちらを見て、うなり声を上げている。
むむむ、不意打ちとは卑怯な。
いや、そんなこといっている場合でもなくてどうしよう、俺の狼のイメージはもうあの熊もどきと戦っていた空中を駆け、縦横無尽に走る規格外の狼なんだけど。
勝てるわけがない。
いやまて、早まるな。
よく見ると、この狼は小さい。
不意打ちを生まれて間もない俺にも躱されるつたない技量、まだ子供の狼なのだろう。
それにあの規格外の狼は真っ白な美しい毛をしていたが、この子狼はくすんだ黄色のようでとても白とはいえない毛並み。
もしかしたら同じ狼でも違う種族なのかもしれない。
たぶんそうだ、いやそうだったらいいなぁ。
けれど、これはチャンスだ。
相手が大人ならともかく、同じ子供同士。
そうなれば、龍が狼に勝てないはずがない!…と思う。
ええい、弱気になるな!
そろそろ何か食べないと餓死してしまう。
あいつは食料だ。
いくぞー
俺の意思をくみ取ったように、子狼が飛びかかってくる。
俺はそれを横にジャンプ!躱して隙のできたところを攻撃しようとも持ったけど、俺の武器って何?! 爪?!牙?!
そんなことを考えているうちに子狼は体制を立て直し、何度も飛びかかってくる。
それを躱す躱す躱す。躱しながらなんとか打開策を探す。
ヒ~~~、どうしよう?こんな小さい爪と牙で倒せるかな~どうしよう、何にも浮かばないよ~
ていうか、さっきから一度も攻撃が当たらないな。
子狼の攻撃遅くない?いや、俺が早いのかな、なんだか体が軽いし思うように動かせる気がするんだけど。
そんなことを考えていたら、相手の攻撃が止まった。
どうやら、自分の攻撃が全然当たらなくて、精神的にも体力的にも参っているようだ。
今だ!
その隙を見逃さずにタックルを仕掛ける。
いけ、ドラゴン!体当たりだ。
ギャン?!
想像以上のスピードで繰り出された攻撃をまともにくらった狼はたまらず地面に倒れ込む。
まだまだぁ、ひっかく!噛みつく!ひっかく!噛みつく!噛みつく!噛みつく!!
俺は何度もこの隙に攻撃を繰り出した。
いつやるの?今でしょ!!
ギャ、ギャン!ギ、グォ、ギャン!ギャ!…
やがて子狼は事切れた。
やったぞ~初勝利!
このドラゴン様に刃向かうなど片腹痛いわ!
ハッハ~
ガタガタッ
ひぃ?!新手?!
なんだ風か、怖かった~。
うん調子に乗りました。
疲れたし新手に遭遇しないように早く獲物を拠点に持って帰って食べよ。
とにもかくにも食料確保、やったね!