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ボーイミーツガール物

サンタの女の子が部屋に突っ込んだ

作者: 海獅子

この作品は、2016年クリスマス記念の作品です。

 冬のある寒い夜。


 鈍く曇る空から、白い物が降っていた。


 寒いはずである、降っている白い物は雪であった。




 「(シャンシャンシャンシャン)」




 そんな、雪が降っている街からは、ジングルベルの鐘の音が聞こえている。


 そう、今日はクリスマスイブなのだ。




 「はあ〜……」




 そんな、街中が浮かれている中。

住宅街にある、とある一軒家の自分の部屋で。

一人、溜め息を()いていた少年が居た。


 少年は、一人寂しくクリスマスイブを過ごしていたのである。


 友人たちは、恋人と二人っきりで過ごしたり。

あるいは、家族と共に過ごしたりといった理由で、全く都合が付かなかった。


 しかも少年の両親も、クリスマスに(かこつ)け夫婦水入らずで旅行へと向かっており。

少年は一人っ子であるので、一人っきりで家に居たのだ。


 少年の両親は、結婚十数年にもなるのに今だにイチャついている。

実の息子でさえ呆れるくらいの、バカップルであった。


 今朝、家から出発する際も。

イチャつきながら玄関を出ていくのを、少年が頭を抱えながら見ていた。



 ・・・



 少年は自分のベッドに腰掛け、窓から見える雪を見ていた。


 少年は、彼女いない歴年齢のモテない男である。


 見た目も悪い訳でもないけど、イマイチ、パッとしない外見なのだった。


 性格も、(おだ)やかで温厚(おんこう)であるが。

この世代の女子は、むしろ、強引で少しくらい乱暴な方が魅力的に見えるので。

少年は同級生の女子からは、全く相手にされてなかった。



 

 「はあ〜……」




 そして、少年は外を見ながら、何回めか分からない溜め息を()く。




 「もう、今日は早く寝ようか」




 そうやって溜め息を吐いた後、ずっと同じ事を繰り返していた少年が。

だんだん虚しくなってきて、ベッドでフテ寝をしようとした。




 「ん?」




 寝ようとして立ち上がりかけた所で。

雪の降る空に、一瞬、”キラリ”と、何か光った。


 目の錯覚かと思い、目を凝らしてもう一度見てみたら。

今度は、黒い物が見えている。


 何かと確認しようと見ていると、その黒い物がドンドンと大きくなって行く。


 そして、その黒い物が、だんだん見える様になるが。

その見えた物が、数匹の、角の有る鹿の様な動物と、背後に大きな物と言う。

余りにも、理解不能な物になっていった。




 「ああっーーーー! ぶつかるーーーー!」




 その物体が凄いスピードのまま、窓へと接近して行く。


 このままでは、部屋へと衝突すると思われた瞬間。




 「(くりんっ)」




 接近した物体が、窓の直前で旋回しながら、イキナリ止まる。




 「きゃーーーーーーーーーっ!」


 「(ガッシャーーーーーーーン!)」




 しかし今度は、赤い物が絶叫しながら、窓を突き破り飛び込んできた。




 ーーーーーーーーーーーー




 赤い物が、少年の目の前に迫ってくる。




 「うわーーーーーーーっ!」




 少年が、眼前に迫る赤い物を、自己防衛本能を発揮させて()けた。




 「(どすんっ!)」


 「痛っ!」




 飛び込んできた赤い物は、少年が居た付近に落ちた。


 落ちた所は、ちょうどベッドの上だったが。

思ったよりも、大きな音を立てて落ちたのである。


 見てみると、その落ちた赤い物は、女の子だった。


 女の子は、赤いミニスカサンタのコスチュームをしていて。

流石に、下は生足ではなく、白いタイツ姿であるが。


 しかも、ナカナカのスタイルのようで。

ボンギュッボンの体のラインが、服の上からでも分かる。


 年の頃は、高校一年生の少年より、少し年上ではないかと思われる。


 だが特徴的なのは、透ける様に白い肌に、長い金髪、青い目の。

明らかに日本人ではない、欧米人の特徴を持っていた。


 その割には顔は、欧米人特有の濃い顔では無く。

むしろ日本人好みの、大きなタレ目が特徴的な顔立ちの、美人であった。




 「イテテテッ。

 もおっ、イキナリ止まらないでよおっ!」




 女の子は、落ちたベッドから起き上がると、右手を握って。

その拳を頭上に振り回しながら、窓の外に向かい文句を言う。


 窓の外を見たら、外には荷物を載せたソリと。

ソリに繋がれた、角を持った動物数頭が、壊れた窓に横付けになっていた。


 しかし、その動物達は、女の子の文句にも我関(われかん)せずで。

(ひずめ)を”カッポ、カッポ”と鳴らしたり、白い鼻息を出しながら首を”ブルブル”と振っていた。




 「ききっ、君は一体、誰?」


 「ん?」




 目の前に起きた、予想も付かない事態に、しばらく固まっていた少年が。

再起動しだすと、自然にそう尋ねる。


 すると、少年の言葉を聞いて。

窓の外に文句を言っていた女の子が、少年の方を振り向く。




 「あ、私は、サンディ。

 サンタクロースなの」


 「さささ、サンタクロース?」




 見ために反して、流暢(りゅうちょう)な日本語を話す女の子の答えを聞いて、少年が混乱した。




 「じょ、冗談だよねえ……」


 「冗談じゃないわよ!

 あれを見ても信じられないの?」




 その答えを聞いた少年が、思わずそう口走ると。

それを聞いた女の子ことサンディが、ムッとした表情で、そう言いながら外を指差した。




 「えっ? えええっーーーー!」




 彼女が指差したソリを見たら。

ソリと、それを引いているトナカイらしき動物が、二階にある窓の外に横付けになっているが。

ソリの下の方を見ると、そこには全く何も無く。

つまり、ソリとトナカイは宙に浮いている状態にあった。




 「で、でも、サンタクロースは、年寄りのはずじゃあ」


 「ああっ、それは組合(ギルド)に所属している家の代表が。

 一家の長老じゃないと、イケナイからだよ」


 「ギルド? 家?」




 目の前に見える光景に、納得しないながらも信じるしかない少年が、疑問を口にすると、サンディがそう答え。

その答えを聞いた少年が、更なる疑問に(おちい)る。




 「うん、うちは、代々サンタクロースの組合(ギルド)に所属する家で。

 お爺ちゃんが代表で、登録しているんだよ」


 「はあ?」


 「だけど、お爺ちゃん一人だと、流石に、この国全員に配れないから。

 一家総出で、配っているの」


 「この国? 一家?」


 「そう、うちの一家は代々、日本を担当しているから。

 だから私も、小さい頃から日本語を勉強していたり、ネットで流行(はや)りもリサーチしてるんだよ」


 「……それで」




 なぜ、見た目が完全な欧米人であるサンディが、日本語がペラペラなのかが分かった。




 「……ごめんなさい」


 「えっ?」


 「こんな風にしちゃって」




 サンディが申し訳なさそうな顔をしながら、壊れた窓を指差す。




 「私が直す事が出来るけど。

 今はまだ、プレゼント配っている最中だから後で良い?」


 「直せるの?」


 「うん、サンタクロースの血を引く者は、色々な魔法が使えるから。

 元々は、プレゼントを配るときに必要に迫られて、使えるようになったのだけどね。

 ほらっ、ガラスを突き破ったのに、怪我してないでしょ」




 そう言ってサンディはその場でターンする。



 言っている通り、サンディの体には傷どころか、服も破れていない。

 

 しかし、ターンする拍子に、ミニスカが捲り上がったが。

下には白タイツを穿いているので、パンチラにはならなかった。


 悲しいかな男の本能で、少年は。

スカートが捲り上がったサンディの、白いタイツに包まれた、大きなお尻をつい見てしまう。




 「残念でした〜♡」




 少年の視線に気付いたサンディが、回転が止まると。

スカートを押さえながら、前かがみになる。


 彼女は、少年より少し低いだけなので。

自然、少年を下から覗き込む形になる。




 「いや、その、あの……」


 「うふふっ、良いんだよ。

 私、日本のギャルゲーをした事があるから。

 男の子がどう言う行動を取るか、何となく分かるよ♡」




 サンディがまるでチェシャ猫の様な、悪戯(いたずら)っぽい表情で、そう言う。




 「ねえ、あなた、名前は何て言うの?」


 「えっ、僕は純太郎(じゅんたろう)と言うんだよ。」


 「へえっ〜、純太郎って言うの、言い辛いからジュンて言うね。

 ……で、ジュン、お願いがあるんだけど……」


 「……何?」




 サンディが前かがみのまま、今度は(すが)り付く様な表情で、お願いする。


 それ聞いた少年こと純太郎が、嫌な予感を感じつつも内容を聞いてみる。




 「イキナリやってきて、迷惑を掛けた上、こんなお願いをするのは図々しいけど……。

 お願い、私を手伝って欲しいの」


 「はい?」


 「早く、今夜中に配り終えないと、間に合わないから。

 それからじゃないと、この割れた窓を直せないのよ〜」




 サンディが胸の前で手を組み、甘えるような視線で、お願いをする。




 「ええっ〜! そんなあ〜」


 「ダメっ?」


 「そんな、急に言われても」


 「あれ〜、私のパンチラを見ようとしたのに〜?」




 そのサンディのお願いに、純太郎が煮え切らないでいたら。

一転して、純太郎をジト目で見ながら、そう言ってきた。




 「そ、そんな」


 「じゃあ〜、手伝ってくれる?」


 「う、うん……」




 半ば脅迫に近い、シンディのお願いに、仕方なく純太郎が返事をする。




 「ホント? ありがとう〜」


 「(ガバッ)」


 「(パフッ)」


 「(えっ?)」




 脅迫の様なお願いをしておきながらも、純太郎が了承すると。

それを聞いたサンディが、感激の余り純太郎の首に抱き付き、頭を自分の胸に引き寄せる。




 「助かったよ〜、本当にありがとう〜」


 「(ギュッ)」


 「(スリスリスリ)」


 「ふ、ふんぐ、うんぐっ〜(ちょ、ちょっと、苦しい〜)」




 純太郎の顔が、サンディの豊かな胸に完全に埋もれる形になるが。

それにも構わず、サンディが純太郎の頭を強く抱きしめつつ、頬ずりをする。


 しかし、彼女が抱き締めれば抱き締めるほど、純太郎の顔が胸に沈んでしまい。

呼吸が困難になって行く。


 こうして、純太郎はしばらくの間、天国のような地獄を味わったのであった。




 ーーーーーーーーーーーーー




 ・・・



 「(ゴーーーーーッ)」


 「(シャンシャンシャンシャン)」




 鈴の音を立てながら、トナカイが引くソリが、雪が降る空を飛んでいる。




 「あれっ? 思ったより全然寒くないよ?」


 「そうだよ、ソリには魔法が掛かっているから。

 冷たい外気や、雪なんかをバリヤーがシャットアウトしてくれるの」




 ソリに乗ったサンディは、前列の中央に(たずな)を握っており。


 そして純太郎は、そのサンディの右隣に座っていた。


 サンディがお願いしていた手伝いとは。




 「ねえ、次はドコの家なの〜」


 「このナビだと、もうすぐなんだけど」




 純太郎は、手にしたタブレットを見ながら、サンディにそう答えた。


 そう、純太郎の手伝いとは。

配る予定の家を、ナビを見ながら指示する事であった。


 サンディが自分でナビを見ても、日本の地理に慣れてない為。

何回か迷ってしまい、ナカナカ(はかど)らなかったそうだ。


 また、ソリの操縦にも慣れてなく。

それで先ほど配る家を間違えた上、慌ててしまい純太郎の部屋に突っ込んでしまった訳である。


 話を続けると、何でもサンディは、今年、サンタデビューしたばかりだそうだ。


 つまり彼女は、全くの新人サンタであった。




 「組合(ギルド)の規定で、17歳にならないとサンタになれないから」




 とサンディが言っていたが。


 それを聞いた純太郎が、




 「(へえ〜、サンディって僕の一歳年上なんだあ)」




 などと思った。


 もう少し有るのかと思ったのだが、以外にも(わず)か一個違いである事に。

純太郎が少し驚く。




 「あ、あそこの家だよ」


 「了解〜」




 そんな事を思いながら純太郎がタブレットを見ていたら、画面が反応し始めた。

画面の指示通りに、純太郎がサンディに合図を送る。




 「(シャンシャンシャンシャン)」




 鈴の音を立てながら、ソリが目的の家へと近付く。




 「今度は、慌てないようにね」


 「分かってるわよ!」




 自分の部屋に突っ込んだ件があるので、純太郎がそう注意したら。

ウンザリした様子で、サンディが返事をする。


 ソリがだんだん目的の家に近付き、二階にある窓にソリを横付けした。


 それからサンディが、ソリの後ろに行き、後ろにある大きな袋を(あさ)る。


 彼女が後ろに行く時、ソリの背もたれを越えようとした際。

短いスカートが捲れ、再び、白い大きなお尻が見えたので。

純太郎の目が、またお尻に行ってしまった。




 「えっ?」



 袋から、ラッピングされたプレゼントを取り出すと、そのまま窓に向かい。

すると次の瞬間、サンディの体が窓を通過した。


 その光景を見た純太郎が、驚きの声を上げる。


 それから数秒して、彼女が戻るが、やはり窓を通過していた。




 「さ、さ、サンディ、窓を通過してるよぉ」


 「ん? ああっ、これはね、サンタの魔法の一つで。

 昔は煙突から侵入していたけど、今は煙突が無いから生まれた魔法なんだぁ」



 純太郎が、サンディを指差しながらそう言うと。

彼女が笑いながら答えた。




 「……だったら、僕の部屋の窓も通過すれば良かったのに」


 「うるさいわね、この魔法は、精神を集中させないとイケナイから。

 突発的な事態が起きても、急に出来ないのよ!」




 サンディの説明を聞いた純太郎が、思わずそう漏らし。

その言葉を聞いたサンディが、逆ギレしてしまった。



 ・・・



 「うわっ! 白くて何にも見えないよー!」


 「だから、しっかりナビをお願いよ、ジュン♡」




 今二人は、北海道の上空を飛んでいる所であるが。

余りの吹雪に、視界がホワイトアウトになり、全く前が見えない。


 その為、自然と文句が出た純太郎であるが。

サンディの方は慣れている様で、お気楽そうに純太郎にお願いする。



 ・・・




 「(ピカッ!)」


 「(ドーーーーーン!)」


 「ひえぇーー! 雷が鳴っているよ〜!」


 「大丈夫、大丈夫、魔法で完全防御されているから、落ちないわよ〜」




 北陸を飛んでいる所で。

冬の日本海名物の、雷が鳴っている所に遭遇(そうぐう)した。


 至近距離に落ちる雷に、純太郎が恐れ(おのの)くが。

魔法を信用しているサンディの方は、全く意に解さなかった。



 ・・・




 「きゃっ、何これ〜、変な物がくっついて来たわよ〜」


 「何か、細かくサラサラしていて火山灰っぽいから。

多分、阿蘇か桜島辺りの火山灰じゃないかな?」




 九州を飛んでいた時、突然、バリヤーに。

何か、土っぽい物がくっ付き出した。


 良く見ると、どうも火山灰ぽいので。

九州で噴煙を上げている、火山が原因だろう。




 「どうするの? サンディ」


 「う〜ん、鬱陶(うっとお)しいけど、時間も無いし。

 このまま行くしかないね」




 まあ時間が無い上、飛び続けても、特に何か問題が有る訳でも無いので。

このまま、飛び続ける事にした。



 ・・・



 それから数時間後。





 「(シャンシャンシャンシャン)」


 「ふう、やっと終わった〜」


 「ありがとう、夜明けまでには間に合ったよ」




 ようやく、プレゼントを全員に配り終えた所で。

純太郎は一息吐()き、サンディは安堵(あんど)の声を上げた。 


 現在ソリは、純太郎の部屋へ向かって飛んでいる所である。




 「はあ、初めてサンタクロースになって、どうなるんだろうと思ったけど。

 ジュンのおかげで、無事に配る事が出来たよ」


 「べ、別に、手伝わないと、修理が出来ないからだろ」




 サンディが、そうやってお礼を言うが、純太郎は、ぶっきらぼうに返す。


 内心では、”脅された”と言う言葉を、飲み込みながらであるが。


 これから約束通り。

サンディが壊した窓を修理するために、純太郎の部屋に戻っている所であった。




 「ねえ、ジュン。

 ジュンは、プレゼントが欲しいなら、何が欲しいの?」


 「どうしたの、急に?」


 「いいから、何が欲しいの?」


 「う〜〜〜ん」

 



 突然、サンディが、そんな事を言い出す。


 疑問に思った純太郎が、理由を聞こうとしたが、更に強く彼女が尋ねてくる。


 そこで純太郎が、考え込む。


 現在の所、特に欲しい物がある訳では無かったけど。

しかし、サンディのおかげで、少なくとも(わび)しいクリスマスイブにだけはならなかったが。

純太郎も、やはり恋人と過したかった訳である。


 しかし、恋人が欲しいかと言われれば、少し違う気がした。


 純太郎の理想は、恋人と言うより。

ギャルゲーで出てくるような、幼なじみが欲しいのである。


 つまり、何の気兼(きが)ねが要らなく、いつも側に居てくれて。

その上イチャイチャ出来る、女の子が欲しいかったのだ。




 「そうだな、側にいつでも居てくれる女の子が欲しいなあ」


 「ん? 側に居れるだけで良いの?」


 「それでいて、いつでもイチャイチャ出来る関係なら……」


 「へえっ〜」




 流石に、もう幼なじみなんて出来る訳でも無いので、純太郎がそう答えると。

純太郎の言葉を聞た途端、サンディの目が細くなった。


 純太郎は気付いてないみたいだが、何かを(たくら)んでいる様な表情である。




 「ねえ、どうしてそんな……、うわっ!」


 「……日の出だあ……」




 理由を聞こうとした純太郎が、突然に目に飛びこんだ光に声を上げ。

続けてサンディが、遠くの水平線を見ながら(つぶや)く。


 雲の切れ間から、ちょうど日の出が見えたのである。




 「……きれい」


 「……うん」




 水平線の向こうで燃える朝日を見て、サンディがそう呟き。

純太郎も、朝日を見ながら返事を返した。




 「ふぁぁぁ〜」


 「(いかん、朝日を見たら、急に眠気が襲ってきた)」




 一晩中すっと神経を使い、ようやく安心して気が緩んだ上、。

夜明けの一番眠気がする時間帯に、目に入った光に(くら)まされた為。

強烈な睡魔が襲ってきたのだ。




 「ジュン、着いたら起こすから、寝てて良いよ〜」


 「(ダメだ、返事をする気力も起こらない)」




 その純太郎のアクビを見た、サンディが気を遣うけど。

余りの眠気に、純太郎は返事をする事も出来なかった。




 「(部屋に着くまで、一眠りするかな)」




 その余りの眠気に負けた純太郎は。

ソリに座ったまま、深い眠りへと落ちて行った。



 ・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・・

 ・・・・・

 ・・・

 ・




 ーーーーーーーーーーーーー




 ・・・



 「うん?」




 純太郎が目を覚ますと、自分の部屋のベッドの上で寝ていた。


 壁に掛けてある時計を見ると、とっくに昼を過ぎている。




 「(なんか変な夢を見たなあ……)」




 壊れているであろう窓を慌てて見るが、別段、普段通りだったので。

純太郎は、自分が体験した事を夢だと断定した。




 「(妙にリアルな夢だったけど、あれ?)」




 そうやって夢だと決め付けていた所で、自分の寝ている布団が変に盛り上がっている気付く。


 しかも、布団の中に何か居るらしく。

質量は有るが重くなく、柔らかい感触で気持ちが良い。


 また、布団の隙間から、甘くて良い匂いもしていた。




 「(えええっ!)」




 嫌な予感がしたので布団を捲ってみると、純太郎の胸の上に、金色の物体が乗っかっていた。




 「ん、んんん」




 そして、その金色の物体が声を出しながら、モゾモゾと動き出す。




 「ふぁあ〜、おはよう、ジュン」


 「さ、さ、サンディ、一体どうしたの?」




 その金色の物体は、サンディの頭であり。

彼女は頭を上げ、寝起きのままの顔で挨拶をしたが。

純太郎の方は、自分の布団に入っているサンディを見て、眠気が一気に醒めた




 「プレゼント」


 「プレゼント?」


 「うん、ジュンは、いつも一緒に居てくれる女の子とイチャイチャしたいって、言ってたよね。

だから、私がプレゼントで来たのよ♡」


 「えええーーーーーーっ!」




 サンディは、まるでプレゼントを配るような気軽さで言ったが。

その言葉に、当の純太郎が驚く。




 「と言うのは、半分冗談で」


 「はあ?」


 「実は私、家の決まりで日本に、留学しないとイケなかったのよ」


 「えっ?」

 

 「サンタとして、日本の習慣とか理解しないとイケナイとかで、前々から決まっていたんだけど。

 どこに行くのかまでは、決めてなかったんだ」


 「と言う事は……」


 「そう、プレゼントに(かこつ)けて、ジュンの所に居そうろ……もといホームステイして、同じ学校に留学しようと思うの」


 「そ、そお……」


 「急いで家に帰って、お爺ちゃんパパママに、ジュンの事をイキナリだけど話したの。

 そうしたら、渋々(しぶしぶ)だけど何とか許可がもらえた♡」


 「……」


 「よし、これで大好きな日本の漫画やアニメが、思う存分見れるぞ〜」


 「ははははっ……」




 何の事は無い。

純太郎は自分がダシに使われた事に、苦笑いをするしかなった。




 「でもね、半分は本当だからね」


 「えっ?」


 「初めて会った時から、優しいジュンの事が気に入っちゃって。

 ジュンとだったら、いつも一緒にいても良いと思ったの。

 だから私は、ジュンのプレゼントになりたいって思ったんだから」


 「サンディ……」




 サンディが照れくさそうに、視線を()らしながら言うのを聞くと。

純太郎は、胸が暖かくなった。




 「ねえジュン、イチャつこうよ〜」


 「ちょっと、サンディ」




 余りにも照れくさいのか、いきなりサンディがそう言って、純太郎の胸板に顔を(うず)めた。




 「ジュン、私をギュッてしながら、頭をナデナデしてちょうだい」




 純太郎の胸板に頬ずりをしつつ、彼女がそう甘える。




 「(ギュッ〜)」


 「(ナデナデナデ)」




 その言葉に答えるように、純太郎はサンディを抱き締めながら、頭を撫でる。




 「ジュン、気持ち良いよお……」




 その純太郎の愛撫に、サンディがトロけるような声を漏らした。


 一方の純太郎も。

彼女の柔らかい身体の感触、滑らかな髪の滑りに、心地よさを感じている。




 「(しかし、父さん母さんに何て言えば良いのかな)」




 だが、頭の中では。

両親が帰った後、サンディの事をどう説明しようか、悩んでいた。




 「(ギュッ)」


 「(ナデナデナデ)」


 「(スリスリスリ)」




 布団の中で純太郎は、サンディの抱き締めながら頭を撫で。

サンディは、純太郎の胸板に頬ずりをする。


 こうして二人は、クリスマスの日。

布団の中で、しばらくの間イチャついていたのであった。






                  サンタの女の子が部屋に突っ込んだ 終わり



詰まらない物ですが、暇つぶしにはなったでしょうか?


それでは、次回作で会いましょう。

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