初めてあった幽霊さん
鳥の鳴き声がとても心地よく聞こえる。
朝が早いと周りの物、音が一段と美しく見えるのは不思議なものだ。
今日俺は珍しく早起きをした。
なぜ早起きしたかというと、今日は私立古賀沼高校の始業式。
新たな学年に上がったのにも関わらず始業式から遅刻というのはなら周りの印象を下げるという最低な行為だからだ。
俺は絶対に去年のように彼女がいない悲しい高校Lifeは送らない!俺はそう健太と誓いあったのを思い出した。
健太とは俺の唯一の友達、大泉健太は俺と同じ非リアつまり、彼女がいない。
しかも彼女いない歴=年齢と言ってとても切ない男なのだ。まぁ俺も彼女いない歴=年齢である。
今年こそはリア充になる!つまり彼女を作る!それが当分の俺と健太の目標である。
いつもより早い時間に家を出て、爽快に自転車を進ませる。
あと少しで学校というところで…。突然の豪雨。制服も荷物もビチョビチョだ。
今朝の新聞には一日中晴れと書いてあったのに…。俺はなんてついていなんだろう。
俺は長いため息をつき、自転車を漕ぎ始めた。
この日から櫻井良太の日常が一気に変わることをまだ彼は知らない…。
一章
最悪だ。最悪最悪最悪。俺は頭を抱え、校舎の前で立ち尽くした。
俺がここまで落ち込んでいる理由は、
家の時計、腕時計、俺の近くにある時計が全て一時間以上ずれていた。
七時半から始業式なのに、学校の時計は八時を指し、俺の時計は六時五十六分を指している。
はぁ!?まじでふざけんなよ!?
俺は半泣き状態で自転車の前輪に八つ当たりしているとプシューという音が聞こえた。
え?俺は自転車の前輪を見た、なんとついていないことだろう前輪の空気が全くと言っていいほど残っていなかった。
……もう嫌だ。泣きたい。
俺はしょぼんとしながら学校の中に入っていった。
駐輪場に自転車を止め、クラスへと向かう。
だが俺が去年使っていた、一年三組の教室は新しい新入生が使っていた。
俺は途方に暮れた。今頃体育館でクラス発表をしている頃だろう。悲しいことに体育館に入ろうとしても先生達が待ち受けている。
俺は自分の所属している陸上部の部室で時間を潰そうと部室へと行くことにした。もし、先生に見つかったら、みんなの前で叱られる。
それは俺の黄金の高校Lifeが終わることを示している
それのせいで彼女が出来ないのは嫌だ!
それは絶対に嫌だ!!そんなことを考えながら俺は全力で走った。
陸上の大会でも、出したことがない速さだった。
俺は恋のためだったら何でもできるんだなぁと改めて関心した。
そして大急ぎで部室のドアを開け、乱暴にドアを閉め鍵をかけた。
「はぁ、 はぁ…。ん?」なにか変わったような気がする。
俺は部室の中をキョロキョロと見渡した。
かわりのない畳、俺の定位置のソファー、あちこちに散らかっている本。脱ぎ捨ての靴。変わりようのないように見えるが、どれもこれも片付けの途中のようだった。
「気が利く人もいるんだな。」
俺はそう言うとソファーに腰をかけた。
俺はしばらく座っていたが、
ついうとうとしてしまった。
すると耳元でふっと生暖かい息がかかった。
「うわぁ!?」
俺はソファーから転がり落ちた。
その時『ピキッ』と、とても鈍い音が部室中に響き渡った。
「腰がぁあぁあー!」
俺が地面で腰を両手で抑えながらゴロゴロしているとソファーの後ろからうちの高校の紺色のブレザーを着ている女子がひょこっと顔が出しているではないか。
くっそ!!なんでこんなについてないんだ。
しかも誰だよあいつ。あんなやつここの学校にいたっけか?!
「さっきまで私がいたところでグーグー寝てるから悪いですよ。」
黒髪で三つ編みの女の子はいきなり俺に向かって無愛想な顔をしてそう言ってきた。
「お前!こんな高さだけど意外と痛いんだぞ!!」
俺はむくっと立ち上がり、彼女に近づいた。
あと少しで手が届く近さまで来た時に俺はある違和感に気づいた。
「あれ、お前足…?」
俺は目を両手でゴシゴシした後彼女の体を眺めた。
「なにまじまじ見てるですか。とても気持ち悪いです、一回舌切って死んでください。」
彼女の言葉には全く意思がこもっていなかった。それがとても怖く聞こえたのは気のせいだろうか。
俺は言い返そうと思ったが、言葉が出てこなかった。
てか、出てこない。
俺の思想は完全にストップした、というかしない方がおかしい。
「君は幽霊なのか?」
「はい、私は幽霊です。そしてこの陸上部の幽霊部員です。」
は???何を言っているんだ、こいつは。
俺はポカンっと口を開け彼女を見つめ続けた。
「ぁ、自己紹介が遅れました。私は宮森優子去年の夏に死にました。享年十七歳です。」
うぉ?!こいつ軽々しくえげつねぇこと言ってる。と内心俺はすごく思った。
「じゃぁ俺も自己紹介した方がいいかな。」
「俺は櫻井良太十六歳。陸上部の部員で今年から2年生なる。よろしく…!」
俺は笑顔で優子と握手しようと手を差し伸べたが、優子は手を出さなかった。
しかも真顔で物を見る目で見てきたのだ。
ひどい、ひどすぎる。いくら馴れ馴れしいからと言ってそれはないだろう。
やはり俺は女の子と一生仲良くなれないのかもな…。
いや、諦めてたまるか!俺は絶対にリア充への階段を登るんだ!
「何をブツブツと独り言を言ってるですか。」
またまた優子が感情が全く入っていない声で言ってきた。
「お前…意外とひどいんだな。」
「私の話が話している途中あなたが吐き気がすることを言ってるからです。」
「ねぇ?!俺だから大丈夫だけどか他の人だったら泣いてるよぉ!?」
俺は半泣き状態であり、もう俺の心はズタボロに崩壊していた。
「くだらない話していないで私の話に戻るですよ。」
くだらない話…。
っふ、言ったからな。絶対にいつか見返してやる。
俺がまたブツブツと一人でつぶやいていると優子が空中にふわふわと浮き始めた。
「本題です。最近あなたはついてないことばかりじゃないですか?」
優子はそう聞いてきた。
ドキンッ!と俺の心臓の音が高まった。
「なんでわかったんだ?!」
俺の声は思ったより大きかったらしく優子は耳を両手で抑えていた。
「あ、悪いうるさかったか。」
俺はソファーに腰をかけた。
「いえ、気にしないでください。大丈夫です。」
優子は耳から手を離し、ポケットから何かしらのお手頃サイズの白い機械を取り出した。
「突然ですがあなたは、明日死ぬんです。」
……………。今日俺の思考は何回ストップしたのであろう。
しかもこいつは一体何を言っている。俺が明日死ぬ?そんなわけないだろう。
「この機械には今の世の中にいる全ての人の寿命がわかります。」
優子は俺の目の前まで機械を持ってきて、モニターを見せてきた。
『櫻井良太 享年十六歳 四月八日死亡』
「四月八日…あしたじゃん?!」
「はい、明日です。なので私があなたの運命を変えてあげます。」
優子はフワフワと体を浮かせて俺に近づいてきた。
やはり、足がない。正真正銘の幽霊なんだ…。
俺は動揺している心を落ち着かせながら深呼吸した。
「あなたの死因は…。」
俺はゴクッと息を飲んだ。
「わかりません。」
「え…?わからないのかよ!!?」
「てぺぺろ。」
やばい、可愛い…。俺は自分でも頬が赤くなっているのがわかった。
「か、かわいい…じゃなーい!」
俺は部室中をゴロゴロと転がり回った。
「あなたの死因がわからないとゆーのは嘘です。」
「え。っておーい!ふざけんなよー!」
「俺がどんな気持ちだったかわかるか!」
俺は半泣き状態で優子の襟を掴もうとしたが掴めなかった。
「あなたは私に触れない。」
俺は一瞬悲しそうな顔をしたように見えた。
「さて本題に戻ります。あなたは交通事故で死ぬんです。」
「それも幽霊絡み。だから最近あなたはついてないことが多いんです。」
「なるほど。まさか、俺に恋人ができないのも幽霊のせいなのか!?」
俺は目をキラキラ輝かせながら優子に聞いた。
「いえ、それは単にあなたがモテないだけです。」
グサッ。グサッ。グサッ。
俺の心に次々と矢が刺さってくる音が聞こえた。
「お前、案外ひどいのな。」
俺はもう泣く寸前まできていた。目はもう真っ赤だ。
「とにかく今日はもう帰った方がいいです。」
「え?なんで?」
俺は袖で目をゴシゴシと拭いた。
「少し良くない気がこの学校に感じられます。」
「なので、これから私が一緒に行動を共にします。」
優子が真面目な顔で言ってきた。
「嘘だろ…。いつでもどこでもか?」
「はい。いつでもどこでもです。」
「その代わり私が守ってあげます。」
「本当だな?」
「嘘です。」
「え!?お前どっちだよ!」
こいつ、、殴ってやりてぇ。プルプルと拳が震えていた。
「それも嘘です。私がきちんと守ってあげます。」
優子が笑った。初めて笑った。
俺はその顔を見て今までの感情が吹き飛んだ。
「まぁとりあえず今日は帰りましょう。」
「そうだな。始業式も終わったことだし。」
俺はパンクした自転車を引きずりながら優子と一緒に学校を後にした。
初めて書いたものなので、下手くそですが、読んでくれると嬉しいです!