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草原 竜の章 第4話 倶楽部

―――PM3:25―――

―――私立新海南高等学校・文化煉1階―――

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「着いたよ〜」


 火鳥茜を先頭にどうやら「クラブ室」に到着したようだ。その扉の前に張り紙で「不思議研究

倶楽部」と書かれていた。


「ふしぎけんきゅう?」


「そそ」


 茜は簡単に答えて扉をゆっくり開けて中へ入っていった。



「ぶちょ〜いる〜?」


「ども」


「はぁ〜いカイドーせんぱぁい☆」


 中に入るとすぐに背の低い丸テーブルがあった。そこに―


「やぁ、火鳥君。それに保科君も。…おや? 最後の君は侵入部員かい? それとも新入部員かい?」


「はっ?」


 とてものんびりした感じの長身の男が座っていた。座っているので分かりにくいが座高は高いのでそうだろう。意味不明な事を言った彼は手元にメモ帳を一枚取り出して「新入」と「侵入」という文字を書いて竜に見せてきた。


「あ…ああ。成り行きで来てんけど…よろしゅう。えっとアンタが部長さんなんか?」


「失礼。自己紹介が遅れたね。僕は海洞カイドウ 風未フミ3年B組だ。このフシケンの部長と生徒会会計補佐もしているので宜しく」


「フミちゃんやな。俺は草原 竜。2年C組。今日転校してきたばっかりやから色々とよろしゅ」


「後、下の名前は嫌いだから呼ばないで欲しいのだが、いいかな?」


「?なんでや?可愛い名前やんか?」


「りゅ…竜くん…あの…」


 茜が遠慮がちに竜の袖を引っ張ってくる。その視線で「やめたほうがいいよ」と語っている。海洞は右手をテーブルの下の降ろしたが、その腕が震えているのが見えた。


「ん…。いや堪忍してや。悪戯に気分悪くさせるつもりは無いんや」


「ほう。物分りと頭の回転が速いのだね。君は」


 一瞬前まで険しい顔だった海洞はまた表情を柔らかくさせて、下げていた右手からコトンとテーブルに何かを置いた。


「ナイフ?」


 刃渡り15Cm、肉厚5Cm程の小振りなナイフがテーブルに置かれて場が一瞬緊張する。


「危ないよ部長…」


「大丈夫ですよ。頚動脈を切るつもりだっただけですから」


「ホンマ危ないな!?アンタ!」


 表情を変えずに恐ろしい事を言う不思議研究倶楽部部長は、ナイフを制服を開いて内ポケットに締まった。後で聞いたがこれは攻撃用というよりは暴行を受けた時の防御…護身用らしい。


「何にしろ。ようこそ。草原 竜君。先程の話では転校初日という事だから我が部の事を簡単に説明させて貰おうか」


「あ、ああ。よろしゅう頼むで」


「まず…、名前から分かる様に不思議な事を研究する部だ。不思議な事というのは超常現象や、難事件、日頃から真実の分からなかった古典的な謎何かを好きに調べて公表しようという部活だ」


「だから私達新聞部と連携しているのよ」


 と、保科も続ける。


「はぁ。難事件とか古典的な謎って言うのは何となく分からんでも無いですけど…。超常現象なんてしょっちゅうあるもんでもあらへんでしょ?そんなんでやる事あるんですか?」


 一応上級生という事で今更敬語(?)を使う事を思い出した。


 超常現象というのは霊等も含まれるのだろうが、常識で考えればそんな物は存在しない。


 それを聞いて茜が「あのね」と微笑みながら肩を叩いてくる。


「私あるよ〜1.2回」


「さ…さよか。そうやんなぁ〜一生に1回あるか無いかで、しかもそれは疲れてて幻を見たとか

そういうのやし…」


 高速道路等で見る幽霊等も疲れ目から見えてしまうと何かの本で読んだ事を思い出して、竜はそう口にしたのだが…。


「一生?ううん。一ヶ月に1.2回だよ?」


「はぁっ!?」


 単純に計算して一年に12回、人生80年として最低960回そんな事がある事になる。


「特にこの前の廊下に走る血だらけの女の人にはビックリしたよ〜」


「火鳥君それはもう解決済みだよ」


「えっ?」


「その真相は、化学実験をしていた女生徒が水素を爆発させてしまって痛みで疾走していたという事らしい」


「あや〜危ないねぇ〜」


「危ないねぇ〜って単なる事故やん!? 超常現象違うし」


「逆にそういう真相が全く分からないような事件は超常現象と呼べるんだよ。何も霊魂を信じているわけじゃない。一度会ってみたいがね」


 悪ぶる様子も無く笑って語る部長を睨みつけて叫ぶと、冷静に返答が帰ってくる。


「ええ〜?部長それは違いますよ!幽霊は存在しているんですよ〜。今ここにもそこにもあそこにも!エロイムエッサイムエロイムエッサイム我は求め訴えたり〜って」


 謎の呪文を唱えながら火鳥は熱弁を始めた。彼女はどうやら超常現象信者のようだ。


「良く疲れからや、変な薬で幻覚が見えたとか、地盤が傾いていて家具が勝手に動いたとかしょうもない理由でお茶を濁してしまいますけど、本当に霊が動かしていないと証明出来ないんですよ? 世界各国に残るそういう伝記はどういう事ですか? ヴラドと呼ばれた吸血鬼や、中国のキョンシー、日本には妖怪がとても多く跋扈しているでしょう? 少し昔でも人面犬なんてのも噂になりましたよね? それらがただの見間違いにしては目撃情報や文献が多すぎると思いませんか?」


「私としてはアカネの言う事に賛成します。私自身物を書く人間なので分かりますが、無駄な事を書物に残す労力をする必要性からして、霊魂の存在は完全に否定して良いとは思えません」


 女性二人はそう熱く語るのだが、この部長は眉一つ動かさずに静かに笑って耳の少し上に手を当てて。


「逆に言えば、必要だから書物に残したんだよ。 例えば、某国の宇宙人目撃証言の話等は政府の情報操作だとも聞きくし。 吸血鬼は「早まった埋葬」をしてしまった死者が墓を抜け出して血を吸いにやってくるというのが始まりだけど、これは「早まった埋葬」への罪悪感から来ていると考えられないかい? しかもこの時の怯えた村人達―聖職者、医師、法律家―は武器を携えて吸血鬼と思われる墓を暴き、その死体の心臓に杭を打ち込んだり、斧で頭を胴体から刎ねる。これが当時の仕来りとして残っているらしいと本で読んだ事がある。 それにこの「早まった埋葬」には恐ろしい事に近代までごくありふれた現象だったと言うんだからね。 1980年の初め、パリで駐車場を作るために一八世紀の墓を掘り起こしたところ、墓の3つに1つが「生者」が棺桶から脱出しようと苦闘した跡が残っていたらしい」


「うわっ…」


「本当の話ですか?」


「もちろんだよ。日本でも似たような話があるけど、それは置いといて…。 後、吸血鬼についてはオカルト作家のデニス・ホィートレー氏がこんな説を言っているよ。いいかい? 浮浪者は気象条件が厳しい折りには、墓の中に居場所を求めた―」


「わざわざ墓を掘り起こしたんですかぁ?」


「たぶんね。ええと、それで…」


 海洞は思い出す為に頭の横を抑えながら続けた。癖らしい。


「多くの吸血鬼伝説はここに出所が求められる。痩せさらばえた酷い身なりのこの連中を見て、村人達は怯え、これこそ吸血鬼に違い無い…と早合点した。って言っている。後、何も迷信深い農民達だけが吸血鬼の存在を唱えたわけじゃないよ。人体にはまだまだ現代医学では解明されない事が一杯あるからね。身体の中に聖傷があったりとか、治癒の効力がある香ばしい油が抽出されたりとか、腐敗が早まるような形で埋葬した死体が全く腐敗しなかったりとかね。その「腐敗しない死体」が吸血鬼に間違えられたというわけさ」


「はぁ〜。吸血鬼ゆーよりゾンビみたいやけど…博識やな。流石部長してるだけあるわ」


 素直に感心して竜は賛美を贈るが、部長はそれを遮って人差し指を横に振った。


「そんな事より、私が言いたいのは間違えた知識を持つとそんな間違って殺された人達が浮かばれないと言う事ですよ」


「その発言は幽霊を肯定してません?」


 部長が語るのを神妙に聞いていた茜はその言葉を聞いた瞬間、鬼の首を取ったように微笑んだ。


 ―しかし、亀の甲より年の甲というか、部長は振っていた指を火鳥に向けて。


「さっき言ったけど日本にも似たような話があると言っただろう? そういう信心は無意識に我々にも植え付けられているという事を示したのだよ。火鳥君は鬼ごっこを遊んだ事があるだろう?」


「え?…ええ、もちろん…それが―」


 何か?と聞き返す前に部長が話し出す。


「あれも鬼と呼ばれた人達の悲惨な事を示しているんだよ。詳しくは自分で調べてみると良い。最近ではミステリー小説で詳しく書かれている物もあるから火鳥君にも簡単に調べられるよ」


「はぁ〜い…。部長負けず嫌いで困りますけど一応見ときますね」


 と皮肉を交えて答える茜。


「…で、結局何すんねん?」


 いきなり吸血鬼の事等を詳しく語られても、部活動の趣旨を分かりかねてしまう。竜には急に座談会を始めた不思議研究倶楽部部員達を交互に見てそれを伝える。


「実践で示したのだよ? こういう不思議な事を討論したり、公表する為に記事を書いたり、記事にする為に色々調べたりするのが主な仕事かな。まあ、深く考えずにお茶でも飲んでまったりと語るという事だけでも構わないよ」


 そう言うと部長は立ち上がり、部屋の奥にある冷蔵庫から缶にはいった緑茶を4つ持って戻ってくる。良く見ると、冷蔵庫の他にもテレビやビデオやMDコンポ、扇風機に温風機、電子レンジに炊飯ジャーや食器、本棚にはオカルトの怪しい参考文献だけでなく漫画や写真集もある。今座っている丸テーブルも冬場はコタツになるそうだ。大体広さ7.8畳の部屋なのでそれだけの物があると少し狭く感じてしまう。


「住み込めそうやな…」


 部長に渡されたお茶の缶のプルタブを開けて、一口飲んでから竜は溜め息混じりに呟いた。それを聞いて部長が恐ろしい事を言う。


「泊り込みで調べ物をする事もあるからには最低限の物を置いてあるんだよ」


「泊り込みまでするんかい…」


「面白いでしょう〜? 私も正直最初はアホっぽいかと思ったんだけど、こうやって内面を知ると結構本格的なのが分かったのよ〜。それに頻繁に活動してくれるからウチの記事には困らないってワケ☆」


 保科が来ている理由を簡単に答えると、まるでビールでも飲む様に手に持ったお茶の缶をぐいっと一気に空けた。


「要するにオカルト研究会かいな。それでも月に1.2回の頻度で起こる事件ってのも常識や無いな」


「この辺りがパワースポットになっていて霊とかが集まるんだよ〜。そういうのを見て「裸電球舐めまわし」なんて事する困った人も出来ちゃうわけ」


「もちろんよ。さっきのお昼の質問も、私が変なんじゃなくて周りが変な人多いからそれも常識となってるからよ。流石に地元じゃない人は普通みたいで安心したわ」


 恐ろしい事を言う女性二人。


「な…なんやねんそれ…」


「補足して置けば、そんな「変態」の目撃件数は決して多い事は無いのだが…。彼女達は運命的に遭遇率が高いようだね」


「そうですね。僕が調べた内では先月は5件。今月はまだ0件ですから少ないと思いますよ」


 何処か少年の様な高い声で喋る声が後ろの扉からしたので振り返ると、背の低い眼鏡の少年が立っていた。


「お、小山君おはよう」


「おはよう御座います部長。それに火鳥さん。保科さんいらっしゃい。…最後は…誰ですか?」


 小山と呼ばれた少年は一通り挨拶しながら部長の後ろに回って正座した。


「?なんでそないなトコに座っとんねん?顔見えへんで?」


「え…いや…えっと、う」


 部長の後ろで喋っているのでまるで、部長が喋っているように見えてしまって可笑しい。後ろの小山を庇うように部長は苦笑しながら。


「彼は人見知りが激しくてね。今日の所は勘弁してやってほしい。じきに慣れるだろうからね」


「まぁ、よろしゅう少年」


 1歳違いだが竜は見た目で「少年」と呼ぶ事に決めた。


「あ…はい。宜しくお願いします」


 ボソボソと恥かしそうに答える少年は、そう言うと部長の後ろから顔を出してくれた。


「まあ、これで顔見せ終わったんやな。確か部員は4人ゆうてたやろ?初心者やから分からん事ばっかりやと思うけど堪忍したってな――」


「ちょっとまったぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「!?」


 竜が言い終わるかどうかで狭い部屋に雷鳴のような声が響き渡った。同時に入り口のドアがガン!と乱暴に開かれる。


「俺を忘れてもらっちゃぁこまるぜ!」


 そう言いながら親指で自分を指して、大声で名乗る男子生徒が一人立っていた。


「なんやねんコイツ…」


 見た印象は中肉中背の普通の男だが、鋭い目をキラリと光らせた鷹のような印象を受けた。学ランのボタンは全部外されており、中には「ガンホ!」と筆文字で大きく書かれたTシャツ一枚。元気一杯である。


「誰ですか?」


 それを見て小山少年はまた部長の後に隠れてしまう。それを見て元気な男はへっ!と笑う。


「誰でしたっけね?」


 部長が笑いながら言っている。顔見知りのようでからかっているのだろうか?


「誰だったかしらねぇ」


 保科も部長に倣って笑っている。二人を睨みながら拳をワナワナと震えさせている元気男。


「だ〜れ?」


 茜は…天然であるようだ。しかし―


「あ…茜ちゃんまで…」


 そこでダメージを受けて崩れ落ちる暴発男。


「なんや?誰も知らんのかい。部長、侵入部員みたいやで?」


 笑いながら竜が言うと、先行自爆男は一気に復活して竜に歩み寄ると、その胸倉を掴んで


「なんだオマエは! 気に入らねえなっ!」


 イキナリ殴りかかろうとしてきた。


「ちょっと田代君。乱暴は―」


 男は田代というらしい。それを横に聞きながら竜は目で彼の拳だけを見ていた。


「おらぅっ!」


 気合一発。田代の拳は竜の頬を思いっきり―


「おそっ」


 ゴォンッ!


 ―殴るつもりだった様だが寸での所でかわした。田代にとって必殺の一撃だったのだろう。その攻撃の反動でそのままテーブルに突っ込んでしまった。


「きゃあ!」


 火鳥の悲鳴。派手は音はテーブルにぶつかった音。木製のテーブルが割れそうな勢いで、そのまま倒してしまって置いてあったお茶の缶が2つ転がった。そのまま田代はのびてしまった。


「なんや。自爆しよったで?おもろいな田代ちゃん♪ 不良なんコイツ?」


 こういう事に昔から慣れ親しんでいた―主に母親の絶対的な力等で―竜にとって、田代の攻撃は赤子同然だった。それを面白い玩具を見つけたかの如く眺めて部長に向き直る。


「あ、ああ。素行不良で良く問題を起こしている生徒だが…。草原君大丈夫かい?」


 テーブルを戻して、田代を脇に退けながら部長は雑巾を探していた。聞かれて座りなおした。


「ああ。大丈夫ですわ。カスリもせーへん」


「しっかし惜しいなぁ〜。図らずも『転校生!初バトル!オマエは炎の転〇生か!?必殺技は国電パ〇チ?』が実現したのに…。一発KOじゃ面白くもなんとも無いわ」


 田代を解放もせずに、保科は薄情な事をサラッと謎の言葉を言ってのける。横で火鳥は田代に雑巾で頭を冷やしてあげているのに。勿論、こぼれたお茶を拭いた雑巾のようだ。


「つめたっ!」


 それで目を覚ました田代は火鳥と目があって表情を歪ませたと思うと、その手を掴んだ。


「え?なあに?」


「茜ちゃん!やっぱり君は優しい良い娘だなぁ。介抱してくれたんだね」


 お茶の染みた雑巾とは知らず感動した声で田代はそういうと、竜を睨んで吠えた。


「てめえ…よくもやってくれたな!」


「…なんもしとらへんやないか……自爆やろ?」


 呆れた声で返したが、それに余計に激昂してしまったらしく、茜を押しのけて竜に対峙してきた。


「う…うるさい! 手加減して外してやったが今度は容赦しねえ!勝負だ!」


 熱い男である。


「なんやねんな〜メンドクサイなぁ。大体部外者やろ?はよ散れや」


「誰が部外者だ!部外者はオマエと保科だ!オレの聖域荒らすんじゃ―」


「あーケースケひどーい」


「はいはい。田代君そこまで」


 またも掴みかかろうとした田代の手を部長が止めた。


「ふざけてしまってすいません。草原君。彼はウチの部員の一人ですよ」


「は?」


 言われて竜は田代を上から下までもう一度確認した。外見は学生服なので竜達のそれと変わらないが、着崩していて廊下で教師に会えば注意されそうな感じである。体つきも部長や小山のような文科系のようでは無く、しっかりとした…いや、少しがっしりしている。気づかなかったが顔は結構格好良い方かもしれない。ただ―


「性格悪いな」


「っんだと!?」


 不良元気少年。そんな一言ですませれてしまいそうだった。


「ホンマにコイツが部員? 役立つんかいな? 空手部とかやったらええけど、どーみても文化の薫りせーへんでコレから」


「人の事「コレ」扱いするなこらぁ!」


「ええ、残念ながら」


「残念ってブチョーっ!?」


 とりあえず打てば響く―用法違うが―ような性格で退屈はしないかもしれない。


「とりあえず。これで全員揃ったようだね。彼は田代タシロ 蛍助ケイスケ君だ。主に力仕事をしてもらっているが、列記とした部員の一人だよ」


「あ。ああ、田代蛍助16歳二年C組だ」


 部長は爽やかな笑顔で田代を見ただけなのだが、それだけで一瞬で彼は静かになった。竜の知らない主従関係が出来上がっているようだ。


「てゆーか同じクラスやん!?」


「うんうん。私と竜君と一緒だよ。あれ?そーいえば今日見てなかったね。けいすけ今日どうしたの?」


「え、ええっ!えとちょ…ちょっとお腹の調子が悪かったので今来た所なんです茜ちゃん!」


 顔を赤くしてとても怪しい言い訳をしているが、竜も関西の学校の時はあまり優等生では無かったので分かるが、ただ寝てたとか遊んでいただけだろうと確信した。ただ、この田代の態度も何故かすぐに理由が分かった。いや、誰でも分かる。


「ええー大丈夫なのけいすけぇ?」


 ここに一人分かって無い人間が居るが。


「あ…ああ、全然大丈夫!ほらこの通り!」


 と両手をブンブンと振り回したものだからその腕が竜の胸に当たってしまった。


「いったぁ! なにすんねん!」


 実際は少しも痛くなかったが、狭い部屋で暴れている彼に苛立っていたのでつい語気が強くなってしまった。


「お?おお悪い。オレ手長いから」


「あーなるほど。さっきそのながぁぁい手が当たらんかったんや。運良かったんやなぁ。よかったよかった」


「あん!?もっぺんいってみろ!」


「なんぼでも言うたるわ。このヘタレ」


「へ…へたれ?! 貴様ぁ許さん!」


「ちょ…またですか貴方達…」



 そんなこんなでこの部には馬鹿が一匹居るようで、これからの学園生活に不安が混じってしまったわけだ。


 それから彼等の事や部の事や、保科の新聞部の詳しい活動についての説明等がされた。


 そうしている内に日は落ちて、小山少年が買ってきたジュースにアルコール入りが混じっていたりしたりして何故か宴会のようになってしまった。


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