祭事の学園都市番外編~その2~
続きです。
正樹と王牙を連れて龍星は郊外合同訓練場へとやってきた。
「あ、龍星~♪そちらの方達はお友達かしら~?」
すると、美桜が手を振りながら龍星の下に近づいてきた。
「ーー何という。こんな細腕にも拘わらず、我と互角以上の打ち合いが楽しめそうだ」
「有無。見た目にそぐわぬ鍛えぬかれた素晴らしい肉体・・・・・・。ふふっ、ワシの目にも相当の鍛練を積んだと見える」
美桜を一目見た正樹と王牙が誰に言うでもなく呟く。
どうやらこの二人、美桜の特異体質を見抜いただけではなく、美桜が特異体質に胡座をかく事なく自身を鍛える為に相当の修練を積んだ事も見抜いたようだ。
「流石筋肉ナルの正樹と王牙。母さんの特異体質を見抜いたか」
「・・・・・・待て。母さんだと?」
「この娘は龍星殿の母上なのか?」
「紹介するぜ。俺の母親、当年とって41歳の榊美桜だ」
「初めまして~♪龍星の母親の榊美桜です~♪」
「初めまして。榊さんの同級の北郷正樹と申します」
「同じく鳴神王牙と申します」
ニコニコと正樹と王牙に挨拶をする美桜に二人は挨拶を返すも美桜の年を聞き内心驚いていた。が、それを表面に出さないのは流石と言えよう。
「正樹君と王牙君ね~♪うふふ~♪二人とも相当の手練れのようね~。それにしても王牙君は大きいわね~。おばさん、龍星より大きい子は初めて見たかも~♪」
「あぁ、俺も初対面の時は驚いた。つーか、何で綾香と鷹久が居るんだ?」
「ん?何か面白そうな匂いがしたからな☆」
「すみません榊さん。綾香に引っ張られて来てしまいました」
「あはは(汗)」
龍星が美桜の後方を見て呟き、正樹と王牙がそちらに目をやると光の側に学園都市で知らぬ者は居ない位に交遊関係が広い夏目綾香とその従兄弟でフリーランス兼用心棒の吉田鷹久が笑って(鷹久と光は苦笑)立っていた。
「まあ良いか。んじゃ母さん、早速頼むぜ」
「ええ~♪」
龍星と美桜は揃って訓練場の中央付近まで行くと相対し龍星は構え、美桜は自然体のまま立った。
その瞬間、辺りの空気が一辺し痛い位の闘気が漂い始めた。
「凄まじい闘気だな」
「有無。これは後でワシとも手合わせをしていただかねばな」
龍星と美桜を見守る正樹と王牙がそう呟いた次の瞬間、龍星が動いた。
「おぉぉぉぉらぁっ!!!」
「踏み込みが甘いわよ龍星」
龍星の拳が降り下ろされ大地を穿つ。
「しゃっ!」
「かわされたからって読みやすい蹴りを放たないの」
続けて龍星が蹴りを放つが美桜はそれを平然と片手で受け止めた。そして、あろうことか・・・・・・。
「え~い」ブォン!
「ぐぉ!?」
そのまま片手で龍星を振り回し始めた。
「・・・・・・(汗)あの、北郷長官」
「なんだ?高峰」
「榊さんって確か体重85キロ位でしたよね?」
「我が見た限りではそうだな」
汗を浮かべながら光が正樹に尋ね正樹がそれに応える。
「何かスッゴい軽い感じで文字通りに振り回されてるんですけど(汗)」
「あぁ。美桜さんは常人成らざる筋力を持っていらっしゃるからな。あれくらいは出来るだろう」
尚、美桜の特異体質は筋肉を構成する無数の筋繊維の一本一本が筋肉というものであり、この体質の持ち主は例えば4歳位の幼児でも百キロ位の重さなら軽く持てる。
【因みに作者が数年前に読んだ漫画でこの体質の事をヒュペリオン体質と書いてあった為、ヒュペリオン体質で検索をかけてみた所、正式な名称は解らなかったがこの体質の持ち主は実在するようである】
「ぽ~い♪」ブンッ!
「あーーーーー!?」
龍星を振り回していた美桜はひとしきり振り回すとそのまま龍星を放り投げる。
ズガシャアアアアアアッ!
「相変わらず非常識な力だな!?母さん!」
「うふふ~♪龍星~、幾らでも打ち込んで来なさい~♪」
「そうさせて貰うっよっ!!」
放り投げられた龍星は空中で体勢を立て直し地面を滑りながら着地すると再び美桜に殴りかかる。
ズドンッ!!
「決まった!?」
「・・・・・・いや、受け止められている」
龍星の拳が美桜に打ち込まれると光が声を上げるが正樹は龍星の拳が美桜に受け止められた事を見抜く。
「ほら、ジッとしない。受け止められた事が分かってるんだから追撃を出す。何の為に二本の腕があるの?そ~れあっぱ~♪」
ドゴンッ!
「ぐぉ!?」
ヒューーーーーーー。
「うっわ龍星が空飛んだぞタカ。スッゲー☆アタシも飛べっかな?」
「いや、あれは飛ぶというより打ち上げられた・・・・・・ってそんな事言っている場合じゃない!?龍星さぁぁぁぁぁん!?」
ーーーーーーーン。ドゴグシャッ!!
「「頭から落ちたぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」
龍星が頭から落下した場所にはもうもうと土煙がたっており龍星の姿は見えない。
光と鷹久は慌てて落下地点に駆け寄るが、正樹・王牙は全く慌てておらず綾香はケラケラと笑っていた。
「あれくらいで榊さんがくたばる訳無いだろうに」
「龍星殿を仕留めるには高さが足らぬな」
因みに龍星は高度五百メートルまで打ち上げられた。
「龍星さん!」
「大丈夫ですか榊さん!?」
漸く土煙が収まり、龍星の落下地点が見えた鷹久と光は龍星の元に駆け寄った。
其処には頭を地面に突き刺した龍星が居た。
「ふんっっぬぅ!!」
ボコッ!!
鷹久と光が見守る中、地面から頭を引き抜いた龍星はその場に胡座をかいて座ると首を左右にゴキッゴキッと鳴らし頭を掻いた。
「あー死ぬかと思った」
呑気に言う龍星に鷹久と光は思わず、
「「いやいやあの高さから落下したら普通は死にますからね!?」」
と突っ込んだ。
「ま、俺もあんまし普通じゃねーからな。大体あれくらいで死んでたら俺は学園都市で数十回は死んでるって」
ケタケタ笑う龍星に鷹久と光は唖然とする。
「うんうん。やっぱり~頑丈さは前に比べると上がってるわね~♪」
「・・・・・・母さんの言う俺の本質とやらが段々見えてきたぜ。ちと試してみるかな?」
そう言うと龍星は勢い良く立ち上がり美桜の前に立ち構えを取る。
だが、今度は戦う為の構えで無く守る為の構え、即ち防御を固めたのだ。
「大分わかってきたみたいね~?」
「死にはしねーし折角だからな」
ニコニコと笑顔を浮かべる美桜に龍星も笑顔で返す。
この後、龍星は美桜の猛攻に耐えて耐えて耐え抜き、美桜に一撃を与えた。しかし、其処で気を抜いてしまい本日二度目の空中遊泳と相成るのであった。
まだ終わりじゃないんじゃよ?
もう少しだけ続くんじゃ。




