異界の迷い子と虎人の王
「ここどこ?」
それが目覚めたアタシの第一声だった。
周りは鬱蒼とした森の中で何かギャッギャッと言う聞いた事も無い鳥?の声が響いている。
「うん。間違い無く日本じゃないな」
目の前に現れた三メートルはあろうかという巨大な豚の化け物を見て、納得しながら近くに落ちていたアタシの商売道具の【二振りの短刀】を拾い構えながら今日を思い返す事にした。
アタシ、五月雨うずら16歳は県立の女子高に通う高校一年生だ。
身長139?と同年代に比べてちょーっとばかし背は低い。
そんなアタシだが、実はもう一つの顔を持っている。
だが、その前にアタシ達が住んでる世界について話すとしよう。
と言っても、そちらの世界とほとんど変わらない世界だ。
ただ一つだけ違うのはアタシ達の生きるこの世界には災獣と呼ばれる化け物が毎日夜中になると出現するくらいだ。
災獣はデカさは小さいのから馬鹿みたいにデカイのまでピンからキリまで居る。
けど、災獣を倒すのに一番厄介なのは災獣は倒すと自身に止めを刺した者に呪いをかけてくるのだ。
呪いは災獣の強さによって威力が変わる。
アタシが知る限りで一番弱い呪いはタンスの角に小指を執拗にぶつける様になるという地味〜に嫌な呪いだ。
そして、アタシが知る限り一番強い呪いは一撃死・・・・・・だった。
さて、アタシのもう一つの顔についてはここまで話せば大体察しがつくだろう。
【災獣狩り】・・・・・・それがアタシのもう一つの顔である。
元々はウチの親父がやってたのだが、2ヶ月前に災獣を倒した際に受けた呪いで命を落とした。
んで、アタシが後を引き継いで・・・・・・というか無理矢理引き継がされて女子高生と災獣狩りの二足のわらじをはく事になったんだけど、まさか初陣から異世界に来る羽目になるとは思わなかった。
アタシ自身何が起こったのかは良く分からないけど、多分災獣の呪いだと思う。
ところで今アタシの目の前に居る豚の化け物、所謂オークって奴?コイツさっきからアタシの身体を舐める様に見てるんだが・・・・・・。
「・・・・・・フッ」
こ、この豚野郎!アタシの身体を見て鼻で笑いやがった!?
確かにアタシは同い年の女の子達に比べて発育が悪い。
正直に言えば幼児体型って奴だ。
でも、だからと言って・・・・・・。
「豚に鼻で笑われる謂われは無い!!」
アタシは短刀を握り絞めるとオークに踊り掛かるのだった。
【???サイド】
俺は今信じられない光景を目の当たりにしている。
俺の縄張りにオークが侵入したという事で俺は仲間達と共にオーク討伐にやって来たのだが・・・・・・。
「王よ。私は疲れているようです。すみませんが、私はこれで帰らせて貰います」
そう言って俺の側に居る俺の側近にして親友のクラスタが目元を右手の人差し指と親指で掴みながらくるりと方向転換して帰ろうとする。
「待てクラスタ。安心しろ。人間の幼い雌がオークを斬殺している光景なら俺にも見えている」
去ろうとするクラスタの肩を右手で掴みながら俺は額に汗を浮かべて言う。
「・・・・・・頼むライデル、帰らせてくれ。私は虎人としての自信を失いかけているのだ」
クラスタは俺を振り返り俺の名を呟き懇願する。
ああ、お前の気持ちは良く分かる。
あんな幼い子供が二本の刃を振るいながらオークを斬殺しているのだ。
俺とて王でなければ家に帰って寝床で寝直す事だろう。
時に虎人とは俺達の種族の事でこの世界デルフォニアに暮らす種族の中でも強い種族として知られている。
だが、そんな我等でも魔物であるオークに挑むには数人で掛からねば返り討ちに合う事は必至。
故にあの子供が単独でオークを斬殺している光景は信じられない物なのだ。
「む?」
そんな時、少女の背後に弓を構えるもう一匹のオークの姿が見えた。
どうやらあの少女を狙って狙撃するつもりらしい。
「危ない!」
俺は咄嗟に駆け出すと弓を構えるオークに挑むのだった。
【???サイド・エンド】
【うずらサイド】
アタシを鼻で笑ったオークを攻撃していると突然アタシに声がかかり咄嗟に後ろを向いた。
因みにアタシが相手したオークの眉間には短刀を突き刺して止めを刺しているので安心して欲しい。って誰に言ってんだ?アタシは。
「ガルルルルルァッ!!」
後ろを向いたアタシが見たのは虎縞の衣服に身を包みマッチョな身体に猫耳と尻尾を生やした見た感じ二十歳程度のお兄さんが弓を持ったオークの喉笛を手に持った大剣で切り裂いている光景だった。
・・・・・・流石は異世界。よもや猫耳と尻尾を生やした人間が居るとは思わなかった。
「・・・・・・人族の幼い子供よ。この森は我等虎人の縄張りだ。人族とは不可侵の盟約を交わしている筈だが?」
マッチョな兄さんはアタシに振り返ると開口一番にそう発した。
「あ〜。悪いんだけどね?アタシこの世界の事な〜んにも知らないからこの世界の人間とあんた達が交わした盟約とやらも知らないんだ。そもそも気が付いたらこの森に居た訳だし」
「成る程。つまり君は異界からの迷い人と言う訳か」
マッチョな兄さんはアタシの言葉に頷くと右に顔を向ける。
「クラスタ!この娘はどうやら異界からの迷い人の様だ!我等の城に丁重にお連れしろ!」
マッチョな兄さんがそう叫ぶと森の奥から同じような衣服に身を包んだやっぱり猫耳と尻尾を生やしたスタイル抜群な美人なお姉さんが出てきた。・・・・・・チクショウ。
「畏まりました我が王」
マッチョな兄さんにクラスタと呼ばれたお姉さんはアタシに近づくと笑顔を浮かべる。
「初めまして異界からの迷い人よ。私はクラスタ。よろしければ御名前をお聴きしても?」
「え?あ、ああ。アタシは五月雨うずら」
「サミダレウズラ様ですか?」
「五月雨が苗字でうずらが名前だからうずらって呼んで。所でそっちのマッチョな兄さんは?」
アタシがそう言うと、お姉さん・・・クラスタはマッチョな兄さんにジト目を向ける。
「ライデル、まさかとは思いますが・・・・・・よもや名乗っていないとかありませんよね?」
クラスタがニッコリと笑顔を浮かべマッチョな兄さんに問い詰めるとマッチョな兄さんは汗を流して目を反らした。
「ライデル!貴方「我が名はライデル。虎人の王をやっている」・・・・・・後でお仕置きです」
クラスタの言葉を遮りマッチョな兄さん・・・ライデルはアタシに自身の名を名乗った。
この後、アタシはライデルが治める街に行く事になったのだが、それは別のお話。
というか、アタシの年を知ったライデルとクラスタがやたらとびっくりしたので問い詰めてみたらこの人達、アタシを十歳位の子供だと思ってたんだって。
ムカついたのでクラスタのデカイ胸を揉んでやったら何かめっちゃなつかれた。
・・・・・・まさかとは思うけど、クラスタって百合の人じゃないよねー?
【うずらサイド・エンド】
異世界より現れたうずらと虎人の王ライデルはこうして出会った。
この後、二人は喧嘩しつつもデルフォニアを滅亡の危機から救う事になるが、それはまた別の機会に。
五月雨うずら(16)
身長・139㎝
体重・41㎏
装備・防刃コート・短刀【十六夜】・短刀【新月】
データ・災獣狩りを生業と【させられた】高校一年の女の子。
つるーん・すとーん・ぺたーんな幼児体型でモデルは体型はらきすたのこなたで性格はスレイヤーズのリナ・インバース・・・・・・だが、あそこまでドラまたではない(笑)
初陣で災獣を狩ったのは良いが、呪いにより異世界デルフォニアに跳ばされた。
その直後、オークに自身の身体を鼻で笑われる。
怒りのままにオークを切り刻み、それを見ていたライデル達に軽く混沌を与えたがそれは本人の知らぬ事である。
因みに可愛い物が好きで家事が得意という女の子らしい部分もある。