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二次創作系

僕が死んだら料理するのはできない!

作者: 影都 千虎

「へぇ、『Another World Online』にもイベントなんて出るんだね」

「そうみたいですね。毎日がイベントみたいなことしてるからあんまり新鮮さはありませんけど……」

 町全体がそれっぽい空気になってて驚いたんだけど、それよりもリンドウちゃんの発言と遠い目の方が僕にとっては驚きかな。どうしてそんな目で見るんだろう。しかも「犯人は貴方です」とでも言いたげな視線まで送られちゃってるんだけど、ルーチンワークみたいな日々を送るよりは刺激的な毎日を送りたいって思う方が普通なんじゃないかな? 僕はそれを実行してみてるだけだし。

「『収穫祭』みたいですね。外に出ると普段とは違うドロップが出るみたいですよ。……あ! リンゴ型モンスターとかいるみたいです」

 リンドウちゃんの顔がちょっと嬉々としてる。調合に使えそうなドロップが多いのと、新しいポーションが作れそうなのが主な要因かな? しかも、この期間だけ調合系スキルの経験値上昇率アップなんてついてるし、なんだか太っ腹すぎて怖いくらいだね。裏がなきゃいいんだけど。

 まあ、裏があったとしてもこういうのは積極的に参加してくんだけどね。ってことでクロと老師に働いてもらおうかな。あとスミスさんに声をかけておけば完璧だね。きっとあの人はこの手のイベントは不眠不休で参加したいだろうし。

「そうと決まればしゅっぱーつ!!」


 ということで僕たちは近くの草原に来てみた。なるほど、確かに普段見慣れないモンスターがいるね。顔のついたリンゴの集団が謎の声を発しながらこっちに向かってくる図はある意味恐怖なんだけど……まあ、狩れば問題ないよね。

「クロ、老師、あのリンゴ集団を一先ず狩り尽くしてドロップゲットするよ」

「おう……あのビジュアルには触れないんだな」

「キモいと思ったら見る前に潰せばいいんだよ」

 僕が指示を出し終わると同時に「ッシャア! 任せろ!」とリンゴ集団へ突っ込んでいった老師を指差して言った。うん、ああいうのはじっくり見る前に倒しちゃえばいいと思うんだよね。あの黒くて丸い虚ろな目とかずっと見てたら絶対にいろんな意味でこっちが折れると思うんだ。

 グシャアッと派手につぶれる音がして、一体。また一体とリンゴが倒されていく。というかこれは完全に砕かれてるね!? この状態からのドロップは色々と厳しいんじゃないかなぁ……。

「老師! もうちょっと丁寧に倒せないかな?」

 返事はない。ただのリンゴ粉砕マシーンと化してしまったようだ。うーん、これだと収穫祭の意味がないんだよね。

「こうなったらやむを得ないね。リンドウちゃん、ちょっとキツいの投げちゃって」

「えっ……えっ!? 戦闘中ですよ?」

「んー、大丈夫だよ。リンゴ自体のレベルは低いし、むしろ収穫するにあたって老師は足手まといってことがわかったからね」

 流石にここら一帯のリンゴを狩り尽くされたら他を探すのが面倒だしね。ドロップのために倒し方を試行錯誤しなきゃいけないんだし。

「え、えーと……ごめんなさいっ」

 困り果てた末、老師に黄色っぽい液体を【投薬】するリンドウちゃん。直ぐに効果が表れて、老師が倒れたまま動かなくなったのは、僕が指示したこととはいえ軽く恐怖だね。一瞬で相手の意識を刈り取る睡眠薬なんていつ作ったんだろう?

 さて、老師が眠ってくれたことでここから試行錯誤しながらの狩りができるね。クロはとっくにドロップができないことに気付いて色々やってたみたいだけど、持ち武器がハンマーだから厳しいみたいだね。ってことはつまり、僕がナイフで刺すのが一番なのかな?

「……っていっても乱発できないのが苦しいところだよね」

 どうやら試行錯誤するまでもなかったみたいで、ナイフを刺したら簡単に倒せたしリンゴが丸々手に入った。刺しちゃえばどうとでもなるみたいだね。もしかしたらリンドウちゃんの【投薬】で異常状態にするのもアリかな?

「あ、あの、ユーレイさん。新薬が出来たんですけど、試飲してみませんか?」

「んー、クロに【投薬】しちゃっていいよー」

「あっ、わかりました」

 言ってみる前にリンドウちゃんから提案があったのはいい傾向として、リンドウちゃんはいつの間に【製薬】してたのかな? しかも新薬ってことは新素材だと思うんだけど……。

「……っぐ!? なんだ、これ……!?」

 何てことをしてるうちに、新薬を飲んだらしいクロが突然呻きながら倒れた。え、どんな効果なの!? っていうか何を混ぜたの!? 作った張本人のリンドウちゃんすら狼狽えてるんだけど!?

「な、何しやがった……ユーレイ……!」

 恨めしそうな視線を送られても困るんだよね。真っ先に僕を犯人だと疑うのも心外だなぁ……。まあ、今はそんなことよりも現状の把握の方が先かな。

「クロ、症状は?」

「……ッ、身体が痛くて動かねえ……」

「なるほどなるほど……リンドウちゃん、クロに渡したものに混ぜたものは?」

「えっと……普段の回復用ポーションに、あのリンゴの果汁を……」

 ふむ。つまりあのリンゴが原因ってことだね。出来上がったものをちゃんと見せてもらったけど、液体にあのリンゴと同じ顔がついてて最高に気持ち悪いし、よくリンドウちゃんはこれを投薬しようと思ったね……。

 あのリンゴを使うと普段のポーションがこうなるってことは、料理につかっても怪しいのかな?

「……えー、これハズレイベじゃん……」

 お菓子パーティとか出来ると思ったのになぁ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一人称の物語の利点をうまく利用しています。その人からどんな心情なのだろう。それがうまく描かれていると思います。テンポは良いです。まさかの展開が面白いです。比喩や状況が詳しくしかも分かりやす…
2015/08/03 21:59 退会済み
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